- フェラーリ / カリフォルニア 30(2014)
何でも叶えてくれる
フェラーリ・カリフォルニア30は、フェラーリの色気やエンジニアリングを感じさせる一方で、快適性も両立している。自然吸気エンジンも、今だと余計に惹かれるのである。

「初」が多いカリフォルニア
フェラーリ・カリフォルニアは2008年、フランス・パリで初披露された。2014年まで販売されカリフォルニアTにバトンを引き継いだ。
V8あるいはV12のミッドシップスポーツカーと、V12のフロントエンジンGTしかなったフェラーリのラインナップを広げた。V8のフロントエンジン車としてはフェラーリ初だった。
V8エンジンをフロントに搭載し、リアで駆動する2+2シーターのオープンモデル(メタルトップ)のパッケージングをとったのだった。
フェラーリにとって重要なパワートレインは、「F136IB」型と呼ばれるフェラーリとマセラティによる共同開発のV8自然吸気。初の直噴エンジン搭載車でもある。シャシーはフェラーリ率いるカロッツェリア・スカリエッティが開発。7速デュアルクラッチAT/マルチリンクのリアサスを採用した初のフェラーリでもある。
デザインはピニンファリーナがケン・オクヤマの目の届く範囲で進めたと言われている。
発表から4年後の2012年に、カリフォルニア30がデビュー。今回試乗するモデルである。
カリフォルニア30とは何か?
2012年にデビューしたフェラーリ・カリフォルニア30。見た目はあまり変わらないけれど、より軽量に(-30kg)より強力に(+30ps/15Nm)なった。実質マイナーチェンジ車だ。
また0-100km/h加速は4.0秒から3.8秒に短縮。最高速度は310km/hから312km/hになった。
オプションのハイライトとしては「ハンドリング・スペチアーレ」が加わっている。電子制御式磁性流体ダンパーにはより硬いスプリングが組み合わされ、ステアリングが9%クイックになる(標準のロックトゥロックが2.5回転であるのに対し、2.3回転になった)というパッケージであった。(フロントグリル、エアインテーク、サイドエアベントをつや消しのシルバーにすることもできた)
またテスト車のようにハンドリング・スペチアーレを選択しないモデルでも、シャシーセッティングが改められている。素材と構造が見直されていると、当時、発表されている。
その後、後継車のカリフォルニアTのデビューまで計17300台が生産され、その中には計3台のマニュアルモデルが含まれていたという。
腰高な印象があったけれど
写真でみるフェラーリ・カリフォルニア・シリーズはいつも腰高に見えていた。
ボディ脇腹が上下に厚く、前後のオーバーハングが先端に向かってキュッと持ち上げられているからそう感じたのかもしれない。
他のぺったんこなフェラーリたちに比べていたから、というのもあるだろう。
実際に改めて目にするカリフォルニア30は、全長×全幅が4562×1910mmと伸びやかであるのに対し、全高がたったの1325mmしかない。だから写真でみる印象とは異なる。
インテリアはモダン・フェラーリと比較すると構成もデザインもシンプルで好感が持てる。ふんだんなレザー使いなどはフェラーリの定石通りで優雅。カーボンやアルカンターラを多用する好戦的な雰囲気とは大きく異なる。
2+2のシート構成の恩恵もある。後部座席がトランクスルーであることも実用面で有り難いし、視界の良さも隠れた魅力といえそうだ。
まごうことなきフェラーリ
まず初めにことわっておくと、テスト車は社外マフラーを組み合わせていた為、本来のエキゾーストノートは記憶を辿るほかない。
カリフォルニアのサウンドは乾いており、マフラーから出る音と共にエンジンが鳴く音が程よいバランスであったと記憶している。
テスト車の場合は完全に排気音優勢で、甲高く、むせび泣くようなサウンドが印象的だった。市街地で撮影した際、エンジンが掛かる度に道行く何人かが振り返る音量である。
「何もここまでの音量でなくとも…」
ひとりごちるのは理性で語る(ふりをする)カッコつけの自分で、アクセルを思い切り踏み込んでビルに反響するサウンドを耳にすると、嫌でも心は昂ぶる。アフターファイヤーの炸裂する音を聴きたいがために意図的にアクセルを抜くことがあったことも白状する。
乗り心地も望外に良い。ステアリング操作に対する反応もグランドツアラーというよりスーパーカー的で鋭いと言ってもいいレベルにある。そこにはあくまでフェラーリの考えるグランドツアラーといえる個性が明確にあった。
カリフォルニアは不思議な車
フェラーリ・カリフォルニアは不思議な車である。物凄く鋭利なキャラクターをそこかしこに「チラ見せ」しつつも、全体としては快適なグランドツアラーとしてのまとまりもある。
カリフォルニアがデビューした時の資料を辿ると全オーナーの7割以上が、「初めて購入するフェラーリ」として選んだのだという。
さもありなん。筆者は思った。初めてのフェラーリとして、ぺったんこな2シーターは勇気がいることだろう。結果として走行距離が、ぺったんこなフェラーリの3割り増しだというデータにも心から納得した。
そこにちょっとマニアックな視点を差し込むと、先述の通り工業製品としての初の試みが多く盛り込まれているし、しかも自然吸気エンジンの高らかで澄み渡ったエグゾーストノートも、もれなくついてくるのである。
いまだに人気である理由が私にはよくわかる。