- フェラーリ / 308GTB クアトロバルボーレ(1985)
歴史に乗る
フェラーリ328GTSに試乗して以降、様々な方面から、フェラーリ308に乗れば、もっとお互いの良さがわかると言われた。試乗を経て、それは本当だとわかった。

フェラーリ308の歴史
今回の主役は、フェラーリ308GTBクアトロバルボーレだ。まずは308そのものの歴史を紐解くことで、クアトロバルボーレとの関係も明らかになってくるであろう。
308GTBは、1975年のパリサロンならびにロンドンショーでデビューした。デザインはピニンファリーナが担当、製作はスカリエッティが請け負った。当初はフェラーリとして初めてグラスファイバーボディをまとっていた(北米は76年後半、欧州は1977年中頃にスチール/アルミに戻る)。
余談だがグラスファイバーボディは、Aピラーとルーフのつなぎ目がある。
横置きのV型8気筒ユニットはアルミ製。バンク角は90°。ボア×ストロークは81×71mmで、排気量は2926ccだった。欧州ではドライサンプだったが、日本やオーストラリア、北米はウェットサンプを維持した。
オールシンクロメッシュの5速MTのみの設定で、エンジンサンプ下、後方に収められた。ウエーバー40 DCNFキャブレターはVバンクの中に組み込まれていた。
では308クアトロバルボーレはどう違うのか?
308クアトロバルボーレ
年々厳しくなる排ガス規制に対応するため、1980年には燃料供給装置がこれまでのキャブレター式からインジェクション式(Kジェトロニック)になり、「308GTBi」を名乗るモデルが登場した。パワーダウンを強いられることになった。
その「救済策」として、1気筒あたり4つのバルブを備えるエンジンが最高の解決策であるとの結論に行き着いたという。
4バルブ=クアトロバルボーレ。ヨーロッパ向けは243ps/7000rpm、アメリカ向けは238ps/6800rpmを発揮。最終減速比/ギア比は4バルブに合わせて変更になった。
Kジェトロニックに組み合わされるのはマレリのMED 803Aデシプレックス電子制御式で、各バンク専用の点火コイル/ディストリビューター/イグニッションモジュールを備えている。
サスペンションは前輪独立懸架のウィッシュボーン/コイルスプリング/油圧ダンパーというレシピで、前後にアンチロールバーが備わっている。
シャシーナンバーはロードカー用の奇数。1982年〜1985年の生産期間に、シャシーナンバー42809〜59071に至る、748台が生産された。まさに308の「最終形態」といわれるモデルである。
らしさを知る手がかり
眼の前にあるシルバーのフェラーリ308GTBは、糊付けされたYシャツのように、隅々までピンと張り詰めた姿勢の良さだ。
以前試乗したフェラーリ328と比べると、デザインそのものもすっきりして見える。
空を向いたステアリング、寝そべるような姿勢のシート。いかにもイタリアンなポジションに身を落ち着け、キーを撚ると長いクランキングの後にV型8気筒がひと吠えした。
背中の真後ろにエンジンの確かな存在があり、それを音や振動でしっかりと伝えてくる。
トルクフルでピーキーなところのないエンジンのおかげで、ゆっくりとクラッチを戻してやれば余裕をもって前に進む。
しばらくは高いギアを積極的に選んで暖機運転だ。シフトフィールやエンジンフィール。寝起きの身体みたいに凝り固まっていた各所は熱が入るにつれて明らかになめらかになる。
意識的に回転を高めていくと、キリキリと硬い金属どうしが精緻に擦れ合うような、甲高い音がかなりのボリュームで聞こえる。
甲高いとはいえ新しい跳ね馬みたいな排気音ではなく、エンジンそのものが絞り出す音である。濃密で生々しい音だ。
ハイトの高いタイヤによるやわらかい乗り心地も相まって、「乗りづらい」と思う人はほとんどいないだろう。
濃密なのに爽快。
よく328の本当の旨味を知りたければ、308まで遡れ、という声を聞く。308に乗って初めて、その真意がわかった。一度ハンドルを握れば、現代まで通じるフェラーリらしさを知る手がかりにもなるはずだ。