- ホンダ / シビック タイプR(2022)
伝家の宝刀
6代目(FL5)ホンダ・シビック・タイプRに試乗。テクノロジーとエモーションの両立に舌を巻いた。「タイプR」の現代解釈がどんなものか、明らかにする。

タイプRの歩んだ道
初代ホンダ・シビック・タイプRが登場したのは1997年。ベースとなった6代目シビック登場から2年を経てのことだった。
もともと高かった最高回転数8200rpmの1.6L直列4気筒VTECを基本に給排気系を改める。減量は30kgに達し、車両重量は1050kgだった。
2代目シビック・タイプRは2001年、イギリスで生産され、日本で販売された。初代が1万5910台売られたのに対し、4722台に留まる。
3代目(2007年)は4ドアセダンになった。エンジンは先代を引き継ぐも内容を改善。出力/トルクを高めた。1万3441台が販売された。
実はもう1モデル「3代目」がある。シビック・タイプRユーロ(2009年)と呼ばれ、エンジンは4ドアセダンと共通するもプラットフォームは異なる。(いわゆるセンター・タンク・レイアウト=フィットと共通)。3516台。
2015年、4代目。3代目「ユーロ」と同じプラットフォームを用いるも、エンジンはK20C型と呼ばれる2リッターVTEC×シングル・スクロール・ターボとなる。310ps/400Nmを叩き出すに至り、ニュルブルクリンク北コース(=ノルドシュライフェ)最速バトルも激化する。新時代タイプRの幕開けだ。765台が嫁いだ。
2017年、プラットフォームが刷新され5代目となる。8096台が販売され、4代目の劇的進化を受け継ぐ。そして今回の主役、6代目である。
6代目タイプRの進化
ホンダの埼玉製作所/完成車工場で生産される6代目(FL5)シビック・タイプRが世界初公開されたのは2022年7月21日のこと。同年9月2日に日本では販売開始された。
開発は「Fastest(≒圧倒的な速さ)」、「Addicted Feel(≒夢中になる)」、「Secure Feel(≒安定/信頼)」の3本柱であった。
先代のエンジン骨格を基本にターボチャージャーの刷新などで最高出力は先代+10psの330ps、最大トルクは+20Nmの420Nmに到達。
興味深いのはタイヤサイズが先代の245/30 ZR20→265/30 ZR19になった点。幅が広くなる一方で径は小さくなった。
ボディサイズは、全長+35mmの4595mm、全幅+15mmの1890mm、全高−30mmの1405mm、トレッド(前)+25mmの1625mm、トレッド(後)+20mmの1615mmとなっている。
サスペンションも細かく見直された。なかでもフロントサスは、左右それぞれを1人ずつ担当し、手作業で組み付けてゆくという。
電子制御とその反応については、ドライブしながら触れていくことにしよう。
磨きあげられた宝刀
6代目(FL5)シビック・タイプRを目の前にして第一印象は、とても上品にまとまっているな、というものであった。
4、5代目の、ガンダムチックで見ているこちらが恥ずかしくなるようなゴテゴテの見た目と比べるとすっきり纏まっている。
乗り込むと真っ赤なシートやカーペットが目に入ってくる。インパネはベース車に沿うシンプルなもので、センターコンソール中部には、やはり伝統のアルミ製シフトノブが鎮座する。ハニカム構造のエアコン吹き出し口や、ツマミの造形は何ともレーシーで、気持ちが高まる。
エンジンをスタートさせると、意外にも静かなアイドリングに驚いた。ひんやりと冷たいシフトノブをコクっと1速に入れ、クラッチペダルをやや戻すだけで、すんなりと前に進んだ。トルクフルで頼もしい走り出しだ。
コンフォートモードでも、サスペンションの上下動は最小限。入力初期の明確な衝撃は丸め込まれているものの、上下に揺さぶられる。これをスポーツ/+Rにすると、荒れた路面では車がポンポンと跳ねる。さながらレーシングカーに乗っているようだ。価格が価格だけに、無駄とは言えども欧州ホットハッチと比べたくなるが、あちらはもっとマナーがいい。でもこれくらいの方がタイプRファンは嬉しいのかな…。
トルクベクタリングAHA(アジャイル・ハンドリング・アシスト)の制御には舌を巻く。直角に近いコーナー。どうしても重い鼻先が外に行きたがる。我慢していると、そこからの回頭性の鋭さに気づく。全体として、車体が前後左右にフラットなままパンと瞬時に向きが変わるイメージだ。
すべての電子制御をオフにしてサーキットで走ったらどんなものだろうか。磨きあげられたシャシーの素性の良さのなせる技だ。
それともうひとつ(もう書き出したらとまらない)。シャープなアクセルレスポンスたるや! どの速度域でも回転域でも、踏力の細かな調整に素早く反応する。これも先代より遥かに飛躍したところ。意のままに操ることができた。
タイプRの現代解釈
見た目とは同様、全体のまとまりが一気に底上げされた6代目(FL5)シビック・タイプR。
初代のように軽く、ギンギンにエンジンを回すタイプから、サイボーグとして着実にタイムを出しにいくキャラクターに変わってきた。
一方でこのチャンピオンシップホワイトに赤いバッジ、赤い内装など、アイコンはしっかり残っており、ファンを掴み続ける。
ホンダのタイプRとは何か?6代目(FL5)シビック・タイプRに乗ることで、その現代的な解釈に触れることができるのである。