テスラ・モデル3の中でも「パフォーマンス」グレードに試乗。パワーに目が行きがちだが、モデル3の素性の良さも光った。セカンドハンドゆえの価格も好感が持てる。
最速のモデル3
テスラ・モデル3パフォーマンス。アフォーダブル・テスラの中で最速だ。
レセンス編集部はこれまで、大容量バッテリー搭載の中級グレード「ロングレンジ」をテスト済み。
ロングレンジとパフォーマンスは、電動AWDや大容量バッテリーなどのパッケージはロングレンジと同じだが、リアのアクスルのモーターの出力/トルクが異なる。
パフォーマンスは車重そのまま0-100km/h加速タイム=3.3秒を標榜。この数字、現行911カレラ4 GTS(スポーツクロノ装着車)と同値である。といえば速さが伝わるだろうか。
かといって、内外装に羽がついていたり、それを誇示するような主張はゼロ。テスラはあくまでクールな姿勢を貫く。
タイヤサイズは前後ともに20インチ(!)。ミシュラン・パイロットスポーツ4は235幅の35扁平だ。このあたりの乗り心地も気になるところである。早速乗ってみよう。
ユーザビリティ
先述の通り、内外装はミニマリズムを徹底している。ボディのシルエットはテスラの全モデルに共通する言語ではあるけれど、一度見たら忘れられない個性があるかといえば、首を縦に振るのは難しい。
いつも驚くのは内装で「なにもない」。たとえばメーターパネルなど、あるべきところに何も無いのは、最初は落ち着かない。しかし、ユーザビリティ(使い勝手)の配慮はそこかしこから感じ取られる。
エアコンの温度調整など頻繁に操作する部分は物理ボタンを残すべき、という声もあるが、つい先日こんなことがあった。私がホンダ・アコードの新型車に乗った際、エアコンは温度設定で調整する一方で「あたたかめ、つめため」などの表現で室温を保ってくれたのだ。たしかに、23.5℃と24.5℃の境目は「概念」でしかなく、実温度とはちと違う。
であれば、指で操作する必要もなくなり、「ヘイ、シリ。」「ハイ、メルセデス。」の世界観が今後の最適解。アナログ起点でインターフェイスを批判することはナンセンスかもしれないなあと思った。
とにかくスッキリした室内空間に、わたしは禅寺の石庭を想像しさえしたのだった。
走らせて楽しい
走りに関しても、何一つとして不満がない。
オーソドックスなスプリングとダンパーをかけ合わせ、20インチのスポーツタイヤを履く車から想像する硬さは不思議なほどない。
床下に敷き詰めるバッテリーによる重心の低さと、骨格の揺るぎなさの恩恵だろうか。驚くほど快適だ。またペダルフィールやステアフィールに驚くほど一貫性がある。
性格は「ややせっかち」といったところで、急ごうと思えば、すべてのコンポーネントが力を合わせて一斉にアシストしてくれる感覚。
即座に強大なパワーが立ち上がるおかげで、目的地まで最大効率で辿り着ける痛快さがある。自由自在なのだ。
アグレッシブな運転では優れた重量配分が明確に感じ取れる。四輪がきちんと路面を掴み、車体が一体感をもってくるくると回る。
どこか冷たいイメージを持ってしまうテスラだが、実は車好きを楽しませる実力もある。
いい車であるのは確か。新車価格はぎょっとする700万円超えだけれど、セカンドハンドになれば一気に現実的になる。
廉価モデルでも十分に速いけれど、果たして「パフォーマンス」が必要か?という理性だって、価格が解決してくれるのだ。
普段乗りに欲しいなあ…。わりと本気でそう思っている。環境が許すなら。
SPEC
テスラ・モデル3パフォーマンス
- 年式
- 2021年
- 全長
- 4694mm
- 全幅
- 1849mm
- 全高
- 1443mm
- ホイールベース
- 2875mm
- 車重
- 1847kg
- タイヤ(前)
- 235/35 ZR20
- タイヤ(後)
- 235/35 ZR20