- ポルシェ / マカン4 エレクトリック(2025)
偶然という名の色に導かれて
強く主張してくるわけではない。けれど、なぜか心を引き寄せられる──そんな出会いがある。アベンチュリングリーンと呼ばれるその深緑のポルシェは、偶然という言葉の奥に、確かな必然を秘めていた。選んだというより、出会ってしまったと思える一台。

語らずとも伝わるもの
アベンチュリン。鉱石の名前であり、その語源はイタリア語の「a ventura」──偶然に、という意味を持つ。18世紀のヴェネチアンガラス工房で偶然生まれた装飾ガラスにちなみ、似た光沢を持つ鉱石にその名がつけられた。
このマカンに施されたアベンチュリングリーンメタリックのボディカラーを前にしたとき、思わずその語源のストーリーが頭に浮かんだ。深く、静かで、しかしときに光を含んで冴え渡る。この色は、スペックシートの上では語りきれない、まさしく偶然の出会いのような魅力を秘めている。
RSスパイダーデザイン22インチホイールの張りつめた空気と、内装にまで施された深緑のレザー。それらが織りなすこの個体は、いかにも“最新モデルです”と語ることなく、静かに、しかし明らかに、他と異なる存在感があった。
それは奇をてらった特別仕様でも、流行の組み合わせでもない。ごく自然なバランスの中に偶然性が潜んでいる──このクルマが放つ魅力は、そんな気配に満ちていた。
自然の中でこそ
電気自動車の特長のひとつが、走行中の静けさだ。マカン4エレクトリックもその例に漏れず、パワートレインが発するノイズはほとんどない。だがその静けさがもたらす感覚は、単に音がしないことにとどまらない。
窓を少し開けて、森の中を走る。タイヤが落ち葉を踏みしめる音、遠くの鳥のさえずり。エンジン音や排気音に包まれていたこれまでのクルマでは意識しづらかった自然の音が、電動ならではの静けさのなかで、風景とともに車内に染み込んでくる。それは、EVだからこそ味わえる、静けさのなかに広がる、新しいかたちのドライビングプレジャーだ。
マカン4エレクトリックの場合、それがポルシェらしい締まりのある走りと両立している点が印象的だった。しなやかな加速と正確な操舵、そして滑らかに効く回生ブレーキ。機械的な違和感が少なく、身体の感覚とクルマの動きが自然に重なる。
その一体感こそが、マカン4エレクトリックをただのEVとは違う、乗り物としての完成度に引き上げているのかもしれない。
尖ってるのに、頼もしい
このマカンには、約250万円分の純正オプションが組み込まれている。スポーツクロノパッケージにエアサス、RSスパイダーデザインホイール、そしてレザーインテリア。カタログ上の仕様を並べるだけでも十分な内容だが、やはりこの個体の最大の魅力は、色とその組み合わせだろう。
ボディカラーのアベンチュリングリーンに合わせて選ばれたであろう、ナイトグリーンのレザーインテリア。シートをはじめ、ドアトリムやダッシュボード下部まで同色で統一されており、内外装ともにグリーンでまとめられている。一般的な価値観ではなかなか選ばれにくい組み合わせだが、だからこそ他にはない強い個性がある。
こうしたエッジの効いた仕様は、たとえ新車でオーダーできたとしても、納期やタイミングの制約がつきものだ。定番ではないがゆえに、出会える機会も限られている。「マカンなら何でもいい」ではなく、「このマカンがいい」と思える個体。そう思わせるだけの完成度が、この車には確かにあった。
タイカンと迷う声もあるが、実用性や視認性、サイズ感を踏まえれば、初めての電気自動車としても安心できる。そして、すでにEVに乗っている人にとっても、買い替える意味を感じさせてくれるクルマだ。カタログ上のWLTP航続距離は最大613km。数年前のEVでは到達が難しかったこの数値は、いまや感動ではなく、現実として頼もしい。
どんな人にも、どんな道にも
エアサスの恩恵は、乗り心地だけでなく視点の安定感にも効いていた。腰高感がなく、車体の揺れが最小限に抑えられている。そのせいか、「女性でも運転しやすそう」という声が自然に出てくる。車両感覚がつかみやすいボディサイズで、視界も広く、見切りも良い。
マカンはデビューから10年以上が経つモデルだが、その設計思想には一貫して「無理をさせない」という優しさがあるように感じる。スポーツSUVといえば、どうしても硬派で荒々しいものが多いが、マカンは人を選ばない。それでいて、走ればしっかり楽しい。まさにいいとこ取りだ。
そしてこの個体には、22インチホイールが装着されている。見た目はスポーティで迫力があるが、乗り心地が犠牲になっていないのはエアサスの効果だろう。静けさと快適さ、そしてポルシェの名にふさわしい動的質感──このバランスは、意外にも万人向けだ。
誰かが決めた正しさよりも
2025年式のマカン。ポルシェの最新モデルだけにあえて言うまでもなく、乗れば納得の安心感がある。走りの質、使い勝手、維持のしやすさ。ポルシェの哲学は、EVになっても何一つ失われていない。
そんな堅実さを内に秘めながら、アベンチュリングリーンのボディと深緑のレザーが、どこか偶然の出会いを思わせる佇まいだった。
時として必然は偶然の顔をしてやってくる。
正解を探す買い物ではなく、巡り合わせを信じたくなるような出会い。自然とそう思えた一台だった。

自動車販売の最前線に身を置き続けて約20年。触れてきた車も、向き合ってきたお客様も、数えきれないほど。そうした経験の積み重ねが、自分の中に車を見るま...
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