トレンドの中心から少し離れた場所にこそ、新しさがある。ジュピターレッドとブラックの組み合わせが、Gクラスの“変わらないかっこよさ”をいまの時代に映し出す。
定番×定番でも
赤と黒。
華やかさと力強さをあわせ持つこの組み合わせは、ファッションや建築、あらゆるデザインの世界で定番のコーディネートだ。
自動車においてはスポーツモデルではおなじみだが、SUVやラグジュアリーカーでは少し勇気のいる選択だ。
リセールのことを考えたり、街中での目立ち方を気にしたり──誰もが“かっこいい”と思いながらも、黒や白といった無難な色に流れてしまう。
そんな時代に、このジュピターレッドのG350dはひときわ異彩を放つ。
赤いボディに黒いルーフとフェンダー。インテリアもまた、黒を基調に、赤いステッチやシートベルトがさりげなくアクセントを添える。「マヌファクトゥーア」の名の通り、感性と精度が調和した仕立て。
誰もが知るかっこいいクルマに、誰もが知るかっこいい色の組み合わせ。
いわば、本流と本流の交差点に立つ存在だ。
華やかさがありながら、決して浮つかない。むしろ落ち着きのある存在感で、周囲の景色を引き締めてしまう。
トレンドの外側に立つ潔さと、普遍の中にある緊張感。そのバランスこそ、このクルマの魅力だ。
日常に落とし込めるG
赤いクルマというだけで、気持ちが弾む。
ジュピターレッドのボディは、子どもの頃にミニカーを手に取ったときのような高揚感を思い出させてくれる。
けれど、このG350dは見た目ほど熱くない。
乗り味は穏やかで、9速ATのつながりも滑らか。Burmesterサウンドやインフォテイメントの操作性も上質で、街中をゆったりと流すだけで心地いい。直列6気筒ディーゼルは力強さと静けさを両立し、燃費も良好。
見た目の華やかさとは裏腹に、乗れば驚くほど日常にフィットする。
赤と聞くと派手な印象を持たれがちだが、このジュピターレッドはむしろ上品だ。鮮やかさの中に深みがあり、黒とのコントラストが大人の落ち着きを感じさせる。
日常生活のなかに、ほんの少しの華やぎを。
このGクラスは、そんなさりげない豊かさを与えてくれる存在だ。
変わらなさと新しさ
かっこよさとは何だろう。スペックでも、価格でも、流行でもない。
このG350dを前にすると、その答えが少し見えてくる。
誰もがかっこいいと思う形。誰もが知っている色の組み合わせ。
その“普遍”の掛け算が、いまの時代では逆に個性として際立っている。
Gクラスの魅力の本質は、“変わらなさ”の中にある“新しさ”だ。
そして、その“変わらなさ”を新しく見せているのは、トレンドから少し離れた赤と黒という選択だ。
流行のど真ん中にいないこと。それを恐れず、自分の美意識で選ぶこと。
ジュピターレッドのG350dは、そんな価値観を体現している。
SPEC
メルセデス・ベンツ Gクラス G350d マヌファクトゥーア エディション
- 年式
- 2020年
- 全長
- 4,660mm
- 全幅
- 1,930mm
- 全高
- 1,970mm
- ホイールベース
- 2,890mm
- 車重
- 約2,500kg
- パワートレイン
- 3.0リッター直列6気筒ディーゼルターボ
- トランスミッション
- 9速AT
- エンジン最高出力
- 286ps/3,400〜4,600rpm
- エンジン最大トルク
- 600Nm/1,200〜3,200rpm
河野浩之 Hiroyuki Kono
18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どんな車にも、それを選んだ理由があり、「この1台のために頑張れる」と思える瞬間が確かにあった。車を心のサプリメントに──そんな思いを掲げ、RESENSEを創業。性能だけでは語り尽くせない、車という文化や歴史を紐解き、物語として未来へつなげていきたい。