ジャガー・Fペイス D200(4WD/8AT)このままどこか遠く

深みのあるポルトフィーノブルーにブラックアウトされた外装が映える、ジャガーFペイス RダイナミックブラックD200。後期型になり磨かれた走りと質感が、日常から遠出まで自然に誘い、付き合うほどに魅力を増していく一台だ。

深みのあるポルトフィーノブルーにブラックアウトされた外装が映える、ジャガーFペイス RダイナミックブラックD200。後期型になり磨かれた走りと質感が、日常から遠出まで自然に誘い、付き合うほどに魅力を増していく一台だ。

「とりまとまった」一体感

Fペイスは、2016年にジャガーが初めて世に送り出したSUVだ。

スポーツカーのデザインと走行性能を、SUVの実用性に落とし込む──そんなコンセプトを掲げ、デビュー当初から高い評価を得てきた。登場からもうすぐ10年。モデルライフの長さは、それだけ素の完成度が高い証とも言える。

ただ、初期型はその勢いのまま作り込まれた印象もあり、個々の要素は魅力的ながら、全体としてはやや荒削りな部分もあった。

ジャガー・Fペイス D200(4WD/8AT)このままどこか遠く

それが2021年、後期型へのマイナーチェンジで大きく変わる。外装はライトユニットやバンパー形状が刷新され、より現代的でシャープな顔つきに。インテリアは大型の曲面ディスプレイを採用した「Pivi Pro」へと進化し、操作性も質感も一段上へ。

そして、走りも変わった。

今回試乗したディーゼルモデルは、新世代エンジンにISGを用いたマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた仕様。発進や加速の初動は滑らかで、低回転からのトルクの立ち上がり方にも余裕がある。

足回りもダンパーやブッシュの設定が見直され、角が取れて柔らかくなった。

その完成度の高さは、「とりまとまった」という言葉がぴったりだ。バラバラだったピースが正しい位置に収まったときのような、一体感がある。

ジャガー・Fペイス D200(4WD/8AT)このままどこか遠く

どこまでも行ける相棒

同じFペイスでも、SVRのようなハイパフォーマンス仕様は強烈な存在感を放つ。5.0L V8スーパーチャージャーの加速、迫力あるサウンド、専用チューニングの足回り──そのすべてが「特別」であり、乗るたびに高揚感を与えてくれる。

だが、このディーゼルモデルに乗ってみて、思いもしなかった方向から心を掴まれることに気づいた。

SVRが“非日常”を提供する存在だとすれば、このクルマは“日常に寄り添う”存在だ。

派手さはない。だが、それがいい。静かで、穏やかで、しかし芯はしっかりしている。豪快な加速や咆哮はないかわりに、どんな場面でも同じ顔をしてそばにいてくれる安心感がある。

ジャガー・Fペイス D200(4WD/8AT)このままどこか遠く

それは、毎日一緒に過ごすうちにじわじわと染み込んでくる“相棒感”だ。

派手な演出がないから、日常にするりと溶け込む。だけど、その中でも確かに心を動かす瞬間がある。

日常の道を、いつものように走っているとき。信号を抜け、エンジンの鼓動とタイヤの転がりが心地よく重なった瞬間。ふと「このままどこか遠くへ行きたい」と思わせる。そんな力が、このクルマにはある。

SVRにある高揚感とは違うが、このモデルが持つ相棒感は、長く付き合うほどに深まっていく。

ジャガー・Fペイス D200(4WD/8AT)このままどこか遠く

時間を忘れて

「このまま、どこまでも走っていきたい」──そう思えるかどうかは、とクルマの良し悪しを分ける大事な基準だ。

もちろん、その感覚は人によって違うし、相性もある。

だが、スペックや装備だけでは決して測れない、グルーヴ感やフィーリングの中に、その答えは隠れている。

このFペイスには、その感覚を呼び起こす力がある。

ジャガー・Fペイス D200(4WD/8AT)このままどこか遠く

角の取れた乗り味は、長距離でも肩の力を抜いていられる安心感をくれるし、頼り甲斐のある相棒感もある。

外に出れば、深みのあるポルトフィーノブルーメタリックが光の角度で表情を変え、Rダイナミックブラックグレードのブラックアウトされたグリルやパーツが全体を引き締める。室内に座れば、パノラマサンルーフから柔らかい陽光が差し込み、穏やかな空気が広がる。

外でも中でも、このクルマは過不足なく整っている。走りは穏やかなだけでなく、その気になればFペイスらしいスポーツカーに通じる一体感を見せ、気づけば時間の感覚すら緩んでいく。

だからこそ、ハンドルを握るたびに思う。このまま、どこまでも走っていきたい──と。

ジャガー・Fペイス D200(4WD/8AT)このままどこか遠く

ふとした時に

このFペイスの魅力は、短時間の試乗やカタログのスペック表だけでは見えてこない。

そして、たとえ所有しても、すぐにすべてがわかるわけではない。

日々の生活の中でハンドルを握り、距離と時間を重ねるうちに、じわじわと真価が見えてくる類の魅力だ。

最初はただの「乗りやすいSUV」だったはずが、気づけば生活のリズムや休日の過ごし方に溶け込み、なくてはならない存在になっている──そんな関係性を、このクルマとは築ける。

ジャガー・Fペイス D200(4WD/8AT)このままどこか遠く

だからこそ長く付き合える。そしてある日ふと、「このままどこまでも走っていきたい」と思える。

その感覚は、その積み重ねの先にあるご褒美のようなものだ。

このクルマを所有し、走り続けることでしか辿り着けない境地。

それを味わいたいなら、ハンドルを握って確かめてほしい。

ジャガー・Fペイス D200(4WD/8AT)このままどこか遠く

SPEC

ジャガー・Fペイス Rダイナミックブラック D200

年式
2023年式
全長
4747mm
全幅
2071mm
全高
1664mm
ホイールベース
2874mm
車重
1890kg
パワートレイン
2.0リッター直列4気筒ディーゼルターボ+マイルドハイブリッド(ISG)
トランスミッション
8速AT
エンジン最高出力
204ps/3750rpm
エンジン最大トルク
430Nm/1750〜2500rpm
  • 河野浩之 Hiroyuki Kono

    18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どんな車にも、それを選んだ理由があり、「この1台のために頑張れる」と思える瞬間が確かにあった。車を心のサプリメントに──そんな思いを掲げ、RESENSEを創業。性能だけでは語り尽くせない、車という文化や歴史を紐解き、物語として未来へつなげていきたい。

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