SVOデザイン・エディション2021

このレンジローバー、日本で7台しか存在しない。モデル名は「レンジローバーSVOデザイン・エディション2021」。何が特別たらしめるのか、見ていくことにしよう。

そもそもこの特別仕様車、SVOデザイン・エディションは、2017年、2019年にも登場し、好評だったというアンコール作品だ。

ベースは5リッターV型8気筒スーパーチャージド・ガソリンエンジンを搭載したランドローバー・レンジローバー・ヴォーグだ。

外観の違いはスペシャル・ビークル・オペレーションズ（SVO）が設計・開発を行ったボディキット「SVOデザインパック」ですぐにわかる。具体的には、フロントバンパー、フロントグリル、サイドベント、サイドシル・クローティング、リアバンパーのデザインが標準モデルとは異なっている。

ボディカラーは「サントリーニブラック」のみで、いかにも厚みのある塗料が、全体の塊感と、迫力を増幅させる。それでいて上品なのはレンジローバーらしさといえよう。22インチの9スプリットスポークもしかり。

インテリアカラーはエボニー、黒基調だ。ウッドとレザーを組み合わせるステアリングも黒で仕上がっている。ウッドのステアリング、これがまたつるりとして、いいのである。

20ウェイ電動シートは、前席ヒーター＆クーラー、後席電動リクライニング＆ヒーターを備える。ヘッドライニングも黒く、シェードを閉じていれば、暗く落ち着いた空間となる。これを「シック」と表現するのだろう。

熟成極まる後期　特別な仕立てで

走り出すと、やはり4代目レンジローバーの後期型ならではの乗り味にじわりと感心する。

私たちレセンス編集部は、これまで、全てのグレード、ほぼ全ての年式に試乗している。そのなかで大まかに「前期」「後期」で分けると、後期は熟成が極まっていると感じる。

具体的な差は、シート形状にあるかも知れないと、ここへきて気づいたという声があがった。後期型は、シートの座面が前後方向に長く、やわらかく、表皮の「たゆみ」が大きい。結果的に乗り心地がよく感じるのだ。

スローなステアリングがもたらす悠々とした運転体験、モノコックボディによる盤石な走り、全てがレンジローバーの走りそのものでありながら、その所作に磨きがかかっている。

5リッターV8スーパーチャージャーから泉のように湧き出すトルクにもうっとりする。アクセルペダルを数ミリ踏んだだけで、ジェントルに、しかし力強く車体が進む。

幾重にも乾いた音が重なり合い、少しだけリアを沈ませながら猛進する姿。4代目レンジローバーの究極を見た気がしたのだった。

この究極を、たったの7台しかない衣をまとわせることで味わう。格別の体験である。