日産プリメーラワゴン(FF/5MT)今や新車で探すことすら困難なパッケージング

SUV全盛期のいま、ワゴンの存在はどこか忘れられがちだ。しかしそんな今でもドイツ車にワゴンが多く存在するのには絶対にSUVより優れている理由があるからである。

SUV全盛期のいま、ワゴンの存在はどこか忘れられがちだ。しかしそんな今でもドイツ車にワゴンが多く存在するのには絶対にSUVより優れている理由があるからである。

プリメーラワゴン、そのルーツと進化

日産が1990年に初代を世に送り出したプリメーラは、日本のミドルクラスセダンに新たな風を吹き込んだ。

欧州のライバルたちに挑むべく、シャープなハンドリングと優れた走行安定性を持ち合わせたこのモデルは、瞬く間に高評価を得た。

その流れを受け継いだ2代目(P11型)が登場したのは1995年。さらに1998年のマイナーチェンジで洗練されたスタイルと最新のメカニズムを手に入れた。

日産プリメーラワゴン(FF/5MT)今や新車で探すことすら困難なパッケージング

そして2000年式プリメーラワゴン 1.8 G 5MT。この車は、単なる実用車ではなく、走りと機能性を両立させた異色の存在だった。

ワゴンでありながらスポーティなデザインを纏い、5速MTという選択肢を残していたことが、そのキャラクターをより鮮明にしている。

エンジンはQG18DE型 1.8リッター直列4気筒。最高出力125ps、最大トルク165Nmを発生し、扱いやすさと低燃費を両立させた。

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FF(前輪駆動)ながらバランスの取れた重量配分と足回りのセッティングが施されており、単なる「荷物を運ぶワゴン」ではなく、「ドライバーを楽しませるワゴン」であることを物語っていた。

この2000年式の個体はワンオーナーで、完全フルノーマルの状態を維持。時代とともに改造車が増える中、オリジナルの姿を保ったプリメーラワゴンは、いまや貴重な存在と言えるだろう。

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プリメーラワゴンのもう一つの特徴は、その高い実用性だ。リアの荷室は十分な広さを確保し、家族旅行やアウトドア用途にも対応できる。また、後席の足元スペースも広く、長時間の移動でも快適性を維持できる設計が施されている。

さらに、当時としては珍しく、ワゴンボディながらスポーティなデザインを採用している点も特筆すべきだろう。

日産のデザイナーがこだわり抜いたこのフォルムは、現在見ても色褪せることなく、クリーンで機能美あふれるデザインとして評価できる。

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5速MTが紡ぐ軽快な走り

ドアを開けて運転席に身を沈める。90年代のシンプルかつ機能的なコクピットが広がる。

ブラックを基調としたインテリアは無駄を省き、ドライバーに必要な情報を的確に伝える。スポーティな3本スポークのステアリングを握ると、そのサイズと重さが絶妙であることに気づく。

イグニッションキーをひねると、QG18DEエンジンが滑らかに目を覚ます。低回転域では静かでトルクも十分。発進からの加速はスムーズで、市街地ではストレスを感じさせない。だが、この車の真価は郊外のワインディングロードにある。

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5速MTの操作感は軽快で、各ギアが確実に収まる。特に3速・4速はパワーバンドに入りやすく、峠道ではコーナーの立ち上がりで活きる。

ステアリングはダイレクトで、路面の情報が手のひらに伝わる。この時代の日産らしい、しっかりとした足回りが特徴的だ。

サスペンションは前ストラット、後マルチリンク。これが安定したコーナリング性能を生み出している。ワゴンとは思えないほどロールが少なく、切り返しも素直。FFの制約を感じさせないほどの軽快さがあり、まるでスポーツセダンを運転しているような感覚だ。

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また、高速道路でもその実力を発揮する。100km/h巡航時のエンジン回転数は約3000rpm。適度なエンジンブレーキが効き、シフトダウンのレスポンスも良好。

ワゴンというカテゴリーを忘れるほど、走ること自体が楽しい車なのだ。

実際に運転してみると、この車の持つフィードバックの良好さに驚かされる。路面の状況をしっかりと伝えながらも、過剰な振動は抑えられ、適度なダイレクト感が楽しめる。エンジンレスポンスも十分に鋭く、ドライバーの操作に忠実に応えてくれるのが特徴だ。

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プリメーラワゴンの持つ価値

試乗を終えた今、このプリメーラワゴンが持つ価値を改めて考える。

一般的にワゴン車といえば実用性が重視され、走りの楽しさは二の次とされることが多い。

しかし、この車は異なる。積載性とドライビングプレジャーを見事に融合させた一台なのだ。

日産プリメーラワゴン(FF/5MT)今や新車で探すことすら困難なパッケージング

日産のP11型プリメーラシリーズは、欧州志向の走りを追求した数少ない国産車の一つだった。特にワゴンモデルは希少で、MT仕様となるとさらに貴重な存在だ。

電子制御が最低限に抑えられたこの時代のクルマは、運転する楽しさを直に感じられる点で、現代のクルマとは一線を画す。

また、ワンオーナー・フルノーマルの個体であることも大きなポイントだ。オリジナルの状態を維持し続けたクルマは、時間が経つにつれて価値を増していくだろう。

日産プリメーラワゴン(FF/5MT)今や新車で探すことすら困難なパッケージング

特にこのホワイトカラーのプリメーラワゴンは、シンプルでありながら品のある佇まいを保ち続けている。

現代のワゴンはSUVに取って代わられつつあるが、それでもこのプリメーラワゴンのような純粋な走りの楽しさを持ったクルマは、今でも求められている。

乗る機会があるならば、ぜひ5速MTを駆使して走りの魅力を体感してほしい。

SPEC

日産プリメーラワゴン

年式
2000年式
全長
4515mm
全幅
1695mm
全高
1450mm
ホイールベース
2600mm
トレッド(後)
1.8リッター直列4気筒
車重
1280kg
トランスミッション
5速MT
エンジン最高出力
125ps/6000rpm
エンジン最大トルク
165Nm/4800rpm
タイヤ(前)
185/65R14
タイヤ(後)
185/65R14
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

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