新色オーシャンブルーをまとった現行型G450d。伝統のフォルムに最新機能が重なり、誰もが知る“いつものG”に新しい表情を与えていた。
見た目はいつものG
2024年に発表され、2025年モデルとして登場した現行後期型のGクラス。外観のシルエットはこれまでと大きく変わらない。
スクエアなフォルムと直立したウィンドウ、背面に備わるスペアタイヤ。一見すれば誰もが「いつものGクラス」と思うだろう。
だが、その“変わらないこと”こそがGクラスの美学だ。
流行を追い、デザインを頻繁に変えるのではなく、40年以上にわたり受け継がれてきた形を磨き続ける。オーナーにとっては安心感であり、同時にブランドの信念の表れでもある。
しかし中身に目を向ければ、もはや別物と言っていい。最新のMBUXインフォテインメントシステムを採用し、インテリアはより現代的に。安全支援機能も拡充され、ラグジュアリーSUVとして欠かせない装備が余すことなく備わる。
そして何より大きいのが、パワートレインの刷新。全グレードに48Vマイルドハイブリッドが組み合わされ、効率性と静粛性を手に入れた。
前期型で大きな変革を遂げたGクラスは、後期型でさらに成熟の度合いを深めた。
伝統を守りながら
今回のフェイスリフトで最も恩恵を感じるのは、Gクラスとして初めて採用された「キーレスゴー」だ。
これまでのGクラスオーナーは、キーのボタンを押して解錠し、差し込んでエンジンを始動するという儀式を、乗り込むたびに繰り返してきた。
クラシックな雰囲気を残すとはいえ、今では軽自動車でも当たり前のスマートキーが最高峰のラグジュアリーSUVになかったことは、多くの人が小さな不満として抱えていたはずだ。
キーレスゴーの採用により、ポケットにキーを入れたままドアハンドルに触れるだけで解錠でき、スタートボタンを押せばすぐに走り出せる。
これまではどこか「Gクラスだから仕方ない」と受け入れてきた不便さだっただけに、その変化はなおさら大きい。乗るたびにキーを取り出す必要がなくなったことで、日常の使い勝手は想像以上に快適になった。
そうした快適性を手に入れつつも、ドアハンドルの形状は従来と同じくボタンを押して開けるスタイルを残している。
Gクラスらしい無骨な造形を守りつつ、機能は最新化する。伝統と現代性をどう折り合わせるか──メルセデスがこのモデルに込めた思想が垣間見える部分だ。
「我慢がいらない」
以前、前期型の試乗記で「この世代になってGクラスは我慢がいらなくなった」と評した。その一方で「かつてのGクラスは、少し我慢してでも乗りたいクルマだった」とも書いた。
無骨なフィーリングを受け入れることで得られる特別な体験──それが旧世代のGクラスの魅力であり、同時に制約でもあった。
それがこの世代になり、ステアリングフィールや乗り心地の改善に加え、現代的なインフォテインメントの導入や安全支援機能の拡充によって、日常のあらゆるシーンで“妥協”を求められなくなったのだ。
そして今回の後期型では、その流れがさらに加速している。
新たに設定された「G450d」は、直列6気筒ディーゼルにISGを組み合わせたマイルドハイブリッドとなり、367psと750Nmを発揮する。走りは力強さと静粛性を兼ね備え、高速巡航から市街地まで余裕をもたらす。
だが進化はメカニカルな部分だけではない。キーレスゴーや最新MBUXの導入、スマートフォンとの連携強化など、日常で体感する利便性が格段に高まった。
いまや、利便性や快適性においても他のプレミアムモデルと比べても遜色がない。
正統なアップグレードを果たしたこの後期型は、Gクラスがいまなお特別でありながら現代のラグジュアリーSUVとして堂々と語れることを証明している。
最短距離で
今回試乗した個体は、マヌファクトゥーアプログラム+による「オーシャンブルー」のボディカラーをまとっていた。
オーシャンブルーは後期型で新たに追加されたマヌファクトゥーアプログラム+の専用色。街で同じ色のGクラスに出会うことはまずないだろう。標準色では得られないオリジナリティを、さりげなく主張できる選択肢だ。
背面のスペアリングもボディ同色で仕上げられ、ロゴパッケージが統一感をさらに高める。従来のステンレス調カバーが象徴的である一方、この仕様では色の力で個性を表現している。
G63のような派手さで語るのではなく、静かに、しかし確実に特別であることを示す。
進化した機能性に、マヌファクトゥーアがもたらす装いの美しさが重なったとき、このクルマは他に代えのきかない存在となる。
新車をオーダーして自分好みに仕立てる楽しさがある一方で、このように他と被りにくい完成形を何ヶ月も待つことなく手に入れられるのは、中古車ならではの醍醐味でもある。
Gクラスが守り続けてきた姿に、新しい装いと機能が加わったこの一台。それを最短距離で所有できる、その事実が何よりの魅力だ。
SPEC
メルセデス・ベンツ G450d
- 年式
- 2025年式
- 全長
- 4826mm
- 全幅
- 1931mm
- 全高
- 1969mm
- ホイールベース
- 2890mm
- 車重
- 約2,500kg
- パワートレイン
- 3.0リッター直列6気筒ディーゼルターボ+ISG(48Vマイルドハイブリッド)
- トランスミッション
- 9速AT
- エンジン最高出力
- 367ps/4000rpm
- エンジン最大トルク
- 750Nm/1350〜2800rpm

河野浩之 Hiroyuki Kono
18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どんな車にも、それを選んだ理由があり、「この1台のために頑張れる」と思える瞬間が確かにあった。車を心のサプリメントに──そんな思いを掲げ、RESENSEを創業。性能だけでは語り尽くせない、車という文化や歴史を紐解き、物語として未来へつなげていきたい。


















