工場に並ぶのは、年式も国籍もさまざまな車たち。部品が出ないことも珍しくない。資料さえ十分ではないこともある。そんな一台一台に向き合い、手を動かし、考え、形にしていく。これまで歩んできた遠回りのような時間も、いま振り返れば、すべてこの場所につながっていたのかもしれない。
遠回りに見えた経験
高校卒業後、専門学校で2級整備士資格を取得し、地元ディーラーへ就職。カスタムショップや別のディーラーでも経験を重ねた。
印象に残っているのは、ある工場長の言葉だという。
「失敗してもいい。とにかくチャレンジしろ」
そう背中を押してくれる人だった。慎重さは必要だが、怖がって手を止めていては前に進めない。現場で試し、考え、覚えていく。
「その姿勢を学んだことで、車に対して必要以上に身構えなくなりました」
整備の技術だけではなく、仕事との向き合い方を教わった時間だった。
その後、一度業界を離れ、造船所へ。溶接を中心に、大きなものづくりの現場で働いた。
溶接や加工といった技術はもちろん、「既製品がなければ、つくる」という発想。ないものを理由に止まるのではなく、どうすれば実現できるかを考える習慣が身についた。
遠回りに見えた二年間は、いまの仕事の土台になっている。
効率の先にあった、漠然とした不安
再び自動車業界へ戻り、整備を主軸とするいわゆる町工場で工場長を務める。
多くの依頼を受け、限られた時間のなかで仕事をどう回すか。日々のタスクは多く、やりがいもあった。
一方で、心のどこかに引っかかるものもあったという。
マニュアルがあり、部品供給があり、交換して直すことが前提となる現場。もちろん大切な仕事だが、それだけを積み重ねていく先に、自分は何を残せるのか。
「これまであまり触れてこなかった古い車や輸入車に、今向き合わなければ後悔すると思いました」
その確信が、RESENSEへの転職を後押しした。
試行錯誤の先にある成長
RESENSEに入社して最初に感じたのは、これまでの常識が通用しないということだった。
古い車には、一癖も二癖もある。純正部品は出ない。中古部品も見つからない。解体業者を探しても、欲しいものがない。
似た年式、似た構造の部品を探し、加工する。切って、合わせて、削って、組み直す。
簡単に終わる仕事は少ない。
社内の先輩に相談し、ときには社外のパートナーメカニックの知恵も借りながら、創意工夫と試行錯誤を重ねる。そうして車を“当たり前の状態”へ戻していく。
「以前の職場のほうが、件数だけ見れば忙しかったです。ただ、RESENSEでの仕事は別の意味で濃い」
一台とじっくり向き合い、正解のない課題を解き続ける。頭も体も使う。そのぶん、うまくいった時の達成感は大きい。
入社してまだ数か月。それでも、自分が確実に成長している実感があるという。
妥協せず待つ人の元へ
ディーラーで学んだ基礎。造船所で身につけた加工技術。町工場で培った段取り。
ばらばらに見えていた経験が、いま一つの場所でつながっている。
「部品がないからといって、諦めてしまったらどうしようもないじゃないですか」と上野さんは話す。
RESENSEのラインナップには、まだ世の中で十分に価値づけられていない車も多い。けれど、そうした一台を待っている人は必ずいる。
だからこそ、妥協せずに仕上げる。次のオーナーのもとへ、きちんと届ける。
上野さんの目標は、特別に大きな言葉ではない。
「毎日を後悔なく生きること」
その言葉は、一日一日の仕事にまっすぐつながっている。車に向き合う手を止めず、できる方法を探し続けること。
今日もまた工場で、一台の車に新しい時間を与えている。



