メルセデス・ベンツEクラスE200クーペ・スポーツに試乗。なぜEクラスのクーペをわざわざ買う必要があるのか。探っていくと「大人の余裕」という言葉が浮かんできた。
INDEX
5代目Eクラス マイチェン版
5代目メルセデス・ベンツEクラス。基準車のセダンはW213を名乗る一方で、このクーペはC238のコードネームがつけられている。
元は2016年、北米でデビューした。2020年9月10日にセダン/ステーションワゴンがマイナーチェンジ。1か月も経たぬ10月5日に、クーペ/カブリオレが続いた。
外観の変更点としてはヘッドライトがまず違う。大きくラウンドしたものから、上下に薄く切れ上がる新世代のデザインに統一された。リアコンビネーションランプも外側に向かって上下方向の高さが増す、2分割型となった。下方向に幅が大きくなる台形グリルの切り方などすべてが、エッジーでダイナミックになった。
パワートレインにも特徴がある。M264型1.5リッター直列4気筒ターボは単体で184ps/280Nmを生み出しながら、脇でBSGと48Vシステムがリチウムイオン電池におよそ1kWhを貯める。
クランクシャフトにベルトを介して作用するトルクは最大160Nmに達し、エンジン始動、加速面で役に立つ。試乗の楽しみの1つだ。
クーペならではの外装で特筆すべきは、やはり伝統的なプロポーションだろう。メルセデス・ベンツがアピールするとおり、低く立ち上がるAピラー、高い位置にあるベルトライン、そしてサッシュレスドア。Eクラスの体躯をもってしての敢えての2ドアだから、前後に余裕があり、結果、優美な印象を与える。
内装を見渡すと3本のツインスポークステアリングが目に入る。見た目上はクラシカルだけれど使い勝手も良い。「ハイ、メルセデス」で目覚める対話型インフォテインメントシステムも備わる。実際に使っていてストレスが少ない。
またセンターコンソールのなめらかなデザインもセクシーで、それぞれが高い精度で組み合わさっているのも、やはりメルセデス品質だ。
興味があった18インチと19インチの乗り心地は、不思議なことに後者の方がよかった。前者は稀にバタついた。マッチングの問題だと思う。けれどこれは、タイヤの銘柄、空気圧によって逆転する範疇だと経験上思う。念の為申し上げると「ふつう」に街を流す分には、いずれも「やっぱりメルセデスの乗り心地だね」と感動するレベルにあることは補足しておく。
さらに心が動かされるのは、Eクラスという車格でもって、敢えてクーペを選んでいる点。「余裕」という2文字とも、あるいは結びついてくるのかもしれない。
シチュエーションは問わない。サイドウインドウを後ろまで開け放って、ゆるりと滑るように走らせれば、それがどんな場所でも、ちょっとした非日常に転じる。
そこにいるだけで場がパッと華やぐ人がいる。車にもある。優雅なクーペはそのひとつだ。
SPEC
メルセデス・ベンツE200クーペ・スポーツ
- 年式
- 2021/2022年
- 全長
- 4845mm
- 全幅
- 1860mm
- 全高
- 1430mm
- ホイールベース
- 2875mm
- トレッド(前)
- 1600mm
- トレッド(後)
- 1590mm
- 車重
- 1750kg
- パワートレイン
- 1.5リッター直列4気筒ターボ
- トランスミッション
- 9速AT
- エンジン最高出力
- 184ps/5800-6100rpm
- エンジン最大トルク
- 280Nm/3000-4000rpm
- タイヤ(前)
- 275/40 R18 245/40 R19
- タイヤ(後)
- 275/40 R18 245/40 R19