ステルヴィオとは何か

アルファ・ロメオ・ステルヴィオ。日本の発売開始は2018年のことであった。

ジョルジオ・プラットフォームを下敷きとし、セダンタイプのジュリアと共有する。ジュリアを基本として背を高くしたのではなく、開発当初から両車の生産が前提とされていたのがポイントだ（セダンベースのプラットフォームを、たんに背を高めた車は今日日、山程ある）。

「類い稀な俊敏性、及び操縦安定性を実現」と走りに関する公式の文言が目立った。

複数回のモデル構成変更を経て、2021年に「ヴェローチェ」（今回のテスト車）が加わった。それまでは「スポーツパッケージ」と呼ばれていた中堅グレードにあたる。

2.2リッター直4ディーゼルターボの「スプリント」と、2.9リッターV6ターボの「クアドリフォリオ」に挟まれ、2.2リッター直4ディーゼルターボ/2リッター直4ガソリンターボの両方から選択可。前者が687万円/後者が720万円（新車発売時点の価格）。

内外装にみる立ち位置

ヴェローチェのテーマは「スポーツ性能と上質感を兼ね備える」
というもので、ホイールアーチ、サイドスカート、リアバンパーがボディ同色となる。また専用のスキッドプレートが備わり、エキゾーストパイプもダークトーンになる。

内装は黒あるいは赤のレザーシートやアルミニウム素材を用いた内装パネルが識別点となる。

ボディサイズは、全長：4690mm×全幅：1905mm×全高：1680mm。ホイールベースは2820mm（ジュリアと同値）。BMW X3とメルセデス・ベンツGLCのサイズ感だ。

ただ、X3やGLCに比べるとボディ造形はスリーク。いわゆる「スポーティな見た目」というに差し支えない。あるいはアルファらしさ。

中央に盾形グリルが鎮座し、ライセンスプレートが横にオフセットした設えは1950年代の例えばジュリエッタのオマージュであることはたやすく想像出来るいっぽうで、私はテールライトを周辺とするリアウインドウ下の抉れに60年代のジュリアTZ1の面影をみた。

「よく曲がるSUV」だ

アルファ・ロメオ・ステルヴィオの走りは生き生きとしていた。ハンドルを切り始めた刹那、鼻先は軽々と動き始める。D.N.Aシステムと呼ばれるドライブモードをDに切り替えるとステアリングの重みもぐっと増すが、基本的に全領域でアグレッシブな仕立てになっている。

ディーゼルユニットを搭載したステルヴィオも経験している筆者としては、この車が搭載するガソリンエンジンゆえの鼻先の軽やかさに感心する。車検証でも前：後＝910：900kgだ。

四輪駆動のSUVのなかではBMWと比肩する「よく曲がるSUV」と断言できる。

もう1つ。2018年のデビュー当初に比べると、何かが公式に発表されているわけではないものの乗り心地の粗が消え去っている。

積極的なドライビングを好む向きにとって、満足できるであろう仕立てである。

この手の車は後部座席の居住性や快適性をないがしろにする傾向があるが、広さ、縦揺れ/振動の観点で嫌な思いをすることもなかった。

アルファは変わったか

稀にアルファ・ロメオのパワートレインを嘆く人がいる。官能的なV型6気筒搭載車は限られたモデルだけになり、直列4気筒を中心に据えたラインナップになったからだと推察する。

私はこう考える。いや断言する。「楽しさ」の構成要素の中でも、何を中心に見るかで、その車の魅力は180°変わってくる、と。

かつての香ばしい自然吸気V型6気筒を懐かしむ気持ちもわかるけれど、現代のソリューション×優れた前後バランスも、車を生き生きと楽しむファクターではあるまいか。それでいて内外装には、イタリアの純血が健在だ。

それともうひとつ、純正でナビゲーションシステムが（やっと）ついた。これまで無かった。純血でありながらも、技術面でも基本的にはプレミアムSUVとして他と肩を並べる。

ステルヴィオの存在価値はそこにある。