アウディA5スポーツバックを運転すると、精緻な見た目にすっきりとした、しかし確かな手応えある走りだと感じる。新世代の、そしてアウディ流の表現なのだ。
もう1つはサスペンションだ。モデルチェンジ前のリアサスペンションはトラペゾイダル(アッパーリンク1本/ロワーリンクは台形)という、いわばダブルウィッシュボーンであったが、これが5リンク式に置き換わった。ここでもやはり5kgの軽量化がなされ、バネ下の重量にこれほどのダイエット。走りに影響しているであろうことは言うまでもない。
テスト車のようにマイナーチェンジが施されたモデルはさらにどう違うのだろうか。
加えて、VWグループのディーゼルゲート以降、ひっそりと息を潜めていた2リッター直列4気筒ディーゼルターボが新規設定された。「35 TDI」(=FF)は163ps/380Nmを、「40 TDI」(=4WD)は190ps/400Nmを生み出す。
モデルラインナップとしては、35 TDIに2トリム、40 TDIに2トリム、45 TFSI(2リッター・ガソリン・ターボ)、そしてS5(3リッターV型6気筒ターボ)が4ドアクーペのスポーツバックには用意された。
2ドアクーペは、40 TDIが2トリム、45 TFSIが1トリム(Sライン)、S5の構成である。
肝心な走りはとにかくすっきりしている。雑味というか灰汁のようなものが一切ない、透き通った味わいだと感じる。その理由に先述の各所の軽量化が効いていると感じる。手元に伝わる情報は適切に取捨選択されていながらも、あくまで軽やかなのである。
乗り心地にも同じことがいえる。先代のA5の記憶と照らし合わせると、当時は「ドイツ車然」と思っていた厚みのある走りも少し色褪せて感じるほどフットワークが軽い。先述の5リンクサスペンションについて補足すると、マウントが液体封入式だ。横方向の力には硬く対処し、前後は柔らかくなる。もう1つ。アッパーリンクがボディに直接繋がっている。
これが軽やかだけれど、確かな手応えは残っている理由なのだと感じる。
クルマに限らず、動作による手応えが軽くなると安っぽくなることが多いけれど、確かな精度と豊富な情報量のお陰で、上質さはそのままに軽やかな仕立てになっているのだ。
試乗時、4枚ドアのありがたさも感じることが多かった。高レベルにまとめあげられた実用車の筆頭である。
SPEC
アウディA5スポーツバック35 TDI
- 年式
- 2021年
- 全長
- 4765mm
- 全幅
- 1845mm
- 全高
- 1390mm
- ホイールベース
- 2825mm
- トレッド(前)
- 1585mm
- トレッド(後)
- 1570mm
- 車重
- 1600kg
- パワートレイン
- 2リッター直列4気筒ディーゼルターボ
- トランスミッション
- 7速AT
- エンジン最高出力
- 163ps/3250-4200rpm
- エンジン最大トルク
- 380Nm/1500-2750rpm
- サスペンション(前)
- 5リンク
- サスペンション(後)
- 5リンク
- タイヤ(前)
- 245/40 R18
- タイヤ(後)
- 245/40 R18