DBX Sの後に続くヴァンテージSは、コアモデルに基づいた特別ハイパフォーマンス仕様の末尾に「S」を付ける、アストン・マーティンの長年の伝統復活への次の一歩となる。
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ゲイドン(英国)発
アストン・マーティンは、スポーツカーのラインナップの中でも最もパフォーマンスに焦点を絞った、新型ヴァンテージSを発表。
ドライバーを中心に据えたスリリングなヴァンテージが、クラス最高のフロントエンジンのスポーツカーとして既に地位を確立しているが、ヴァンテージSはその土台の上に出力アップとさらに優れた動的性能を実現した。
エクステリアとインテリアに加えられた個性的な新要素と共に、ヴァンテージSは定評あるアストン・マーティンのフロントエンジンのスポーツカーに、新しいベンチマークを打ち立てる。
アストン・マーティンの最高経営責任者(CEO)エイドリアン・ホールマークは「何十年にもわたり、ヴァンテージという輝かしい名は、至高のパフォーマンスと興奮、ドライビングのスリルの代名詞でありました。昨年新型ヴァンテージを発売し世界的な名声を獲得した際に、前面で注目を浴びていたのが、まさにこれらの性質です。
それを超えていくことがヴァンテージSの挑戦であり、原動力でもありました。こうして生まれたのが、フロントエンジンのウルトラ・ラグジュアリーなスポーツカーの分野における新しいベンチマークです。
アストン・マーティンの情熱的でこだわりを持ったお客様の心を躍らせる一台であり、今日のアストン・マーティンが擁する豊かな人材と能力の幅広さ、前進力をまざまざと示すものでもあります」とコメント。
エンジン
ヴァンテージSの中心にあるのは、4.0リッターV8ツインターボエンジンのアップグレード版だ。
ヴァンテージSはフロントエンジンのラグジュアリー・スポーツカーの分野においてアストン・マーティンが誇るパフォーマンスの優位性をさらに押し上げ、最高出力は今や680ps/6000rpmを誇り、最大トルクは3000rpmと6000rpmの間で800Nmを発揮し、即時のインギア加速を実現した。
ドライビングの愉しさとパフォーマンスのフィールをさらに高めるため、エンジニアたちはスロットルペダルの重みとレスポンスで「S」の特性に合わせた改良、調整を続けた。
「S」専用のドライブバイワイヤのスロットルマップに合った抵抗を用意し、ドライブモードごとにチューニングを施した結果、ヴァンテージSではこれまで以上にすべての制御の調和がとれた一体感を感じることができる。
パワートレインのキャリブレーション変更も行われ、ローンチ・コントロール・システムの最適化で0-60mph加速が0.1秒向上してわずか3.3秒となり(0-62mphは3.4秒)、0-124mph(200km/h)加速は10.1秒。最高速度は変わらず、猛烈な202mphに達する。
サスペンション
新型ヴァンテージのサスペンション、パワートレインマウント、制御ソフトウェアに広範に加えられた一連の詳細な変更も、ヴァンテージSにより高い機敏性と、フィールやドライビングの愉しさ、安定性の向上をもたらしている。
シャシーエンジニアたちは、ヴァンテージのプラットフォームからさらに機敏性とフロントエンドのグリップを引き出そうとしていたが、改良がコンプライアンスや洗練を損なうことがあってはならないとも考えていた。
ビルシュタインDTXアダプティブダンパーのハードウェアのチューニングとソフトウェアのキャリブレーションによってフロントエンドのフィールとレスポンスを向上させる一方で、リアスプリングエイドの剛性を下げることで圧縮と反発のバランスをとり、低速走行時の乗り心地を良くしている。
トランスミッションマウントの剛性は10%下げてボディとシャシーに対するパワートレインの動きをコントロールできるようにし、車両の動きを路面に調和させてさらなる洗練をもたらした。
また、リアサブフレームをラバーブッシュではなく直接ボディに取り付けることで、直接性とステアリング接続が向上。
最後に、ハードウェアおよびソフトウェアに対するこれらの変更から得られる相乗効果を最大化するため、サスペンションのキャンバー、トー、キャスターの各設定の微調整によって研ぎ澄まされたレスポンスを引き出し、高い横荷重下におけるフロントエンドのグリップを向上させ、全体的な動的バランスを正確にダイアルイン。
