トヨタ・ハイラックスサーフ(4WD/4AT)色褪せない誠実さ

華やかさよりも誠実さを選んだ一台。本格四駆が少なくなった今も、ワンオーナー・走行2.5万kmのハイラックスサーフが、トヨタの良心を体現している。

華やかさよりも誠実さを選んだ一台。本格四駆が少なくなった今も、ワンオーナー・走行2.5万kmのハイラックスサーフが、トヨタの良心を体現している。

トヨタの信頼が形に

ハイラックスサーフほど、「トヨタ」というブランドの本質を語るのにふさわしいSUVはないかもしれない。

ランドクルーザーほど武骨ではなく、プラドほど上品でもない。けれどサーフには、そのあいだを行くほどよい華やかさと頼もしさ、そして信頼や堅実さが共存する、トヨタらしい誠実なSUVだった。

トヨタ・ハイラックスサーフ(4WD/4AT)色褪せない誠実さ

その出自はピックアップトラック「ハイラックス」にある。

北米市場で求められた「荷台よりもキャビンの快適性を」という声に応える形で生まれたのが、1984年登場の初代サーフ。

本格的なラダーフレーム構造を持ちつつも、乗用車的な快適さを兼ね備えた、日常に寄り添う4WDとして誕生した。

トヨタ・ハイラックスサーフ(4WD/4AT)色褪せない誠実さ

ここに紹介するのは、4代目(N210系)の中でも特別仕様車となる「60thスペシャルエディション」。

トヨタ創業60周年を記念して設定されたモデルで、白とシルバーのツートーンにメッキグリルを合わせた、清潔感と重厚感を両立する仕立てが印象的だ。

シャシーはランドクルーザープラド(120系)と共通。プラドが“都会派SUV”へ進化していくなか、サーフはあくまで道具としての誠実さを貫いた。

トヨタ・ハイラックスサーフ(4WD/4AT)色褪せない誠実さ

誠実という美学

運転席に腰を下ろした瞬間、20年近い時を感じさせない空気に驚く。

ファブリックシートは張りがあり、サポート性も十分。派手さはないが、触れた瞬間にわかる素材の信頼感がある。

この個体はワンオーナーで走行わずか2万5000km。

新車当時のままのような清潔さが残るのは、誠実な造りと、丁寧に維持されてきた一台であることの証だ。

トヨタ・ハイラックスサーフ(4WD/4AT)色褪せない誠実さ

インテリアはグレーとブラックのツートーン。操作スイッチは大ぶりでわかりやすく、誰が触っても直感的に扱える。

プラスチックの合わせ目、メーターリングの処理、ダッシュボードの手触り。そのひとつひとつに、トヨタが長年積み重ねてきた“道具としての正しさ”が息づいている。

豪華ではなく、飾らない。

それでも、すべてが真面目で、どこにも手抜きがない。ハイラックスサーフの内装には、そんな職人気質のような誠実さが漂っている。

トヨタ・ハイラックスサーフ(4WD/4AT)色褪せない誠実さ

普通に使えるSUV

2006年式ということを忘れてしまうほど、日常での使い勝手に不便がない。街中でも郊外でも運転していて違和感がなく、どんなシーンでも素直に応えてくれる。

純正ナビゲーションやバックカメラ、ETCを備え、安心して扱える。

視界は高く、ドアミラーも大きい。SUVらしい見晴らしの良さと、適度な取り回しのしやすさが両立している。

トヨタ・ハイラックスサーフ(4WD/4AT)色褪せない誠実さ

2.7リッター直列4気筒のエンジンは、静かでスムーズだ。

大排気量のV型や最新のターボのような派手さはないが、アクセル操作に対して素直に反応し、街中でも扱いやすいトルクを発揮する。

高速道路では安定して直進し、郊外の道ではラダーフレーム特有のしなやかさで路面をいなす。足まわりの動きが柔らかく、段差を越えたときも衝撃が角のない感触に変わる。

トヨタ・ハイラックスサーフ(4WD/4AT)色褪せない誠実さ

これはサスペンションの性能だけでなく、フレーム構造そのものの余裕がもたらすものだろう。

現代のSUVがモノコック構造で軽快さを追求するなか、サーフのような古典的な設計は安心感という別の価値を教えてくれる。

「古い」ではなく、「正しい」。そう感じられるのが、このクルマの強さだ。

トヨタ・ハイラックスサーフ(4WD/4AT)色褪せない誠実さ

安心して乗れるという価値

ハイラックスサーフがいまなお人気を保ち続ける理由は、走破性でもレトロ感でもない。

それは、安心して乗れるということ。

20年が経った今でも、全国どこにでもトヨタのディーラーがあり、部品供給も安定している。

トヨタ・ハイラックスサーフ(4WD/4AT)色褪せない誠実さ

この個体のように状態の良いサーフなら、日常の足として使うことにも何の不安もない。エンジンオイルやタイヤの交換といった基本的なメンテナンスを怠らなければ、まだまだ現役で走り続ける。

ランクルが「世界を旅するための車」だとすれば、サーフは「日常と冒険のあいだで寄り添う車」だ。

華やかさや高級感は控えめでも、生活の延長線にちゃんとフィットする。通勤にも、買い物にも、休日のドライブにも自然に溶け込む。安全性も、信頼性も、修理体制も——どれを取っても抜け目がない。

トヨタ・ハイラックスサーフ(4WD/4AT)色褪せない誠実さ

“本格四駆”といわれるクルマが少なくなった今だからこそ、このクルマの誠実さが光る。それでいて、運転席に座るたびに「いいクルマに乗っている」という実感がある。

ハイラックスサーフは、トヨタが積み重ねてきた“まっすぐなクルマづくり”の結晶であり、その誠実さが、いまも色褪せることなく息づいている。

トヨタ・ハイラックスサーフ(4WD/4AT)色褪せない誠実さ

SPEC

トヨタ・ハイラックスサーフ 2.7 SSR-X リミテッド 60thスペシャルエディション

年式
2006年式
全長
4,770mm
全幅
1,875mm
全高
1,795mm
ホイールベース
2,790mm
車重
約1,870kg
パワートレイン
2.7リッター直列4気筒
トランスミッション
4速AT
エンジン最高出力
163ps/5,200rpm
エンジン最大トルク
246Nm/3,800rpm
  • 中園昌志 Masashi Nakazono

    スペックや値段で優劣を決めるのではなく、ただ自分が面白いと思える車が好きで、日産エスカルゴから始まり、自分なりの愛車遍歴を重ねてきた。振り返ると、それぞれの車が、そのときの出来事や気持ちと結びついて記憶に残っている。新聞記者として文章と格闘し、ウェブ制作の現場でブランディングやマーケティングに向き合ってきた日々。そうした視点を活かしながら、ステータスや肩書きにとらわれず車を楽しむ仲間が増えていくきっかけを作りたい。そして、個性的な車たちとの出会いを、自分自身も楽しんでいきたい。

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