5.0リッターV8スーパーチャージャーを積むレンジローバースポーツは、過激さに頼らずとも濃密な存在感を放つ。快適性と野性味、そのどちらも高い次元で成立させた一台だ。
SVRよりも
レンジローバースポーツという名前を持ちながら、このクルマはときにレンジローバー“スーパースポーツ”と呼びたくなるほどの完成度を備えている。
それほどまでに、この5.0リッター スーパーチャージャーのレンジローバースポーツは特別だ。
そして不思議なことに、その特別さは“分かりやすい派手さ”の中にはない。
このクルマを語るうえで、どうしても比較対象として浮かぶのがSVRという存在だろう。
もちろんSVRは、誰が見ても特別なモデルだ。
あの刺激、あのサウンド、あの過剰さ。
レンジローバースポーツの中でも、ひときわ鮮烈な存在であることは間違いない。
だが、レンジローバーフリークのひとりとして正直に言えば、SVRには少しだけ“スポーツの脚色が強すぎる”と感じる部分もある。
噛み砕いて言えば、レンジローバーとしての王道感がやや薄いのだ。
安心感、包容力、そして長く付き合っても飽きが来ないこと。
レンジローバーというブランドに本来宿るべき魅力を考えたとき、刺激が少し強すぎる。
もちろんそれも魅力ではある。
だが“相棒”として長く付き合うことを想像すると、見え方は変わってくる。
その点、この5.0リッターのオートバイオグラフィ ダイナミックは絶妙だ。
SVRほど過激ではない。
だが、野性味は十二分にある。
アクセルを踏み込めば、スーパーチャージャー付きV8ならではの厚みと即応性が一気に立ち上がる。
荒々しいV8サウンドは、現行のレンジローバースポーツではやや遠くなった印象もある。
今のモデルは洗練され、整っていて、確かに優秀だ。
だがそのぶん、この時代の5.0リッター スーパーチャージャーが持っていた“生き物のような濃さ”は、やや後退しているようにも感じられる。
このモデルか、それ以外か
そしてこのクルマの魅力は、単に速いことではない。
むしろ印象的なのは、リラックスして乗れることだ。
細かな話をすれば、ベンチレーションシートやシート調整幅の広さといった快適装備の充実も大きい。
だが本質はそこではない。
このクルマは、ただ刺激的なだけで終わらない。
きちんとくつろげて、きちんと満たされて、
それでいて必要なときにはしっかり牙を見せる。
そのバランスが、実に見事なのだ。
多くのクルマは、「この世代が好き」「このモデルがいい」という選び方をされる。
だが、ごく稀に“この仕様でなければ意味がない”と思わせるクルマが存在する。
このレンジローバースポーツ5.0リッター スーパーチャージャーは、まさにその稀な一台だ。
SUVでありながら、ここまで濃密で、ここまで王道で、ここまで長く付き合いたくなるクルマはそう多くない。
刺激だけではない。
快適性だけでもない。
ブランドイメージだけでもない。
そのすべてを、ちょうどいい熱量で成立させている。
レンジローバースポーツという名前の中に、こうした名車が隠れている。
この5.0リッター スーパーチャージャーは、それを強く思い出させてくれる一台だ。

河野浩之 Hiroyuki Kono
18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どんな車にも、それを選んだ理由があり、「この1台のために頑張れる」と思える瞬間が確かにあった。車を心のサプリメントに──そんな思いを掲げ、RESENSEを創業。性能だけでは語り尽くせない、車という文化や歴史を紐解き、物語として未来へつなげていきたい。



















