メルセデス・ベンツGLC

メルセデス・ベンツGLCについて、メルセデスは「Cクラスと同等の安全・快適装備を備えるとともに、SUVならではの高いアイポイント、同セグメントでは低い重心による乗用車のような乗り心地と、取り回しの良さを合わせ持つプレミアム・ミドルサイズSUV」だと説明する。同車のマイナーチェンジを控えた2018年には、メルセデス・ベンツのSUVの中で最多販売台数を記録した。

デビューは2016年。CクラスをベースにSUV化したもので、デザインもCクラスと共通するディテールが多かった。

派生モデルとしてGLCクーペも存在する。GLCと同等の走行性能、そして利便性を有しながらスタイルを重視した。

2023年にはフルモデルチェンジを果たしている。今回は初代（2016年〜2023年）の中でも2019年に実施されたマイナーチェンジ後のモデル。その中でもメルセデスAMG GLC43 4マティックに焦点を当てる。

メルセデスAMG GLC43

GLCのパフォーマンスモデルとして存在するのが、GLC43とGLC63だ。

43は3リッターV型6気筒ツインターボ、63は4リッターV型8気筒ツインターボを搭載する。

この記事の主役である43は、ターボの大型化と制御の改良により、マイナーチェンジ前より23psの増強を果たし、最高出力は390psに至る。最大トルクは520Nmに達する。

4WDシステム「4マティック」は前後パワー配分31：69というリアよりのトルク配分となる。トランスミッションは全モデル共通の9速オートマティックとなる。

縦にルーバーが入ったAMG専用「パナメリカーナグリル」を採用する。これはAMG43シリーズとしては初のことだったという。クロームメッキを施した垂直フィンの基本デザインはモータースポーツに由来し、1952年メキシコで開催された伝説の公道レース、カレラ・パナメリカーナ・メヒコで優勝したレーシングカー「300SL」と共通する。

前後エプロンもマイナーチェンジにおける新設計となった。空力性能を向上させた。さらにエグゾーストパイプも左右それぞれ「ツイン・ラウンド・テールパイプ」を採用。

インテリアでは「AMGパフォーマンス・ステアリング」を採用。フラットボトムやセンターマークなど、どんな時代でもワクワクするディテールが揃っている。

良識あるスポーツSUVだ

スタートボタンを押すと、SUVの見た目とギャップのあるパワフルなサウンドが響く。

ゆったりと街を流すような領域では、3リッターV型6気筒ツインターボが主張するようなことはない。思慮深く、的確な9速オートマティックは細やかに、そして淡々と変速を進めファミリーカーとしての要件さえ満たす。

前：255/45ZR20、後ろ：285/40ZR20サイズゆえか、路面の凹凸は素直に室内に伝わってくる。AMGライド・コントロール・プラスと名付けられたエアサスペンションも収束を急ぐ。総じて硬質な印象を受ける。

この乗り心地が光るのはスピードを上げたときだ。3リッターV6ツインターボに鞭打つと、簡単に高い速度域に達する。ぐっと重みをましたステアリングを切れば寸分の遅れなくノーズが動き、先述の引き締まったサスペンションがほとんど、背の高い車体であるにもかかわらず、ロールを生じさせずに車を旋回させてしまうのだ。速いぞ…。歯を食いしばる。

V6らしい伸びやかな回転フィールにも舌を巻く。胸がすく思いだ。アクセルの些細な操作にもエンジンは反応する。迫力あるサウンドと共に、気づいたらとんでもない速度だ。63、いらないじゃん、とさえ思う。

とはいえ63には63の役割というものが明確にあり、あっちはあっちで凄く良い。

ただ、標準＋αの範疇で、実用〜迫力までまんべんなく楽しめるのはぜったいにこっち（43）。良識あるスポーツSUVという言葉が43にぴったり。奥様がふつうに乗れて、子どもも嫌がらず、しかし奥様が知らない領域を旦那様が密かに満喫する。これが叶うのはGLCの中で43だけなのだ。いい車です！