3代目レンジローバー・スポーツ。この見た目だと、内装はどんな感じ? 性格はどうなの? とクルマ好きなら気になって当然。
3代目のレンスポを試す
ランドローバー・レンジローバー・スポーツのデビューは2005年。2022年に3代目がデビューした。同年5月、毎分750tの水が流れる193mのダムの放水路を駆け上る映像とともに日本で正式デビューした。
大きなトピックはデザインだろう。ランドローバーは「ダニスト的なアプローチを全面的に取り入れた」と説明する。全体的なフォルムはレンジローバー・スポーツの歴史を尊重しつつ、ドアハンドルをふくめてツルンツルンになった外観は注目を集めた。
具体的にはフロントグリルやデジタルLEDヘッドライトの形状、窓の上下もなめらかに繋がれた「フラッシュサーフェスウィンドウ」などが、全体感の大きな変化の要素となっている。個人的にはナンバープレート位置が車体下部の中央に移動したことも、つるりとした印象に大きく影響していると思う。
インテリアにも同じデザイン哲学が貫かれ、物理的なボタンやスイッチ類は最低限残されているに過ぎない。またウルトラファブリックの採用により、アニマルフリーであることを現代的にアピールしている。
いかにも未来的なのは13.1インチもの触覚フィードバック付きフローティング式フルHDタッチスクリーンだ。これのおかげでテスラまでとはいわないが、これまでのレンジローバー・スポーツが前時代的に感じられるほど大きく進化したといえる。
アーキテクチャーも「MLA-Flex(flexible Modular Longitudinal Architecture)」に更新された。48V駆動の電子制御アクティブロールコントロールシステムをはじめ、サスペンションの帯域幅を広げている。
このあたりが未来的な内外装に対してどれほどのレベルにあるかが興味深い。
ローンチエディション
日本仕様のレンジローバー・スポーツは、3リッター直列6気筒ディーゼルターボエンジン搭載車が標準となる。いっぽうのテスト車は3リッター直列6気筒ガソリンターボを搭載する。デビューと同時に160台限定で販売された「ローンチエディション」だ。
まずボディカラーが
・フィレンツェレッド×ブラックルーフ
・ジオラグリーン×ブラックルーフ
・ヴァレジネブルー×ブラックルーフ
・サントリーニブラック×同色ルーフ
という4色設定で、それぞれが40台ずつ、合計で160台の設定となる。
ホイールは艶のある黒塗りの23インチ・アロイが最初からついてくる。
パワートレインは3リッターの直列6気筒ガソリンターボで、400ps/550Nmを発生する。参考までにディーゼルが300ps/650Nm。いずれもマイルドハイブリッドシステムを組み合わせている。
そのほか細かい装備は
・ACC
・ブラックエクステリアパック
・フロントセンターコンソール急速クーラーボックス
・空気清浄システムプロ
・Wi-Fi接続(データプラン付)
・オンラインパック(データプラン付)
が最初からついてくる。
テスト車のボディカラーはサントリーニブラックであるから、それはもう隅々まで真っ黒クロスケである。これはこれでカッコいい。認めざるを得ない。
走りは誰もが喜ぶ進歩
気になっていたのは先代からの進化。また現行レンジローバーとの「差」だ。
まず先代レンジローバー・スポーツは、快適性を担保しつつ、スポーティネスをしっかり打ち出していた印象がある。「硬い」とは思わないけれど、しっかりとコシのある乗り心地で、ステアリングを切った際にも、極めて素直な反応を示した。適度な重みと素直な反応に好感をもった。
いっぽう現行レンジローバー・スポーツは、快適性が大きく進歩している。23インチのホイールをもってしても、当たりはマイルド。軽量ホイールを履いているかのように足捌きもテキパキしている。
現行レンジローバーのように、大きな重量さえサスセッティングと操舵の軽さで感じさせぬようなマジックとは異なるけれど、先代に比べるととても軽やかで、すっかり現代のクルマになった。
内外装のデザインは意見が分かれるとしても、この走りは誰もが喜ぶ進歩だと思う。また、ドライバーズシートからの視界=目線の高さやボンネットのエッジなど、これまでのレンジローバー・スポーツと大きく変わらない点もいい。形を大きく変えすぎずに熟成させてきたタイプのブランドならではだ。
パワートレインの力強さはもちろんのこと、もっちりとしたトルクやその立ち上がり方、高回転域に向けてのなめらかさは、ディーゼルもガソリンも近いところにあり、この規格にまだ伸び代があったことを気づかせてくれる。
さて、この世代になって、兄貴分のレンジローバーは、ハンドルの操作感などを例に極めて乗りやすくなった。同時に物理法則をも覆さんばかりの電子制御マジックが急速に進歩した。レンジローバー・スポーツは、これまでの個性=スポーツ性に磨きがかかり、かつ大幅に乗りやすくなった。
ゆえに、サイズではなく、好みで選んでよい時代がきたといえる。また同サイズのSUVを横並びでみても、やはりレンジローバーブランドには圧倒的な個性はある。
レンジローバー・スポーツの歴史自体は長くないけれど、やはりランドローバーのほかに代え難き個性があると実感した。
文:上野太朗(Taro Ueno)
SPEC
ランドローバー・レンジローバー・スポーツ・ローンチエディション
- 年式
- 2022年式
- 全長
- 4960mm
- 全幅
- 2005mm
- 全高
- 1820mm
- ホイールベース
- 2995mm
- 車重
- 2480kg
- パワートレイン
- 3リッター直6ターボ
- モーター
- 18ps/5000rpm
42Nm/2000rpm - トランスミッション
- 8速AT
- エンジン最高出力
- 400ps/5500-6500rpm
- エンジン最大トルク
- 550Nm/2000rpm
- タイヤ(前)
- 285/40R23
- タイヤ(後)
- 285/40R23
上野太朗 Taro Ueno
幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。