「イチニーヨン」と皆が呼ぶメルセデス・ベンツ・ミディアムクラスならびにEクラスが、デビューから40年になろうとしている今もなお評価されている理由を試乗で探った。
INDEX
「イチニーヨン」経験者かどうか
車を語り合う際、しばしば「イチニーヨンに乗ったことがあるか」という話題になる。
この「イチニーヨン」は、メルセデス・ベンツW124のことを指すことが多い。
先代はW123。W124は1985年に本国発表。86年に日本上陸した。W123からは、より小さいボディのW201=コンパクトクラスが派生。W124はミディアムクラスと呼ばれた。
年式は4つに大別される。見た目で判断できる。前期(1986〜90年)は、ドアハンドルやバンパー、サイドミラーが樹脂製。ボディサイズには樹脂製のモールのみ。周囲に15個の穴を設けたホイールが特徴だった。
中期(1990年)は、ボディサイド下端に、サッコプレート=クロームモール入りパネルが貼り付けられる。ドアミラーにもメッキのモール。サイドミラーもボディ同色になった。
1993〜1994年の短い期間を中後期という。メカニズムの変更が主。唯一目で見て分かるのは、15穴のアルミホイールが8穴になった点。あとは中期型と、ほとんど同じ。
ちなみに厳密にはW124のWはセダンを指す。Sはステーションワゴン、Aはカブリオレ、Cはクーペを指す。厳密には…。
ウインカーを出そうと左手の指がレバーを探るも空を切る。そう、右に1本。このレバーもロー/ハイビームの切り替え、間欠ワイパー、ウォッシャー、ウインカーまでを司るのだった。
すべては運転に集中するため、もっといえば安全のためにやっているに過ぎない、と、メルセデス・ベンツは平然と言うだろう。マジメだ。
だから先述のシーソーの様に前後が別方向に浮き沈みするのではなく、前も後ろも同じ様に沈み、同じ様に浮かぶ。バウンスする、といえばイメージしやすいだろうか。
これが、頭/視線の動きを変えづらい。運転席以外の住人もリラックスする。独特な心地よさにつながっている理由である。
リサーキュレーティングボール式を採用したステアリングから手に伝わってくる情報もたっぷりとしている。しっとりとした上質なフィールは、現代のメルセデス・ベンツが参考にしていることがうかがえるのだった。
「イチニーヨン」は、走る「生き字引」。メルセデス・ベンツの信念、いや自動車の有るべき姿を学ぶことができるのであった。
改めて何がすごいって、現代のエアサスや複雑な構造に頼らずにこれを実現してきたことなのだ。
SPEC
メルセデス・ベンツ・ミディアムクラス280E
- 年式
- 1993年
- 全長
- 4740mm
- 全幅
- 1740mm
- 全高
- 1450mm
- ホイールベース
- 2800mm
- トレッド(前)
- 1510mm
- トレッド(後)
- 1500mm
- 車重
- 1530kg
- パワートレイン
- 2.8リッター直列6気筒
- トランスミッション
- 4速AT
- エンジン最高出力
- 200ps
- エンジン最大トルク
- 277Nm/3750rpm
- サスペンション(前)
- ストラット
- サスペンション(後)
- マルチリンク
- タイヤ(前)
- 195/65 R15
- タイヤ(後)
- 195/65 R15
メルセデス・ベンツEクラスE320
- 年式
- 1995年
- 全長
- 4740mm
- 全幅
- 1740mm
- 全高
- 1445mm
- ホイールベース
- 2800mm
- トレッド(前)
- 1510mm
- トレッド(後)
- 1510mm
- 車重
- 1560kg
- パワートレイン
- 3.2リッター直列6気筒
- トランスミッション
- 4速AT
- エンジン最高出力
- 225ps
- エンジン最大トルク
- 317Nm/3750rpm
- サスペンション(前)
- ストラット
- サスペンション(後)
- マルチリンク
- タイヤ(前)
- 195/65 R15
- タイヤ(後)
- 195/65R15