外観シルバーに黒の樹脂塗装パーツ。一見で国産車なら使い倒される没個性的な「シャヨウシャ」の雰囲気になってしまうのに、206がオシャレに映るのは偏見なのだろうか。
1998年にデビュー
1998年にデビューしたプジョー206。205の後継だ。
ボディサイズは全長×全幅×全高=3835×1670×1440mm。ホイールベース=2440mm。車重は(たったの)1040kg。
3ドアハッチバックのほか、206GT(WRカーのホモロゲ・モデル)、オープンモデル版のCC、ステーションワゴンの206SWがラインナップされていた。
エンジンはすべて直列4気筒だったが、排気量は1.4リッター、1.6リッター、2.0リッターの3本立てだった。
馬力は74〜177ps、トルクは120〜202Nm。トランスミッションは5MT/4AT。とまあ、数字のことを書き連ねても、この車の場合、しかたあるまい。
車を見つめていこう。
冷静に洗練された
ぽてっと丸みを帯びたフォルムに、どこか冷静に洗練された印象が混ざる。けっして威圧的ではないのに、存在感はたしかにある。フランス車らしくもある。
ドアを開け、シートに身を沈めると、思ったよりも広い。
コンパクトな車体ながら、車内には余裕が感じられる。窓も大きく開放感がある。明るい。
運転席に座ると、シートのフィット感は申し分ない。なにより手触り。ベロア生地がほっとさせる。
センターコンソールのデザインは、無駄がなく整然としている。ボタンひとつひとつが主張しすぎることなく、すっと手に馴染むように配置されている。
なにより驚くのが、2005年式、2.4万kmという数字がもたらす時間が止まったかのようなコンディションだ。どんな維持をしたら、これほどの美しさが保てるのだろうとふしぎに思った。
車と対話している
アクセルを踏んでみる。1.6リッターエンジンは、ちょっとざらついた音を発する。力はない。ぶーっと唸りながら、一生懸命に走っている感覚がある。
4速ATは、4速しかないゆえ不器用な変速だ。コツンとショックを発しながら、淡々と変速していく。シフトダウンにも迷いがある。
だから運転しているあいだ、どのギアが適切だろうか。どの回転域を維持しようか。と自然に考えている。
わたしはこれを楽しいと思う。ばかだなあとは思わない。車と対話しているような気持ちになる。
細くて大きなステアリングは軽く、だから街なかでの運転は楽だ。
乗り心地はしっとりとやわらかい。昔「206は硬くなった」と言われたものだけれど、現代視点でみると、十分に優しい。
まるい。シートともにリラックスして、平和に走ることができる。飛ばそうなんて思わない。皆さんどうぞお先に、と思いながら運転している。
人の心に訴えかける
クルマというのは、速さや豪華さ、派手さだけが評価基準ではない。
その車が、どれだけ乗る人に安らぎを与え、無理なく日常に溶け込むか。
その点において、プジョー206は、けっしてソリッドでも、だからといってダルでもない絶妙なバランスを保っている。
無駄なく、シンプルでありながら、どこか人の心に訴えかけるものがある。
おそらくこの車は、平凡な日常をちょっとした贅沢に変えてくれる。特別な日はもちろんだけれど、何気ない日常の中でこそ、静かな美しさを感じることができるのだろう。
SPEC
プジョー206
- 年式
- 2003年式
- 全長
- 3835mm
- 全幅
- 1670mm
- 全高
- 1440mm
- ホイールベース
- 2440mm
- 車重
- 1040kg
- パワートレイン
- 1.4リッター直列4気筒
- トランスミッション
- 4速AT
- エンジン最高出力
- 74ps/5500rpm
- エンジン最大トルク
- 120Nm/2600rpm
- タイヤ(前)
- 175/65R14
- タイヤ(後)
- 175/65R14