- レクサス / LS500h Fスポーツ(2020)
ガラパゴス化するおもてなし
なりふり構わず突き詰めると、それはいつか孤高の存在になる。しかし工業製品の場合、その存続可否は市場が欲するのかどうか。SUV、ミニバン。LSはどう生き残るのか。

「和」の美学が広がる
レクサスLS500h(2020年)。ボディカラーはブルー。その深みのある青は、まるで月明かりに照らされた海のように光と影を映し出している。
都心でも、カントリーサイドでも似合うのがふしぎだ。
レクサスLSは、1989年に登場した初代「LS400」から受け継がれるブランドのフラッグシップモデルだ。その系譜を受け継ぎつつ、2020年モデルはさらなる進化を遂げている。
フロントにはレクサスを象徴するスピンドルグリルが鎮座し、メッシュパターンが光を受けて複雑な陰影を描いている。グリルを囲むクロームのアクセントが、ブルーのボディと絶妙なコントラストを生み出している。
ヘッドライトには三眼式のLEDが採用され、L字型のデイタイムランニングライトがシャープな印象を強調している。その視線は「和」の切れ味を感じさせる鋭さをもつ。
サイドビューは流れるようなシルエットが印象的だ。全長5235mm、全幅1900mm、ホイールベース3125mmという堂々たるプロポーション。それでいて過剰な装飾はない。ボディサイドに刻まれた微妙なキャラクターラインが光と影を繊細に表現している。
リアエンドには一体感のあるLEDテールランプが組み込まれ、L字型のシグネチャーが「レクサス」であることを明確に主張している。クロームのトリムがわずかに輝き、フラッグシップモデルとしての格を物語っている。
ドアを開けると、そこには「和」の美学が広がっている。
「月明かり」をイメージしたアンビエントライトが室内を優しく照らし、ダッシュボードからドアトリムにかけて、織物のような装飾が施されている。
レクサスが「匠(たくみ)の技」と呼ぶインテリアは、職人による手作業によって仕上げられている。
ドライバーズシートに腰を下ろすと、そのホールド感に驚かされる。セミアニリンレザーの柔らかさ、シートの微細な調整幅、そしてステアリングを握ったときの自然なポジション──すべてが「完璧」だ。 ショーファードリブンとしても使える大型のサルーンにのっていながら、スポーツカーのようだとも思う。
そして、センターコンソールには最新の12.3インチタッチスクリーンが備わり、レクサス独自の「リモートタッチ」操作システムが採用されている。モニターに映し出されるグラフィックは、まるで精密な和紙の文様のように美しい。
エンジンスタートボタンを押すと、V6エンジンとハイブリッドシステムが静かに目を覚ます。耳を澄ましても、ほとんど音は聞こえない。
ホイールベースを感じさせない
Dレンジに入れ、アクセルを軽く踏み込む。ブルーのボディが滑るように動き出し、エンジンと電気モーターが時と場合に応じて共同作業する。
搭載されるのは3.5リッターV6自然吸気エンジンと2基の電気モーターを組み合わせた「マルチステージハイブリッドシステム」。システム合計で359psを発生し、そのトルクの出方が非常に滑らかだ。
EVモードでは完全な静寂に包まれ、40km/h付近まではモーターのみで走行可能だ。
アクセルを踏み込むと、V6エンジンが作動する際はちょっとブルっと震えが伝わるが、その後トルクが一気に湧き上がる。
「ハイブリッド=燃費重視」というイメージを完全に覆す加速力だ。
電気モーターが低回転域でトルクを発生し、そこにV6エンジンが加わることで、まるでターボ車のような強烈な加速感を味わえる。
コーナーの連続する道に差し掛かると、LS500hの本質が顔を出す。リアにはLDH(レクサス・ダイナミック・ハンドリングシステム)が搭載されており、コーナリング時にはリアステアリングが作動。長いホイールベースを感じさせない俊敏な動きだ。
AVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション)が瞬時に作動し、サスペンションの硬さがコーナーに合わせて変化する。
その結果、ロールが最小限に抑えられ、鋭い(鋭すぎるくらいだ)ステアリングレスポンスを実現している。
輸入車勢と比べる必要もない
速度域が高まると、LS500hはまた別の顔を見せる。100km/h巡航時のエンジン回転数は1500rpm以下。エンジン音もロードノイズも、まったく聞こえない。
アクティブノイズキャンセリング機能がロードノイズや風切り音を完全に遮断し、マークレビンソン製のサウンドシステムが完璧な音響空間を作り出している。
高速の合流でアクセルを踏み込むと、V6エンジンと電気モーターが一気に立ち上がり、余裕のある加速力を発揮する。その感覚はまるでジェット機が離陸する瞬間のようだ。
長距離移動でも疲れを感じさせないシート、理想的なドライビングポジション、そしてマークレビンソンのオーディオが織りなす「五感を満たす快適性」。
LS500hは、単なる「移動の手段」ではない。それは「静かなる力」を内に秘めた、グランドツアラーである。
あえて輸入車勢と比べる必要もないのだろうとも思う。
レクサスLS500h──それは「静寂の中に潜む猛獣」である。日本人のための。

幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大...
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