ポルシェ911カレラGTSカブリオレ(RR/7AT)「GTS」という旨味

ポルシェ911カレラGTSカブリオレ(RR/7AT)「GTS」という旨味

ポルシェ911(991.2型)のカブリオレ、それもグレードは「GTS」の試乗記。GTSのルーツを探り、991.1世代との違い、GTSのならではの味わいを探った。

「GTS」のルーツとは

目の前の赤いポルシェのリアに回ると、「911 Carrera GTS」と書いていた。その上には「P O R S C H E」と大きく書いていた。テールライトとテールライトの間を埋めるほどに長いテキスト。正式名は「911カレラGTSカブリオレ」。長い名前である。

長い名前の正体は、911をベースとしたカブリオレで、それもグレードは「GTS」。世代的には991型の後期。いわゆる991.2型にあたる。

「GT」という2文字を初めてポルシェが使ったのは、1956年、356A 1500カレラGTだった。「GTS」の3文字は904 GTSが初めて。その後、924や948にも使用された後、少し間があいてカイエン/パナメーラで復活。

少しマニアックになってしまったけれど、現代のGTSはすなわち、911においてはGT3とカレラSの間の立ち位置というのが適切。

ポルシェの言葉を借りると「911カレラSとサーキット用に最適化された公道仕様のスポーツカーである911 GT3の間に位置」するのだ。

911 GTSの進化を辿る

ポルシェ911の場合、997世代からGTSの名前が加わった。2014年のことだった。

クーペとカブリオレ、RRと4WDが設定されていた。7速PDKのみの設定で左右ハンドルから選ぶことができた。このページでの主役と同グレードのカレラGTSカブリオレを抽出すると1923万円(税込み)であった。

それから3年後。991世代がいわゆる991.2世代に変わったことで、GTSも更新された。この世代交代では、パワートレインが自然吸気からターボに変わったことが大きなトピック。欧州のCO2排出規制への対応が理由である。

モデル展開は991.1のラインナップに加え、タルガ4が設定されている。トランスミッションは7速PDKのみで、左右ハンドルから選べるのも変わらない。

GTSのターボ化も例外ではなく、3.0リッター・フラット6ターボは、991.1世代の自然吸気+20psの450psに達する。同時期のカレラS+30ps。優位なトルクも550Nmを記録した。2150〜5000rpmで発生するのも特長だ。

PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)もGTSでは標準装備となり、カレラSより10mm低い。(GTSクーペのみ、20mm低くなる)。

なかなか実感の湧きにくい指標かもしれないけれど0-100km/hは最短で3.6秒(カレラ4GTSクーペ×PDK)、最高速は310km/h(カレラGTS×PDK)となる。

今回の主役カレラGTSカブリオレは2116万円(税込み)となっていた。

内外装にもGTSらしさ

GTSのスペックや立ち位置は前項でお伝えしたとおり。内外装にも差別化がなされる。

車高の低さに加え、RRのモデルでも911の四輪駆動シリーズと同じワイドボディとなる。フロント下部の意匠も異なり、結果的にも前後の浮き上がりが抑えられるとポルシェはいう。

テールライトやインテークグリル、スポーツエグゾーストの出口(こちらも標準)、リアエンブレム、ドアミラーやセンターロック式の20インチホイールも黒くトーンダウンされる。

インテリアも、アルミパネルは目の粗い黒の酸化コート処理が施され、トーンが揃えられる。大部分をアルカンターラが覆い、「GTS」のロゴがちりばめられる。

驚くべき超絶ソリッド

ソリッドな感触のドアノブを引き、シートに腰下ろす。ソリッドな感触のキーをひねると、けっこうな音量でエンジンが目覚める。

ガシャ。PDKのレバーをDレンジに入れてアクセルを踏むと、911カレラGTSカブリオレは間髪入れずに前へ進む。

乗り心地は硬い。911=グランドツアラーという表現をみると、比較的穏和な乗り味を想像するかもしれないけれど、PASMの影響である、硬い。

驚くのはPDKの変速マナー。991.1世代と比べると、明確に洗練されている。変速ショックは皆無といっていいレベルにある。音だけが変速したことを知らせてくれる。シフトダウン。こちらの動きを予想していたかのように、想像の半分くらいのスピードでシフトダウンする。ショックがない。ゲームセンターに置いてあるレーシング・ゲームのようだ。指の腹がパドルに触れた瞬間に準備が始まっている? 本当にそう思ったほどだった。

速度が高まると、比較的フラットな乗り心地になる。けれど硬さは残る。多くの人が、アシを締め上げるためのスイッチを押すことはないだろうと推察する。

しかしこれだけ引き締まるとアクセルのわずかな緩みに対するパワーの絞り込み、ハンドルを1mmでも動かした際の反応。隅々まで自分の体の一部分であるようなムダのない動きが実現する。

GT3があってのGTSという見方をすると、カレラSとGT3の良い所取り=ちょうど中間のように思えなくもないけれど、その実、GTSは極めてGT3寄りの車であると実感した。いや、一昔前のGT3と同じくらいソリッドである。

ポルシェの「巧さ」

どういったオーナーに、この911カレラGTSカブリオレが向くのかと考える。

GT3の大きな羽は、ちと恥ずかしい? カレラSよりも、もう少し特別感が欲しい? 現実的な話、カレラSにオプションを追加するよりも、GTSの標準装備はお得感もある。

流行を取り入れつつ、きちんと差別化した内外装の特別感もGTSならではの魅力だ。

つくづくポルシェは、「すき間」を見つけ、そこをピンポイントで突き、顧客の心を掴むことに長けていると思う。現にGTSが成功し、最初の登場からコンセプトを大きく変えることなく受け継がれていることが、その立派な存在意義だといえるだろう。

SPEC

ポルシェ911カレラGTSカブリオレ

年式
2018年
全長
4530mm
全幅
1850mm
全高
1290mm
ホイールベース
2450mm
パワートレイン
3リッター水平対向6気筒ツインターボ
トランスミッション
7速AT
エンジン最高出力
450ps/6500rpm
エンジン最大トルク
550Nm/2150~5000rpm
サスペンション(前)
マクファーソンストラット
サスペンション(後)
マルチリンク
タイヤ(前)
245/35 ZR20
タイヤ(後)
305/30 ZR20
メーカー
価格
店舗
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