その結果が、確固たる安定性に支えられ、コーナーをスリリングに攻めていくことのできるクルマとなっている。
フロントのルックス
ヴァンテージSは、ビジュアル的にもその優れたパフォーマンスに合ったルックスで、パフォーマンスを真に向上させる機能性を、非の打ちどころのないデザインのフォルムをと組み合わせている。
フロントは、新しく中央に装着されたボンネットブレードが、新型ヴァンテージSとわかる目印となっており、グロスブラック仕上げまたは2x2ツイルカーボンファイバー仕上げで、より主張の強いデザインとなっているだけでなく、「ホットV」構成のV8エンジンの熱気排出も最適化する。
モデル名を示すのは、控えめながら印象的なフロントフェンダーの「S」のバッジだけだが、一つ一つが手で作られた真鍮鍛造の「S」は、まさにジュエリーと呼ぶにふさわしいものだ。
赤のエナメルガラスを充填した「S」の枠は、顧客が選んだアストン・マーティン・ウィングバッジの色に合わせ、ブライトクローム加工またはダーククローム加工が施される。
リアのルックス
フロントと同様に一目でヴァンテージSであることがわかるリアの特徴が、パフォーマンス重視のモデルであることをこの上なく明確に表している、車幅いっぱいに広がるデッキリッドスポイラーだ。
その役割はデザイン的な主張という視覚要素にとどまらず、最高速度時のリアのダウンフォースを44kg増加させ、全体で111kgの最高速度時のダウンフォースに大きく貢献。
新スポイラーはヴァンテージSのエアロダイナミクスのチューニングに使用されており、安定性を高めながら全体的なダウンフォースのバランスをフロントエンドに傾け、優れたターンインのレスポンスと高いコーナリンググリップを生み出している。
最高速度時のダウンフォースの残り67kgは、新しく追加されたフロントのエアダムとベンチュリベーンを含むアンダーボディのさらなる改良によるものだ。
その他のポイント
ヴァンテージSでは、ビスポークの21インチYスポークホイールも選択でき、赤の差し色の入ったサテンブラック仕上げで、「S」バッジ同様の赤のディテールが、ブロンズ塗装のブレーキキャリパーとエレガントな対比を生み出している。
ビスポークの「S」はインテリアにも見られ、標準装備は独特のアルカンターラとレザーの「アクセレレート」のインテリアで、サテン2x2ツイルカーボンファイバー製トリムインレーを備える。
「S」の本質を完璧にとらえたインテリアで、最高にスポーティーでありながらVantageに比べて若干の重量削減も実現した。
エクステリアのバッジが職人の手によるクラフトマンシップを体現するように、ヴァンテージSのインテリアでも、シートの上部ショルダーパネルに色を合わせた 「S」のロゴが刺繍される。
約2500針のステッチと16mを超える糸で描き出される「S」は、アストンマーティンのSモデルにおける徹底的なラグジュアリーとパフォーマンスへのこだわりを明確に感じさせるものだ。
「S」に合わせ、ヘッドレストにはアイコニックなウイングが刺繍され、エンボス加工とデボス加工の両方を用いた業界初の手法によるウイングもオプションで選択でき、超高圧(1.5トン)と熱によってレザーの上に精密に形づくられたウイングが、繊細で美しいディテールを生み出す。
「S」のマークはトレッドプレートとエンジンベイの最終検査プラークにも記される。
オプションパッケージ
ヴァンテージSには、ヴァンテージモデルの中で最もスポーティーなバージョンであることを強調できる、独特のインテリアオプションパッケージも用意された。
ドライブモードを選択するためのローレット加工された金属製ロータリースイッチはレッドまたはシルバーの陽極酸化仕上げを選べ、キャビンの中心を大胆に彩る一品とすることが可能だ。
ロータリースイッチの色はシートベルト、コントラストウェルト、コントラストステッチ、ヘッドレストの刺繍にも展開され、一貫性を持って一連のアクセントが随所に配置される。
ラグジュアリー感をより一層高めたい顧客には、「インスパイア・スポーツ」インテリアも用意されており、セミアニリンレザーのみ、またはセミアニリンレザーとアルカンターラの組み合わせで提供され、モノトーンとデュオトーンのいずれかを選べる。
完全に新しく設定されたこのインテリアでは、徐々に小さくなっていくシェブロンキルトが絶妙に配置されたパーフォレーションに囲まれ、見紛うことのないスピード感を演出した。