ロールス・ロイス・レイス(FR/8AT)究極のパーソナルカー

ロールス・ロイス・レイス(FR/8AT)究極のパーソナルカー

「2ドアクーペ」というイメージからかけ離れた概念をもつロールス・ロイス・レイス。この巨大なパーソナルカーは、すなわち究極のパーソナルカーである事を、試乗で証明した。

「わっ」と圧倒された

ロールス・ロイス・レイスを目の前にして「わっ」と圧倒されてしまったのは、その大きさが理由である。

「2ドアのクーペ」と聞いて、人間が自然にイメージするサイズというのがやはりあって、対するレイスは、体感的にそれを1.5倍、いや2倍くらいにしたサイズ感をもって、目の前に現れたのだった。

現在ロールス・ロイスは、大きく分けて5つのモデルラインナップを揃える。

頂点に位置するのが、誰もが知る「ファントム」である。ショーファードリブンを前提とした4枚ドアのサルーンである。

つい先ごろ加わったのがロールス・ロイス・カリナンだ。いわゆるSUVで、平日は後席で過ごし、休日はみずからがハンドルを握られる仕立てであり、全く新しい価値を生み出した。カリナン投入後の2019年第1四半期の新車販売は前年同期比は49.4%増。貢献している。

さらにファントムと似通ったデザインで一回り小さい「ゴースト」がある。このゴーストには、2ドア版の「レイス」、そのカブリオレ版の「ドーン」がある。現在ゴーストはフルモデルチェンジを完了しているけれど、レイス/ドーンは引き続き従来型が新車販売されている。

細かくいうと、ファントム/ゴーストには「エクステンデッド」といういかにも英国らしい表現のロングホイールベース版が、さらにファントム以外には「ブラック・バッジ」という全身黒塗りの個体が設定されている。後者もまたロールス・ロイスの販売台数を後押ししている。これが2022年現在のラインナップだ。

で、レイスがどれくらいのサイズ感か、である。数値を元にみていこう。

4ドア級の2ドアクーペ

ロールス・ロイス・レイスのボディサイズは
全長:5280mm
全幅:1950mm
全高:1510mm
ホイールベース:3110mm

ベースとなったゴースト(旧モデル)は、
全長:5400〜5570mm、
全幅:1950mm
全高:1550mm
ホイールベース:3300mm

サルーン(ゴースト)からクーペ(レイス)になったからといって、極端に小さくなったわけではないと言えるだろう。

対する超高級サルーンとして思い浮かべる銘柄といえば、ベントレーやメルセデス・マイバッハなどだろうか。

ベントレーの同じく2ドアクーペモデルたるコンチネンタルGTは、
全長:4820mm
全幅:1950mm
全高:1400mm
ホイールベース:2750mm
であり、同じ2ドアクーペとはいえ、全長が580mm、全高が150mmもロールス・ロイス・レイスは大きい。

メルセデス・マイバッハSクラスだと
全長:5470mm
全幅:1920mm
全高:1650mm
ホイールベース:3550mm
であるから、全長/ホイールベースこそ4ドアサルーンゆえマイバッハの方が長いながら、目の前にした時のイメージを左右しやすい全高/全幅はほぼ同値。

ロールス・ロイス・レイスの「サイズ感」を掴んで頂けただろうか?

物理法則をひっくり返す

ドライバーズシートに腰下ろすと、やわらかい革張りのソファのような感触が、臀部、腰、そして背中、肩に伝わる。

リアヒンジのドアをそっと閉じると、あとはオートクロージャーが静かにボディパネルにドアを吸い寄せる。

途端に外界の騒音はスッと遮断される。何気ない自分の呼吸さえ、いつもより大きく耳に届いてくるほどの静粛性だ。

ほっそりとしたステアリングを握り、重みあるガスペダルを踏むと、一瞬の間を置いてレイスは滑り出す。ここまでに記したサイズ感が、車の動きにも現れていることが如実に伝わってくる。

一般道をゆっくり流していると、上下にゆったり、ゆったりとボディが動く。独特な乗り味で、車の2.5tに迫る重量も上質感に寄与していることを知る。

少し粗い路面を選んで走ってみる。ボディは相変わらず穏やかで大きな波長をもって、滑るように前進する。足元の遠くの方で、タイヤがシタタタタと動いている感触が伝わる。まるで腰下とボディが分離しているかのような、とろける乗り心地である。私は魔法の絨毯なるものに乗ったことがないけれど、乗ればきっとこんな感覚なのだろうなと思った。

少しタイトな道へと進んでみる。それなりにステア応答は穏やかであるものの、横にギッコンバッタンと倒れるようなだらし無さは無縁である。それどころかタイト、ともいえる、メリハリのある動きを楽しめる。旧いものでシルバー・クラウドIから試乗した私の記憶を辿っても、静と動、両側面において、おだやかなのにメリハリのある挙動を示すロールス・ロイスは無いといっていい。

パワートレインは、すべての時間において脇役に徹する。6.6リッターものV型12気筒ターボユニットは、決して回転を高めるわけではなく、淡々と、そして控えめな仕事に従事する。まるで王家に長年仕える実直なスチュワードのように。

究極のパーソナルカーだ

もうひとつ、付け加えておきたいロールス・ロイス・レイスの魅力が内装にある。

ドアパネルの際まで張り込んだレザー。まるでパネルとパネルが革によって繋がっているように見える。いかにも贅沢だ。

削り出しの金属、まるで生きているかのようなウッド。視覚のみならず手触りをもって、乗員に上質さを訴えかける。

後部座席も侮るなかれ。クーペとはいえ大きな体躯のおかげで、まず座面に余裕がある。またレッグルーム/ヘッドルームともに、172cmの筆者は窮屈に感じることなく座れた(実際にはあまり使われないとは思うけれど…)

究極のパーソナルカーとは?と問われると、私は間違いなくレイスを挙げる。

大人2名とラゲッジ。自らステアリングを握って旅へ。天に上るような乗り心地、この上ない上質な室内空間、その気になれば大抵の車を突き放せる速さ。

そんな事を考えながら、優先道路を直角に跨ぐために一時停止で止まっていた。すると、優先道路を走っている車が一斉に止まり、レイスのために譲ってくれた。

この車のサイズ、そして身に纏うオーラが、周りの車を止めてしまったのだろう。きっと車に興味のない人だって、この独特の雰囲気に一目置くことになるはずだ。

レイスに乗っていると、全ての道が、私の為にあるような気さえしたのだった。

SPEC

ロールス・ロイス・レイス

年式
2015年
全長
5280mm
全幅
1950mm
全高
1510mm
ホイールベース
3110mm
トレッド(前)
1620mm
トレッド(後)
1670mm
車重
2360kg
パワートレイン
6.6リッターV型12気筒ターボ
トランスミッション
8速AT
エンジン最高出力
632ps/
エンジン最大トルク
800Nm/5500rpm
サスペンション(前)
ダブルウィッシュボーン
サスペンション(後)
マルチリンク
タイヤ(前)
255/45 R20
タイヤ(後)
285/40 R20
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