• アストンマーティン / V8ヴァンテージ スポーツシフト(2008)

誤解していたスポーツカー

大いなる誤解を解くように、2008年式V8ヴァンテージと向き合う。派手さでも速さでもなく、英国スポーツカーだけが持つ深い対話性に気づかされる一台だ。

アストンマーティン・V8ヴァンテージ スポーツシフト(2008)誤解していたスポーツカー

経験値不足ゆえの

正直に告白すると、アストンマーティンの中で、もっとも魅力を理解できていなかった車が、このV8ヴァンテージだった。しかもスポーツシフトモデル。

RESENSEとしても過去に僅かに扱ってきたし、個人的にもMTモデルを所有していた経験もある。

それでも長い間、この車に対してどこか“味が薄い”と感じていた。

アストンマーティン・V8ヴァンテージ スポーツシフト(2008)誤解していたスポーツカー

DB9ほどの圧倒的な色気でもない。

ヴァンキッシュほどの特別感でもない。

かといって、ドイツ車のような完成度を前面に出してくるわけでもない。

だから今回も、正直そこまで期待していなかった。

アストンマーティン・V8ヴァンテージ スポーツシフト(2008)誤解していたスポーツカー

だが数年ぶりに乗って、その印象は完全に覆された。

ひとことで言えば、大いなる誤解だった。

そして同時に思う。

当時の自分には、この車の奥行きを読み解くだけの経験値がまだ足りていなかったのだと。

アストンマーティン・V8ヴァンテージ スポーツシフト(2008)誤解していたスポーツカー

イタリア車ともドイツ車とも違う

では何が良かったのか。

イタリア車のような、一瞬で感情を揺さぶる派手さはない。

ドイツ車のような、恐ろしいほどの緻密さもない。

だがこの車には、イギリス車ならではの“深さ”がある。

アストンマーティン・V8ヴァンテージ スポーツシフト(2008)誤解していたスポーツカー

まず印象的なのは、エグゾースト音。

派手に鳴り響くわけではない。

だが低く、深く、どこまでも奥行きがある。

まるで空気の層そのものが、震えているような感覚。

それはイタリア車とも、ドイツ車とも違う。

実に英国的な音色だ。

アストンマーティン・V8ヴァンテージ スポーツシフト(2008)誤解していたスポーツカー

そしてハンドリング。

ドイツ車ほど重厚でもなく、イタリア車ほど軽快でもない。

だがその中間に、独特の馴染み方がある。

走らせるほどに、少しずつ身体へ近づいてくる感覚。

「もっと乗りこなしたい」そう思わせる。

アストンマーティン・V8ヴァンテージ スポーツシフト(2008)誤解していたスポーツカー

それは単なる性能ではない。

スポーツカーとしての“対話”のようなものだ。

さらにこのスポーツシフトも、今改めて乗ると非常に興味深い。

当時はどうしてもMTとの比較で語られがちだった。

だが今となっては、この少し機械的で、少し不器用な変速フィールすらも、この車の人格の一部に思えてくる。

アストンマーティン・V8ヴァンテージ スポーツシフト(2008)誤解していたスポーツカー

時間をかけて

速さだけを求めれば、もっと優れた車はいくらでもある。

官能性だけを切り取っても、もっと刺激的な車は存在する。

だけどこのV8ヴァンテージには、それらとは違う魅力がある。

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性能でもない。

派手さでもない。

もっと本質的な、“スポーツカーとは何か”という問いへの答えが、この車にはあるように感じた。

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そして今回の個体は、走行距離わずか1.7万km。

さらにダークブルーという色味も実にいい。

派手に主張しない。

だが、確実に品がある。

アストンマーティン・V8ヴァンテージ スポーツシフト(2008)誤解していたスポーツカー

この控えめな佇まいもまた、この車の性格そのものだと思う。

この車の魅力を深く読み解くには、じっくりとこのV8ヴァンテージと長く付き合っていく必要がありそうだ。

アストンマーティン・V8ヴァンテージ スポーツシフト(2008)誤解していたスポーツカー
Written By
HIROYUKI KONO

18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どん...

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