アウディA5スポーツバック35 TDI(FF/7AT)今のドイツ車 今のアウディ

アウディA5スポーツバック35 TDI(FF/7AT)今のドイツ車 今のアウディ

アウディA5スポーツバックを運転すると、精緻な見た目にすっきりとした、しかし確かな手応えある走りだと感じる。新世代の、そしてアウディ流の表現なのだ。

アウディA5の歩み

アウディA5は、アウディA4の派生モデルである。2008年、ここ日本では2ドア4シーターのクーペとしてデビューした。

のちにオープンカー、A5カブリオレが加わった。その後、A5スポーツバックも追加された。A5スポーツバックとは、クーペボディでありながら4枚のドアをもつもの(5ドア・ファストバックともいえる)である。

スポーツモデルのS5が追加されたりしつつ、日本では2017年にフルモデルチェンジ。本記事の主役は、さらにそのマイチェン版だ。

2代目A5は、細かなモデル間の差別化が施されているアウディだけにコンセプトは厳密に守られているけれど、走りにまつわる2つの大きな要素がなかでも大きく変わっている。

1つは車両重量だ。A5比で最大70kgの軽量化を実現。中でもボディ単体で15kg。インストルメントパネルの下にあるクロスメンバー(モジュール)は、アルミの押出材とアルミシートを組み合わせることで15kg減った。

もう1つはサスペンションだ。モデルチェンジ前のリアサスペンションはトラペゾイダル(アッパーリンク1本/ロワーリンクは台形)という、いわばダブルウィッシュボーンであったが、これが5リンク式に置き換わった。ここでもやはり5kgの軽量化がなされ、バネ下の重量にこれほどのダイエット。走りに影響しているであろうことは言うまでもない。

テスト車のようにマイナーチェンジが施されたモデルはさらにどう違うのだろうか。

アウディA5の刷新

2代目のマイナーチェンジ版アウディA5は、2021年に国内デビューした。この際、内外装とデジタル装備、エンジンのラインナップがアップデートされている。

分かりやすいのは外装で、全グレードにハニカムメッシュグリルが装備された。また伝説的なモデル「アウディ・スポーツ・クワトロ」をオマージュしたボンネット先端のスリットなどが特徴になる。マトリクスLEDヘッドライトも全車標準となった。

デジタル装備で分かりやすいのは、インフォテインメントシステムが「MIB3」となった点。画面は10.1インチに大きくなり、しかもタッチ操作出来るようになった。歩行者検知機能付き「アウディ・プレセンス・シティ」や、渋滞追従支援機能付きアダプティブ・クルーズ・コントロールを標準装備する。

加えて、VWグループのディーゼルゲート以降、ひっそりと息を潜めていた2リッター直列4気筒ディーゼルターボが新規設定された。「35 TDI」(=FF)は163ps/380Nmを、「40 TDI」(=4WD)は190ps/400Nmを生み出す。

モデルラインナップとしては、35 TDIに2トリム、40 TDIに2トリム、45 TFSI(2リッター・ガソリン・ターボ)、そしてS5(3リッターV型6気筒ターボ)が4ドアクーペのスポーツバックには用意された。

2ドアクーペは、40 TDIが2トリム、45 TFSIが1トリム(Sライン)、S5の構成である。

軽やかでも手応え

まずはじめに今回のテスト車。なんとお奥ゆかしい色だろう。調べてみるとディストリクト・グリーン・メタリックというオプションカラーらしい。カタログには「印刷インクの性質上、実際の色とは異なって見える場合があります。」と但書。果たせるかな実物も光の当たり具合によってニュアンスが変わる。

一見ソリッドの「お抹茶色」に見える事があれば、物陰ではブルーが混ざる深み。こんな色を選べば日常の景色も変わることだろう。

シートの座り心地もよい。湿り気のある手触りの布張りシートは、体との接点を優しく増やす。外装色とグレーの掛け合わせも素敵だ。

肝心な走りはとにかくすっきりしている。雑味というか灰汁のようなものが一切ない、透き通った味わいだと感じる。その理由に先述の各所の軽量化が効いていると感じる。手元に伝わる情報は適切に取捨選択されていながらも、あくまで軽やかなのである。

乗り心地にも同じことがいえる。先代のA5の記憶と照らし合わせると、当時は「ドイツ車然」と思っていた厚みのある走りも少し色褪せて感じるほどフットワークが軽い。先述の5リンクサスペンションについて補足すると、マウントが液体封入式だ。横方向の力には硬く対処し、前後は柔らかくなる。もう1つ。アッパーリンクがボディに直接繋がっている。

これが軽やかだけれど、確かな手応えは残っている理由なのだと感じる。

クルマに限らず、動作による手応えが軽くなると安っぽくなることが多いけれど、確かな精度と豊富な情報量のお陰で、上質さはそのままに軽やかな仕立てになっているのだ。

新世代のアウディ

精緻な見た目にすっきりとした、しかし確かな手応えある走り。これが新世代の、そしてアウディ流の表現なのだと感じた。

また、あまり感度を高くして乗らずとも「あ、リラックスして運転できるな」「長く乗っても疲れづらいな」と感じられるレベルであることが、アウディの、またA5の魅力である。

試乗時、4枚ドアのありがたさも感じることが多かった。高レベルにまとめあげられた実用車の筆頭である。

SPEC

アウディA5スポーツバック35 TDI

年式
2021年
全長
4765mm
全幅
1845mm
全高
1390mm
ホイールベース
2825mm
トレッド(前)
1585mm
トレッド(後)
1570mm
車重
1600kg
パワートレイン
2リッター直列4気筒ディーゼルターボ
トランスミッション
7速AT
エンジン最高出力
163ps/3250-4200rpm
エンジン最大トルク
380Nm/1500-2750rpm
サスペンション(前)
5リンク
サスペンション(後)
5リンク
タイヤ(前)
245/40 R18
タイヤ(後)
245/40 R18
メーカー
価格
店舗
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