- メルセデスAMG / GT R(2017)
その速さを色にしたクルマ
AMGグリーンヘルマグノ。 鮮烈なこの緑は、GT Rを象徴するボディカラーです。その名の由来となったのは、「Green Hell=緑の地獄」と呼ばれるニュルブルクリンク北コース。

起伏が激しく、路面のアンジュレーションも大きいこのコースは、世界中の自動車メーカーが車両開発に用いてきた場所でもあります。
そしてGT Rは、『sport auto』誌のテストにおいて7分10秒9を記録。当時、同誌がテストした市販スポーツカーとして最速のタイムでした。
GT Rにとってニュルブルクリンクは、速さを証明した場所であると同時に、その速さを作り上げた場所でもあります。
2014年に登場したAMG GTは、ロングノーズ・ショートデッキという古典的なスポーツカーのプロポーションを持ちながら、現代のAMGらしい性能と日常性を両立したモデルでした。
そこからサーキット性能をさらに突き詰めたのがGT Rです。
心臓部はM178型4.0リッターV型8気筒ツインターボ。専用チューニングによって最高出力585PS、最大トルク700Nmを発生し、0-100km/h加速は3.6秒、最高速度は318km/hに達します。
ただ、GT Rの凄さは数字だけではありません。
エンジンをフロントアクスルより後方に置くフロントミッドシップとし、7速DCTは後方へ配置するトランスアクスル方式を採用。前後重量配分は48:52と、わずかに後輪寄りです。
さらに電子制御式リアディファレンシャルやアクティブ・リアアクスルステアリングを採用。低速では後輪を前輪と逆方向、高速では同方向へ操舵し、旋回性と高速安定性を両立しています。
センターコンソールでひときわ目立つのが、黄色いダイヤルです。
これはAMGトラクションコントロールの調整ダイヤルで、ESPをOFFにした状態で後輪のスリップ量を9段階に調整できます。
公道では、そのすべてを使い切る場面などまずありません。
それでもレーシングカー由来の機構をロードカーにそのまま持ち込んでいるところに、このクルマの性格がよく表れています。
リアに回れば、中央の大型テールパイプと左右の排気口を組み合わせた専用エキゾーストが目に入ります。
足元には前19インチ、後20インチのマットブラックAMG鍛造ホイール。その奥にはAMGカーボンセラミックブレーキが覗きます。
そして、この個体を特別なものにしているのがAMGグリーンヘルマグノです。
GT Rというクルマが生まれた背景まで含めて考えれば、この色は単なる派手なボディカラーではありません。ニュルブルクリンクで磨かれた性能を、そのまま視覚に置き換えたような色です。
インテリアにも、その緊張感が続きます。
フルレザーパッケージにAMGパフォーマンスシートを組み合わせ、イエローのロゴとステッチ、シートベルトがアクセントになります。マット仕上げのカーボンパネルやAMGカーボンエンジンカバーも、この個体のキャラクターによく似合っています。
一方で、Burmesterハイエンドサラウンドサウンドシステムを備え、ラゲッジスペースも通常のAMG GTと大きく変わりません。
サーキットを速く走るための技術を詰め込みながら、荷物を載せて遠くへ出かけることもできる──GT Rが面白いのは、この二面性です。
今回の個体の走行距離は約2.5万km。
同世代のポルシェ・911GT3と比較したくなる存在ですが、GT Rには911とはまったく異なる様式があります。
長いノーズの先にV8を収め、後輪を駆動し、大きな排気音とともに路面を蹴る。その荒々しい構成を、電子制御と緻密なシャシー設計によって速さへ変えていくのがGT Rです。
AMGグリーンヘルマグノは、その思想を隠そうとしません。
何のために生まれ、どこで鍛えられ、どんな性能を持っているのか。
GT Rというクルマは、それを鮮やかな緑のボディだけで語ってしまいます。

絵本よりも中古車情報誌を隅々まで読み込んでいた幼い頃。それ以来、ずっとクルマに魅せられてきた。高校生の時に初めたInstagram「hinacars」では6年間で200...
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