- ランドローバー / レンジローバー スポーツ SVR(2022)
コタツでいただくアイスの旨さ
レンジローバー・スポーツSVRジャパンSVエディションの試乗記。炸裂する5リッターV型8気筒スーパーチャージド・エンジンを安楽に味わうというギャップに酔った。

SV、SVR、SVO…
ひときわ変わった色のレンジローバー・スポーツだ。アボカドという名の外装色らしい。モデル名の末尾にはSVR。ジャパンSVエディションなる仕様だという。特別な車なのだ。
「SV」とは、スペシャル・ビークル・オペレーションズ(SVO)から来ている。要するに技術面/デザイン面で、ランドローバー(とジャガーも)を更なる高みへ持ち上げる、同グループ内の組織のことである。
ジャパンSVエディションは、特別仕様車であることを意味する。上記SVOがデザインを手掛け、アボカド/SVビスポーク・グレイ/ロランジュ(オレンジ・メタリック)の3色が日本に導入するのは初めてのこと。
内装はすべてエボニーとシーラスと呼ばれるカラーのツートーン仕立てだ。ヘッドレストに「SVR」の刺繍、ドアを開けたBピラーに「SV BESPOKE」のエンブレムの他「ONE OF 25」と書かれたエンブレムもある。
「ONE OF 25」と書かれる通り、合計25台。アボカドは9台のみの設定となる。
この上ない上質さ
レンジローバー・スポーツSVRは、5リッターV型8気筒スーパーチャージド・ガソリン・エンジンをカーボン製ボンネットの下に収めている。アルミ製ブロックは、575psと700Nmを叩き出す。
「ランドローバー史上もっとも速く、もっともパワフル」とランドローバーは言う。
0-100km/h加速は4.5秒。全長×全幅×全高:4880×1985×1800mm、ホイールベース:2920mm、車両重量2450kgというサイズ感を考えると、ガソリン車の世界においては驚異的な加速力と言えるだろう。
インテリアで目を引くのはバケットシートさながらのヒーター&クーラー付きシートである。大柄なSUVとのギャップが新鮮だ。革はあくまでスムーズで、削り出したアルミ素材も美しい。スライディング・パノラミック・ルーフ(ガラス)が車内を明るくする。
上質、とはこの車の為にある言葉だとさえ思える。どこに触れても柔らかく、なめらかで、さすがはレンジローバーだと感じるのだ。
バッチン!バチン!
エンジンが目覚めた瞬間、動く高級リビングをこれから楽しもうと、リラックスしていた体が鞭打たれ、目覚め、覚醒した。
ゴロゴロゴロと車体後方から轟音が響いている。周囲にこだましている。
アクセルを恐る恐る踏むと、音はさらに大きくなる。重量級のボディは、その重さをパワーで砕くかのように嬉々として前に進む。
豊かなトルクの盛り上がり方は、それでもなめらか。踏めば踏むだけ車体が進み、これだけパワーがあるにも関わらず、不思議なほど怖さがない。
バケットタイプのシートも見た目とは裏腹に快適で、体にフィットしてくれる。
22インチのアロイホイールを組み合わせるにもかかわらず、乗り心地もやわらか。これは全モードを通じて変わらない。
大きな画面でダイナミックプログラムを選ぶ。エンジン/トランスミッション/ステアリング/サスペンションがさらに引き締まる。大きな車体は一体感を増す。大きく加速しブレーキをギュッと踏むと、バッチン!バッチン!とアフターファイヤー。この車の音?と疑うほどの盛大なサウンドを披露してくれた。
快適な破壊的行為
終始感心するのは、強大なパワーを得ながら、走りは「レンジローバー」として求められる安楽さをまったくスポイルしていない点だ。
コマンドポジションで湧き上がるパワーを楽しむ行為は、ヒーターをマックスの状態にして真冬のオープンエアを楽しむような、あるいはコタツでいただくアイスクリームのような、ギャップありきの快楽に感じられる。
多くのメディアの論調と異なり、電力推進派でも反対派でもないわれわれは(きっと電気自動車の時代になったとしても、心の底から楽しむ術を見つけられるだろうけれど)、ただただ低いギアを維持しながらガソリンを燃やし、炸裂する音を味わい続けるのだった。
そしてこの破壊的行為を、いつものレンジローバーの乗り心地そのもので味わえることこそ、SVRにしかない魅力だと思った。