• ポルシェ / ケイマン (2008)

最良の、その先にあるもの

「最新が最良」と語られるポルシェ。その価値観を知るほど、2008年式ケイマンの鮮度に驚かされる。 5400kmの極上個体が教えてくれたのは、新しさだけでは測れない、時間を経たからこそ得られる感性だった。

by HIROYUKI KONO
ポルシェ・ケイマン(2008)最良の、その先にあるもの

これまでにない違和感

ポルシェというブランドには、昔からひとつの言葉がある。

「最新が最良」

それは単なるキャッチコピーではなく、実際に乗れば納得してしまう、強い説得力を持った思想だ。

ポルシェ・ケイマン(2008)最良の、その先にあるもの

これまで水冷ポルシェを、911もボクスターも含めて数多く触れてきた。

新型が出るたびに、その完成度の高さに驚き、やはり最新がいちばんいいと感じてきた。

そして時折振り返る旧モデルには、どうしても経年というフィルターをかけてしまう。

結果として、あらためて最新モデルの良さを再認識する。

それが、いつもの流れだった。

ポルシェ・ケイマン(2008)最良の、その先にあるもの

そんな中で、久しぶりにこの987型ケイマンに触れた。

しかも、素の2.7リッター、ティプトロニック。

当時の記憶では、2.7ならMT、あるいはSでティプトロニック、という印象が強かった。

そんな先入観を抱えたまま、軽く乗るつもりでステアリングを握った。

だが、走り出してすぐに違和感があった。

ポルシェ・ケイマン(2008)最良の、その先にあるもの

いい意味での、違和感だ。

本当に「ちょっとそこまで」のつもりだった。

それなのに気づけば予定を変え、そのまま長く走り続けていた。

ポルシェ・ケイマン(2008)最良の、その先にあるもの

心地よい関係性

なぜか。

理由は単純で、あまりにも気持ちがよかったからだ。

ドライビングの一体感。

エンジンとの距離感。

クルマの中心に重さがあることが、自然と伝わってくるあの感覚。

すべてが過剰ではなく、ちょうどいい密度でまとまっている。

ポルシェ・ケイマン(2008)最良の、その先にあるもの

ティプトロニックも、決して速い変速ではない。

だがそのぶん、クルマとの間に独特のリズムが生まれる。

急かされることなく、自分のペースで操作し、その結果としてクルマが応えてくる。

その関係性が、とても心地いい。

ポルシェ・ケイマン(2008)最良の、その先にあるもの

年を経たからこそ

そして何より印象的だったのは、「いいクルマに触れている」と感性で理解できる時間だった。

スペックでもなく、速さでもなく、数値では測れない部分で満たされていく。

その感覚は、実に得がたいものだ。

ポルシェ・ケイマン(2008)最良の、その先にあるもの

同時に、ひとつの気づきもあった。

これまで旧モデルに抱いていた印象は、必ずしもクルマそのものの問題ではなかったのではないか、ということだ。

ひとつは個体差。

この車両は、わずか5400kmという極上のコンディション。

新車時のフィーリングを、ほぼそのまま残している。

ポルシェ・ケイマン(2008)最良の、その先にあるもの

そしてもうひとつは、自分自身の変化だ。

若い頃は、どうしても速さや刺激に意識が向いていた。

だが今は、それだけではない価値を受け取れるようになっている。

そのふたつが重なったとき、このケイマンはまったく違う表情を見せた。

ポルシェ・ケイマン(2008)最良の、その先にあるもの

新たに宿る価値

ポルシェは、確かに最新が最良なのだと思う。

それは間違いない。

だが同時に、それだけでは語りきれない魅力があることも事実だ。

この初代ケイマンには、その“語りきれない部分”が詰まっている。

ポルシェ・ケイマン(2008)最良の、その先にあるもの

ヒストリーと、個体のコンディション、そして乗る側の感性。

そのすべてが揃ったとき、中古車には新車では得られない価値が宿る。

この一台には、確かにそのドラマがあった。

ポルシェ・ケイマン(2008)最良の、その先にあるもの

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