あらゆる機構をサーキット出自の技術で固めながら、「上屋が開く」というサーキット出自でないボディで包む。結局「人を魅了する」とは、そういうギャップではないのか。
M社が開発する2つのカテゴリー
BMW M社が開発する高性能モデルには2つのカテゴリーがある。
1つはサーキットでの走行を可能とした「Mハイパフォーマンス・モデル」、もう1つ下にはサーキットで培われた技術を取り入れて走行性能を高めた「Mパフォーマンス・モデル」だ。
今回テストするM4カブリオレ・コンペティションM xドライブは前者に位置づけられる。
その下のモデルとしてM440i xドライブ・カブリオレが存在し、新車価格が1089万円に対して、テスト車は1433万円。右ハンドルかつATのみの設定となる。
心臓部は3リッター直列6気筒ガソリンツインターボ。最高出力510ps/6250rpm、最大トルク650Nm/2750〜5500rpmを湧出する。
ヨーロッパ仕様値では0-100km/h加速3.7秒を記録。
圧力損失を最小限にし、流体抵抗も極めて低く抑えることでレスポンスを最適化し高効率を実現する吸気ダクト、重量を最適化し高回転まで最大限かつ安定したパワー供給を実現する鍛造ピストン、最適化されたブースト圧で迅速かつダイナミックなレスポンスを発揮し低回転時でも高いトルクを実現するツインターボ・チャージャーなどはサーキット出自の技術だという。
駆動方式はM専用システム4WD
駆動方式はM専用システムを組み込んだ4WD。
基本設定は「DSCオン・4WDモード」。Mダイナミック・モード(MDM・4WDスポーツ)では、リア・アクスルへの駆動トルク配分が増加し、リアホイールのスリップ許容量が大きくなる。
DSCオフ時には「4WDモード」/「4WDスポーツモード」/「2WDモード」があり、「4WDモード」では最もバランスが良いコントロールとトラクションの組み合わせ、「4WDスポーツ・モード」ではより高い精度のステアリング特性と力強いトラクションが組み合わされる。
確かな腕が必要だが、全制御を断ち、かつ2WDで走ることも可能だ。
すでに我々RESENSE(レセンス)は、同グレードのクーペモデルに試乗している。その際は、ずいぶんと骨太なキャラクターに驚いた。
硬派なモデルに屋根あきタイプ
感覚的には、4シリーズを基本に手直ししたスポーツグレードというよりも、基礎からまるっきり新しくつくったスポーツカーのよう。ステアリングの反応はあくまで機敏で、足回りはゴツゴツ硬かった。
一方のM4カブリオレは、ある種「抜け感」のようなものがある。上屋が開くことで、明確にこわばりがほぐれ、車自体がしなやかに動く。「これなら…」とM4カブリオレの柔軟性に安堵する声が編集部内でも多く上がった。
とはいえ剛性が低く緩いというわけではない。横並びで現行モデルのカブリオレを見ると圧倒的なしっかり感。ひと昔前のクーペよりも高い剛性感ではないかと思うほどだ。
また屋根が開くことによって、3リッター直列6気筒ガソリンツインターボが生み出すサウンドを直接聴くことができるのもいい。
また屋根を開いた様がキマっている。4座特有の持て余している感がなく(そっちはそっちでいいのだけれど)、2座のスパイダーのような緊張感がある。
硬派なモデルに屋根あきタイプがいる?という思いもあったが、甘いとしょっぱいを同時に食す感じだろうか。M4カブにしかない魅力をたっぷり感じられた。わたしならクーペ<カブである。ぜったいに。
文:上野太朗(Taro Ueno)
SPEC
BMW M4カブリオレ・コンペティションM xドライブ
- 年式
- 2022年式
- 全長
- 4805mm
- 全幅
- 1885mm
- 全高
- 1395mm
- ホイールベース
- 2855mm
- 車重
- 1930kg
- パワートレイン
- 3リッター直列6気筒ツインターボ
- トランスミッション
- 8速AT
- エンジン最高出力
- 510ps/6250rpm
- エンジン最大トルク
- 650Nm/2750~5500rpm
- タイヤ(前)
- 275/35ZR19
- タイヤ(後)
- 285/30ZR20


















