フェラーリ・ローマ(2022)万能性の先にある艶という価値

フェラーリ・ローマは、フェラーリというブランドが内包してきた過剰さを、意識的に削ぎ落としたような存在だ。ミドシップの緊張感も、誇張された空力表現もない。その代わりに与えられているのは、現代の道路環境や速度域に即した、穏やかで知的な完成度だ。

フェラーリ・ローマは、フェラーリというブランドが内包してきた過剰さを、意識的に削ぎ落としたような存在だ。ミドシップの緊張感も、誇張された空力表現もない。その代わりに与えられているのは、現代の道路環境や速度域に即した、穏やかで知的な完成度だ。

輪郭を掴めるフェラーリ

今回試乗したのは右ハンドル仕様。

走行距離は浅く、個体としての素性も素直。サイズ感は想像以上に扱いやすい。

数値が示すボリュームよりも、ドライバーとの距離は近い。四隅の感覚が自然に掴める。

フェラーリ・ローマ(2022)万能性の先にある艶という価値

この万能性は、長年スポーツカーの完成形を磨いてきたポルシェ・911を想起させる。日常から少し踏み込んだ領域まで、一台で無理なく受け止める懐の深さがある。

ただしローマは、そこにフェラーリならではの質感を重ねる。

フェラーリ・ローマ(2022)万能性の先にある艶という価値

アクセルを踏み込み、回転を引き上げると、エグゾーストノートが静かに変化する。騒がしくはない。

それでも、低く艶を含んだ音が「もう少し先まで使ってみないか」と、控えめに、しかしはっきりと語りかけてくる。

フェラーリ・ローマ(2022)万能性の先にある艶という価値

甘さを帯びる、移動の時間

このクルマで夜を流していると、言葉は自然と少なくなる。会話を続けなくても、沈黙が不自然に感じられない。

信号で止まるたびに残る音の余韻。キャビンに満ちるわずかな温度。助手席との距離感。それらが、いつの間にか“測らなくていいもの”へと変わっていく。

フェラーリ・ローマ(2022)万能性の先にある艶という価値

これほど色気をまとったクルマで過ごす時間は、自然とスイートになる。

目的地へ向かうことよりも、そこへ至る過程そのものが、静かに甘さを帯びていく。

ローマが与えてくれるのは、単なる移動ではない。艶そのものとも言えるドライブの時間だ。

フェラーリ・ローマ(2022)万能性の先にある艶という価値

ローマは、フェラーリに慣れた人だけのクルマではない。

むしろ、フェラーリが持つエンジン、音、佇まい――その核心を、過度な緊張を伴わずに体験できるという意味で、ファーストフェラーリとして極めて完成度が高い。

特別でありながら、日常から切り離されない。

そのバランスが、このクルマに知的な余裕を与えている。

フェラーリ・ローマ(2022)万能性の先にある艶という価値

夢と現実のあいだに

最後に、現実的な話をしておきたい。

この個体は右ハンドルで、走行距離は約6000km。中古車市場では2500万円を切る水準にある。

決して安い数字ではない。

だが、この完成度と、色気を伴う時間の質を思えば、その価格は不思議と静かに腑に落ちる。

フェラーリ・ローマ(2022)万能性の先にある艶という価値

ローマは、夢と現実の境界線に、知的で静かな色気を湛えて立っている。

そして何より、このクルマを自然体で乗りこなし、その時間を余裕として纏える存在でありたいと、ふと思わせる。

こんなフェラーリが似合う男になりたい。

そう思わせるところまで含めて、ローマはフェラーリなのだ。

フェラーリ・ローマ(2022)万能性の先にある艶という価値
  • 河野浩之 Hiroyuki Kono

    18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どんな車にも、それを選んだ理由があり、「この1台のために頑張れる」と思える瞬間が確かにあった。車を心のサプリメントに──そんな思いを掲げ、RESENSEを創業。性能だけでは語り尽くせない、車という文化や歴史を紐解き、物語として未来へつなげていきたい。

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