テスラ・モデル3(RWD)ギャップが生み出す魅力

これまで電気自動車にほとんど触れてこなかった筆者が、テスラ・モデル3を長距離試乗してみた。結果から言うと、想像以上に面白いクルマだった。

これまで電気自動車にほとんど触れてこなかった筆者が、テスラ・モデル3を長距離試乗してみた。結果から言うと、想像以上に面白いクルマだった。

新しい乗り物

車酔いは、視覚と三半規管の感覚がズレることで起こるという。その感覚の不一致に似たものが、このテスラでもふと顔を出した。

まずは回生ブレーキ。

エンジン車の“エンブレ”の感覚でアクセルペダルから足を離すと、想像以上に強く減速が入る。頭では理解しているはずなのに、身体の感覚が追いつかない。

テスラ・モデル3(RWD)ギャップが生み出す魅力

もうひとつは加速だ。

エンジン音が伴わないまま、いきなり背中を押し込んでくる加速。鋭さそのものよりも、耳から得る情報と身体感覚のギャップが大きい。

ただの加減速のはずなのに、普段の習慣が邪魔をして、まったく別の乗り物に乗っているような錯覚に陥る。

果たして、この“新しいルール”で動く乗り物についていけるのか。そんな戸惑いと興味が入り混じったまま、最初の10kmが過ぎていった。

テスラ・モデル3(RWD)ギャップが生み出す魅力

操る楽しさ

その10kmを過ぎた頃、ようやく気づく。

回生ブレーキはアクセルペダルで“調整できる”ということに。

アクセルを一気に離すから強く減速する。効かせたいぶんだけペダルを緩めればいい。

ラジコンのスティックと同じで、倒せば加速し、戻した量だけ減速する。

テスラ・モデル3(RWD)ギャップが生み出す魅力

この感覚を掴むと、一気に楽しくなる。

いかに滑らかに車体を動かすか──微妙な“戻し量”を探る作業に没頭してしまう。気づけば「どこまでワンペダルで完結できるか」なんて遊びも始めていた。

日本では制限は多いものの、この個体にはオートパイロット、そしてフルセルフドライビング(FSD)も備わる。そんな未来的な補助機能に囲まれながらも、最後は自分の指先の加減で動きを操る──そのギャップが、想像以上に楽しかった。

テスラ・モデル3(RWD)ギャップが生み出す魅力

一瞬で法定速度に

電気自動車にとっては当たり前の領域かもしれないが、どの速度からでもためらいなく加速していく。

アクセルを踏んだ瞬間に扉が開くような、クセになる加速だ。

ガソリン車のマニュアルでキックダウンを決めたときの快感が、ほぼ常時手に入る。ただし回転数の高まりによる“音のドラマ”はない。その代わり、エンジンでは味わえない一枚上の加速がある。

テスラ・モデル3(RWD)ギャップが生み出す魅力

信号待ちからの発進、前走車がいなくなった瞬間──どれも気持ちよく、気づけば何度も繰り返してしまう。

法定速度に達するのは一瞬。それ以上踏む勇気はないが、それでも十分。

この加速を知ってしまうと、もう普通のクルマには戻れないのではないかと思えてくる。

テスラ・モデル3(RWD)ギャップが生み出す魅力

最新だからこそ

内装のシンプルさは情報として知っていたので驚きこそなかったが、実際に触れるとその質感のバランスが心地いい。

ウッドトリムの柔らかな手触りと、パノラマルーフがもたらす明るさ。未来的なインターフェースの中に自然素材の気配が混ざる。このミックスが想像以上に良い。

操作系は自動車というよりパソコンやスマホに近いが、そうしたリテラシーがある身にはむしろ馴染みやすい。

テスラ・モデル3(RWD)ギャップが生み出す魅力

そして今回の個体はワンオーナーで走行15000km。使用感がほとんどなく、最新のRyzen搭載MCUは応答性も申し分ない。もし旧世代のMCUだったら、こうしたスムーズさを感じる前に、細かなストレスの方が先に立っていたかもしれない。

黒のレザーシートに身を沈め、外に出れば19インチホイールの精悍さ。FSDは日本ではまだ限定的だが、アップデートで進化していく余地が残されているのがテスラらしい魅力だ。

気がつけば、自宅に充電ポートを設置する妄想まで始めていた。このクルマには、暮らしに新しい習慣を生み出す力がある。

テスラ・モデル3(RWD)ギャップが生み出す魅力

SPEC

テスラ・モデル3 RWD

年式
2022年式
全長
4,694mm
全幅
1,849mm
全高
1,443mm
ホイールベース
2,875mm
車重
約1,730kg
モーター
リアモーター
モーター最高出力(後)
325ps
モーター最大トルク(後)
420Nm
  • 中園昌志 Masashi Nakazono

    スペックや値段で優劣を決めるのではなく、ただ自分が面白いと思える車が好きで、日産エスカルゴから始まり、自分なりの愛車遍歴を重ねてきた。振り返ると、それぞれの車が、そのときの出来事や気持ちと結びついて記憶に残っている。新聞記者として文章と格闘し、ウェブ制作の現場でブランディングやマーケティングに向き合ってきた日々。そうした視点を活かしながら、ステータスや肩書きにとらわれず車を楽しむ仲間が増えていくきっかけを作りたい。そして、個性的な車たちとの出会いを、自分自身も楽しんでいきたい。

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