- ジープ / ラングラー アンリミテッド サハラ(2021)
なぜこんなに人気なのか?
街を移動していると、カクカクした、いかにもタフなジープ・ラングラーをよく見る。どこか皆、楽しそうだ。なぜ多くの人が好んで乗っているのか。試乗で魅力を検証した。

ラングラーのご先祖様
ジープ・ラングラーを街でよく見る。そう思うあなたは間違っていない。ジープは2013年以降、毎年販売記録を更新しているのだ。2021年、ジープは過去最高の売上に。1万4294台の新車が、新たなオーナーのもとに嫁いだ。
中でも最も多く売れた車がラングラーだ。同年6931台と、なんとジープ全体の48%の売上をラングラーが占める。量販車種ではなく、もっとも高価な(そして趣味性の高い)モデルが1位になるという点が面白い。
そんなラングラーの先祖はウィリスMBという軍用車であった。1941年の登場であった。
直系の祖としては1987年にデビューしたYJ型まで遡る。CJ(シビリアン・ジープ=民生仕様)の後継として、角型ヘッドライトや中腹に折り目のある7スロットグリルが特徴だった。
1997年にはその後継、TJがデビュー。角型のヘッドライトは丸目に戻る。すなわち外観はウィリスMBに近くなったいっぽうで、リーフスプリングは4リンクのコイルサスペンションに。現代化したのであった。
YJ→TJと続いたラングラーは、JK型になる。2007〜2017年まで10年間続いた。TJ時代は単にロングホイールベースを意味した「アンリミテッド」は、この時代で4ドアとなる。
その後、2018年に日本国内で発表されたのが今回試乗するJLである。
JK型ラングラーとは?
写真で見る限り先代のJK型とあまり変わらないように見えるかも知れないが、JL型は、アンリミテッド(4ドア)比較で全長+165mm、全幅+15mm、ホイールベース+65mmと大幅な拡大を遂げた。
一方でドアパネルやフェンダーをアルミニウムに、骨格を一部マグネシウムに差し替える事で、先代−約100kgを実現した。
ジープといえば比較的大きい排気量のエンジンを連想しがちだが、この世代には2リッター直列4気筒ターボも加わった。(ちなみに2022年12月現在、3.6リッターV6は廃止され、2リッター直4に一本化されている)
内外装にグッとくるのは、どれもタフなオフロードユースを連想させ、かつてのジープに敬意を示すディテールが散りばめられているからだろう。ドアのヒンジは全て外にある。ルーフ全体は(その気になれば)外す事ができる(男性3名は必要)。フロントウインドウだって(その気になれば)倒すことができる。
リアに回るといかにも実用性が高い、無骨で太い、赤の牽引フックが顔を覗かせる。
グローブを着けたままでも操作できる大きなスイッチや、雨が降り込むことを予想したUSBのスイッチ系の蓋、ザクッとフロアに敷かれたゴムのマットなど、ヘビーユースな「道具感」にいちいち心ときめくのである。
どこにだって行けるぞ
ドアノブを引くと、前後に短いドアがペコっと開く。Aピラーの内側を掴んでヨッコラショと乗り込むと、そこから見える景色は異世界だ。
前後に薄いダッシュボードの向こうに高い視線を送る。前に突き出た直角のボンネットを見ればどんな所にも行けそうな気がする。
走り出してすぐに気づくのはラダーフレーム構造による乗り味だ。ラダー、という通り、はしご形状のフレームに、エンジンやサスペンション、ミッションを組み付け、最後にボディを被せるこの構造は、剛性に利する一方で、上下はもちろん、前後にも左右にもボディを揺する。
おまけにボールナット式のステアリングである。比較的軽くハンドル操作ができる一方で、全体の動きはルーズになる。
これらの特徴はすべてオフロードの走破性を最優先した結果だ。ルーズなおかげで、ボコボコの岩場でもステアリングが急に反転することがないし、ボディオンフレーム構造だからこそ情報量も多く、タフな環境もどんと来いなのだ。
いずれも1世代前のモデルに比べると遥かに洗練された。内装は現代化されたし、今やアダプティブクルーズコントロールさえついている、という点は付け加えておこう。
必要のないものにこそ
デイリーユースの快適性に反して、ほとんどどのクロカンに負けないほどの強さを、今現在も堅持しているジープ・ラングラー。
ここまで冷静な頭のまま読んできたあなたは、そんなもの必要ですか? と問うだろう。
これが興味深い所だ。
それが必要か? ではなく、必要ないかもしれないけれど、使おうと思えばいつでも使える、ということに、心をくすぐられる向きは多い。
「10mの高さから落としても壊れず、10気圧の防水性を持ち、10年寿命がある」。1981年に開発が始まったGショックの売り言葉だ。
たとえそんなことをせずとも、いざとなれば…。必要のないものにこそ、どうにも心を動かされ、自分を表現するツールになるのではあるまいか。
ジープは当初、必要に迫られてタフな軍用車を造り、曲げずに続けてきた。この「ジープらしさ」を一般道でも存分に味わえるのが良い。
エバーグリーン(Evergreen)=不朽。時代を超えたジープの信条を味わう。もしあなたに車好きの自覚があるならば一度は経験してもいいだろう。冒頭に述べたラングラー人気の裏で、ロマンと呼べる魅力が下支えしている。