アウディ・A4オールロードクワトロ(4WD/7AT)自由に遊ぶ

ワゴンの延長線に、ほんの少しの余白を足したアウディA4オールロードクワトロ。少なすぎず多すぎない走行距離、こなれた価格だからこそ、行き先も使い方も縛られない。気負わず、自由に楽しむための一台だ。

ワゴンの延長線に、ほんの少しの余白を足したアウディA4オールロードクワトロ。少なすぎず多すぎない走行距離、こなれた価格だからこそ、行き先も使い方も縛られない。気負わず、自由に楽しむための一台だ。

“余白”のある出自

アウディのオールロードクワトロは、SUVブームに対する回答として生まれた存在ではない。

その起点は1990年代末のA6オールロードにあり、ワゴンの快適性と高速安定性を前提に、「天候や路面に縛られない移動」を成立させるための思想として育ってきた。

A4オールロードクワトロは、その思想をミドルクラスに落とし込んだモデルだ。

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SUVのように視点を高くするのではなく、A4アバントの延長線上で、ほんの少しだけ車高を与え、樹脂フェンダーで守備範囲を広げる。あくまで主役はワゴンであり、走りの質感もA4のそれ。

行き先を「選ぶ」ためのクルマではなく、行き先を「限定しなくていい」ためのクルマ。そこにオールロードクワトロの価値がある。

特別な操作を要求せず、特別な覚悟もいらない。

それでも、気がつけば選択肢が増えている。その余白こそが、このクルマの本質だ。

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手を入れたくなる余地

A4オールロードクワトロは、完成度が高い。だが同時に、完成しすぎていない。

例えばホイール。純正の雰囲気を活かしたままブラックアウトすれば、クルマの印象は一段と引き締まる。

タイヤをオールテレインに替えれば、見た目だけでなく、行動範囲そのものが広がる。ルーフキャリアを載せれば、クルマは一気に外へと開いていく。

それらはどれも、このクルマの性格を壊すカスタムではない。むしろ、オールロードクワトロという器が用意してくれている「許容範囲」を、素直に使うだけだ。

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それでいてドアを閉めれば、そこはアウディの室内空間。

ベージュレザーに包まれたインテリアは明るく、落ち着きがあり、所有感をしっかりと満たしてくれる。バーチャルコクピットやインフォテインメントは現代的で、使い勝手も申し分ない。

外では少しラフに、内ではきちんと上質に。この二面性があるからこそ、手を入れる楽しさも、所有する満足感も、同時に成立する。

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行き先を決めずに走れる

A4アバントよりわずかに高められた車高は、数値以上の安心感をもたらす。

そこにアウディ伝統のクワトロが組み合わさり、路面状況に対する神経質さは自然と薄れていく。ヒルディセントコントロールも備わり、急な勾配や滑りやすい路面でも、クルマが先回りして挙動を整えてくれる。

オールロードクワトロ専用のドライブモード「オフロード」は、岩場を攻めるためのものではない。雪道や砂利道、濡れた下り坂を、特別な意識をせずに走るための設定だ。

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ラゲッジスペースも十分に広く、積むものを選ばない。どこか山の方へ、あるいは雪の残る道へ。理由を用意しなくても、自然とハンドルが向く。

それでいて街に戻れば、「コンフォート」モードではアウディらしい余裕のある走りがあり、「ダイナミック」を選べば、A4の低重心と正確な操舵感が前に出る。

行き先を決めないまま走り出しても、あとから「正解だった」と思わせてくれる。A4オールロードクワトロは、そんな自由を自然体で許してくれる一台だ。

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気負わず付き合える

この個体の走行距離は6万5000km。

中古車として見れば、少なすぎず、多すぎない、ちょうど真ん中に位置する数字だ。

新車に近い低走行車には、どうしても緊張感が伴う。一方で、使い切った個体には、割り切りと覚悟が必要になる。

その中間にあるこの距離は、「まだ使える」でも「もう十分」でもない、最も気負わず付き合えるラインにある。

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10万kmまで乗って、その先を考える。あるいは数年付き合って、次の一台へ進む。そうした現実的な時間軸が、自然と頭に浮かぶ。

中古車市場での相場は200万円前後。だからこそ、行き先や使い方、そしてカスタムに対しても、余計なブレーキがかからない。

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このA4オールロードクワトロが与えてくれる自由は、衝動的なものではない。計画的で、現実的で、それでいて肩の力が抜けた自由。

この走行距離、この価格だからこそできる遊びがある。

このクルマは、選択肢を増やしながら決断を軽くしてくれる、そんな存在だ。

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  • 中園昌志 Masashi Nakazono

    スペックや値段で優劣を決めるのではなく、ただ自分が面白いと思える車が好きで、日産エスカルゴから始まり、自分なりの愛車遍歴を重ねてきた。振り返ると、それぞれの車が、そのときの出来事や気持ちと結びついて記憶に残っている。新聞記者として文章と格闘し、ウェブ制作の現場でブランディングやマーケティングに向き合ってきた日々。そうした視点を活かしながら、ステータスや肩書きにとらわれず車を楽しむ仲間が増えていくきっかけを作りたい。そして、個性的な車たちとの出会いを、自分自身も楽しんでいきたい。

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