- ポルシェ / マカンS シュポルトエディション(2019)
ポルシェを日常に
911ほど構えず、カイエンほど大きすぎない。マカンSシュポルトエディションは、ポルシェを“日常の中で楽しむ”という感覚を自然に成立させる一台だった。スポーツカーらしさと実用性、その両立が実に巧みだった。

マカンがもたらしたもの
都市の風景にポルシェが溶け込むようになった今、その入り口として最も多くの人を惹きつけてきたのがマカンだ。
2014年のデビュー以来、マカン購入者の約80%が“初めてのポルシェ”だという。その数字だけでも、このモデルがポルシェという存在をどれほど身近にしたかが伝わってくる。
当時のラインナップは、ブランドの象徴である911、ボクスターとケイマンのスポーツモデル。そしてラグジュアリーSUVの先駆けとなったカイエン、サルーンのパナメーラ。
スポーツモデルは熱狂を呼ぶ一方で、カイエンやパナメーラは実用性を備えながらも、そのサイズに一歩引いてしまう人もいた。
その“隙間”を埋めたのがマカンだった。
都市部でも扱いやすいサイズ感に、ユーティリティカーとしての利便性。そしてポルシェへの憧れに自然と寄り添うキャラクターがあった。
10年が経った今、街中でポルシェとすれ違う機会が増えたのは、マカンが広げた裾野の広さがあってこそだろう。
そんな背景を思い浮かべながら、ステアリングを握った。
走りの質も、所有感も
ドアを閉め、シートに身を沈める。
エンジンをかける動作には、“捻る”という昔ながらの所作が残されている。
始まりと終わりに意味を持たせる、ポルシェが大切にしてきた感覚だ。
今回の個体はマカンS。
3.0リッターV6ツインターボは354PS/480Nmを発生し、7速PDKは滑らかで俊敏だった。
4WD制御のポルシェトラクションマネジメント(PTM)、そしてシュポルトエディションならではのスポーツクロノパッケージやPASMが標準装備される。
その充実した装備群は、単なる便利さのためではない。走りの質を磨き上げるだけでなく、所有する満足感そのものまで高めてくれる。
モードが変えるキャラクター
まずはノーマルモードで走り出す。
乗り心地は柔らかく、エンジンは余裕を残したまま力強さを伝えてくる。
“ポルシェ=アグレッシブ”というイメージを持つ人なら、ここで印象が変わるはずだ。
ステアリングのセレクターをスポーツへ。
PDKは変速ポイントを引き上げ、エンジンの鼓動が一段と前へ出る。
そしてスポーツプラス。
SUVであることを忘れるほど、ポルシェのスポーツカーらしさが前面に出る。
PASMは固く引き締まり、エンジン音が室内に届き、走りのテンションが一気に高まる。
手元の操作だけで、日常の快適性から走るための時間へと切り替わる。
この振れ幅こそがマカンの真骨頂だ。
所有する歓びを満たす
外装はスポーツデザインに加え、21インチのクラシックデザインホイール。
カラークレストのホイールキャップが、さりげなく特別感を添える。
内装は10.9インチモニター、ブラック/ガーネットレッドのレザー、シートヒーター、パノラミックルーフと抜かりない。
走行距離は5.3万kmとやや進んでいるが、数字から想像するほどの使用感はない。さらに、500万円台でこの仕様のマカンSに乗れるという事実も、現在の中古市場ならではの魅力だ。
すでにポルシェを知る人にも、初めての人にも。
どちらにも“ちょうどいいポルシェ”として寄り添う懐の深さがある。
日常を快適にこなしながら、走りの楽しさも妥協しない。
そんな欲張りな条件を、軽々とクリアしてくれる一台だ。

絵本よりも中古車情報誌を隅々まで読み込んでいた幼い頃。それ以来、ずっとクルマに魅せられてきた。高校生の時に初めたInstagram「hinacars」では6年間で200...
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