- メルセデス・ベンツ / E200 クーペ(2021)
- メルセデス・ベンツ / E200 クーペ スポーツ(2022)
「余裕」という魅力
メルセデス・ベンツEクラスE200クーペ・スポーツに試乗。なぜEクラスのクーペをわざわざ買う必要があるのか。探っていくと「大人の余裕」という言葉が浮かんできた。

5代目Eクラス マイチェン版
5代目メルセデス・ベンツEクラス。基準車のセダンはW213を名乗る一方で、このクーペはC238のコードネームがつけられている。
元は2016年、北米でデビューした。2020年9月10日にセダン/ステーションワゴンがマイナーチェンジ。1か月も経たぬ10月5日に、クーペ/カブリオレが続いた。
外観の変更点としてはヘッドライトがまず違う。大きくラウンドしたものから、上下に薄く切れ上がる新世代のデザインに統一された。リアコンビネーションランプも外側に向かって上下方向の高さが増す、2分割型となった。下方向に幅が大きくなる台形グリルの切り方などすべてが、エッジーでダイナミックになった。
パワートレインにも特徴がある。M264型1.5リッター直列4気筒ターボは単体で184ps/280Nmを生み出しながら、脇でBSGと48Vシステムがリチウムイオン電池におよそ1kWhを貯める。
クランクシャフトにベルトを介して作用するトルクは最大160Nmに達し、エンジン始動、加速面で役に立つ。試乗の楽しみの1つだ。
Eクラス・クーペのサイズ感
Eクラス・セダンやステーションワゴンであればサイズ感が掴みやすいものだけれど、クーペだとどうなのか。下に一覧を示す。
Eクラス・セダン E200スポーツ
全長:4940mm
全幅:1850mm
全高:1455mm
ホイールベース:2940mm
Eクラス・クーペ E200スポーツ
全長:4845mm
全幅:1860mm
全高:1430mm
ホイールベース:2875mm
Cクラス・セダン C200
全長:4755mm
全幅:1820mm
全高:1435mm
ホイールベース:2865mm
クーペならではの外装で特筆すべきは、やはり伝統的なプロポーションだろう。メルセデス・ベンツがアピールするとおり、低く立ち上がるAピラー、高い位置にあるベルトライン、そしてサッシュレスドア。Eクラスの体躯をもってしての敢えての2ドアだから、前後に余裕があり、結果、優美な印象を与える。
内装を見渡すと3本のツインスポークステアリングが目に入る。見た目上はクラシカルだけれど使い勝手も良い。「ハイ、メルセデス」で目覚める対話型インフォテインメントシステムも備わる。実際に使っていてストレスが少ない。
またセンターコンソールのなめらかなデザインもセクシーで、それぞれが高い精度で組み合わさっているのも、やはりメルセデス品質だ。
試乗した2台 共通点と違い
今回は2台一緒にテストしたが、基本的にはいずれもE200スポーツを名乗り、同じである。
異なるのは組み合わせているパッケージであり、ブルーのボディの個体は、レザーパッケージと呼ばれるパッケージオプションが組み合わされた。これにはナッパレザーシート、パノラミックスライディングルーフ、プライバシーガラス、ブルメスターサラウンドサウンドシステム、エアバランスパッケージ(空気清浄機能/高性能フィルター/芳香)が含まれている。
また白いボディには275/40 R18のホイールが、ブルーのボディには245/40 R19のホイールが組み合わされていた。前後のバンパー等にも少しずつ意匠の違いが見られた。
シートに腰降ろすと右肩のあたりからスッと電動でシートベルトが差し出される。メルセデスのクーペに乗っている実感がある。ドライブに入れて走り出すとギュッギュッとやわらかくそのシートベルトが締め上げられる。ああメルセデス・ベンツに乗っているなと実感する。
ボディの動きはメルセデスの例に漏れず鷹揚で、ボディやホイールベースがセダンよりも短いからといって、明らかにピッチが増えたりする感覚はない。車格よりも、足さばきの巧さが際立っていると感じられる好例だ。
また先述のパワートレインもよい仕事をしている。確かにアイドリングストップからの復帰はシュッと静かに完結する。そこからの伸びはもちろんフルハイブリッドにゆずるけれど、確実に48Vマイルドハイブリッドが仕事をしていると感じられる。一般道/高速道路を走った今回のテストでは1.5リッターの排気量から想像するような非力さを感じることは一切なく、それどころか力不足だと思ったことはなかった。
興味があった18インチと19インチの乗り心地は、不思議なことに後者の方がよかった。前者は稀にバタついた。マッチングの問題だと思う。けれどこれは、タイヤの銘柄、空気圧によって逆転する範疇だと経験上思う。念の為申し上げると「ふつう」に街を流す分には、いずれも「やっぱりメルセデスの乗り心地だね」と感動するレベルにあることは補足しておく。
敢えてクーペを選ぶ理由は?
クーペというのは、とてもパーソナルな車だと思う。
ドアが4枚あると、たとえスポーティな車でも、実用的な香りがする。一方、2枚で、それも、なだらかなボディラインをもつ車だと、どんな人がこの車に乗っているのだろう、どんな使い方をしているのだろうと気になってくる。
さらに心が動かされるのは、Eクラスという車格でもって、敢えてクーペを選んでいる点。「余裕」という2文字とも、あるいは結びついてくるのかもしれない。
シチュエーションは問わない。サイドウインドウを後ろまで開け放って、ゆるりと滑るように走らせれば、それがどんな場所でも、ちょっとした非日常に転じる。
そこにいるだけで場がパッと華やぐ人がいる。車にもある。優雅なクーペはそのひとつだ。