- BMW / 318Ci Mスポーツ(2001)
100馬力によるエクスタシー
BMW 318Ci Mスポーツ(E46)に乗って、コンパクトな車体を振り回す愉しさを忘れかけてしまった情けなさに気付く。堪えきれない笑顔。楽しくてたまらない。

BMW 3シリーズ この世代
BMW 3シリーズE46型。3シリーズの歴史の中では4代目にあたる。(2023年時点で現行3シリーズは7代目。)
1998年に4ドアセダンがデビュー、2005年まで販売された。2ドアクーペ/コンバーチブルは翌年1999年にデビュー、2006年まで販売。この他5ドアツーリング(=ワゴン)や3ドアのコンパクト(=ハッチバック)もラインナップされた。今、考えると、贅沢なモデル構成といえるだろう。
2002年にはマイナーチェンジが実施された。外観でわかりやすいのはフロントマスクだろうか。前期が「タレ目」であったのに対し、後期は「ツリ目」に近い意匠となった。
今回試乗する個体は318ciの前期/Mスポーツとなる。Ciは、「クーペ」ならびに「インジェクション」の頭文字からなる。
搭載するエンジンは1895cc直列4気筒自然吸気。118ps/5500rpmと180Nm/3900rpmを発揮する。Mスポーツは内外装ならびにサスペンションが変更されている。
BMW 318Ci 惚れ直す外観
ずいぶんと久しぶりに目の前に現れた318Ciは、あまりにも小さい。驚いた。
調べてみると全幅は1760mm、全高は1370mm、全長4490mm。現行4シリーズ(G22)は全幅1850mm、全高1395mm、全長4775mm。いつの間にか現代のサイズ感に慣れていることに気がつく。
視覚的な効果も大きいだろう。フロントのホイールアートからボンネットまでの距離が極端に短い。車体を低く見せる効果だ。フェンダーも張り出して見える。スポーティな仕立てだ。
室内もキュッと引き締まっている。柔らかいシートを最下部まで下げればスポーツカーの姿勢。センターコンソールには「///M」と書かれたマニュアルのシフトノブ。世代的にスポーツクーペの原風景がこれだという向きがレセンス読者にもおおくいらっしゃるだろう。
当時、電子装備がふんだんに盛り込まれたことをアピールされていたけれど、現代に比べると何もかもがアナログに見える。とはいえ操作系の配置は直感的で、デザイン視点でも整理されている。Mスポーツならではのカーボン調パーツも心をくすぐられる。
小さな車とダンスする歓び
エンジンが目覚めると生々しいガスの香りがかすかにした。壊れているわけではない(念の為)。現代の車はずいぶんと無味無臭になったことに改めて気がつく。
コクっとシフトノブを1速に入れる。この感触ひとつとっても心地がいい。クラッチは一発で上手く繋がった。アクセルペダルを蹴り込むと乾いた音とともに318Ciは前に進む。
最初の曲がり角で笑顔を堪えきれなかった。ハンドルを切ると、車の方から先回りするかのようにノーズが入り込んでいく。前後の荷重も手に取るようにわかる。
「自分の手足のように」とよく言われるけれど、この車に関しては「自分の手足以上に」コントローラブルである。
アクセルペダルを床まで踏み込んだとて、たったの100馬力ちょっとである。小さな4気筒を目一杯回しながら車とダンスする感覚。
気付くパワーの海に飲み込まれ、それらを全て使い切ることの出来ない現代に少しばかりストレスを感じていることにはっとした。
無駄にシフトダウンし、無駄にヒール&トウを繰り返し、場所が許せば夢中になってお尻を滑らせて遊んでいる。
駐車場の枠が許せば1台、買っておこうかな…。という考えが許される相場でもある。たった100馬力がもたらすエクスタシー。パワー競争よさようなら。