- ジャガー / Fタイプ クーペ P300(2018)
もしもあなたが通ならば
2リッター4気筒ターボを憂うことなかれ。ジャガーFタイプ・クーペP300には、そのグレードにしかない愉しさと、味わいが宿っていた。敢えて選ぶモデルである。

2リッター4気筒のFタイプ
レセンス編集部がジャガーFタイプにトライするのは今回で二度目。初回はP340と呼ばれるグレードで、これは3リッターV型6気筒スーパーチャージャーユニットを搭載していた。内外装は評判通り。その上V6のバランスや、快適性を評価している。
<a href="https://www.resense.blue/post-1577">ジャガーFタイプ・クーペP340(FR/8AT)しなやかなアスリート</a>
今回の主役はP300と呼ばれるモデルだ。2018年、内外装の小変更とともに誕生。なんといっても大きなトピックは2リッター直列4気筒ターボを搭載している点だ。
世の中の反応をみるに、スポーツカー=多気筒大排気量という価値観が強く残っている向きも多く、ネガティブな捉え方をしている声もあった。実際はどうだろう?と考えたのが、今回取り上げる理由である。
走り始める前に、この車についてもう少し調べてみることにしよう。
2018年モデルの見分け方
2017年9月末に発表/発売された2018年モデルはまず、外観が少しだけ異なっていた。
分かりやすいところで言うと、フロントグリル両脇に開けられたハニカム構造のメッシュ部である。2018年モデルになる前は、左右ふたつずつ開いていたが、ひとつの大きな台形に近いデザインになった。また、ヘッドライト内部が円のキセノン状のデザインであったのに対し、横方向のLEDタイプになった。
内装でもっとも分かりやすいポイントは、センターコンソール上に鎮座する新しいインフォテインメントシステムだ。2018年モデルよりも前は8インチであったのに対し、2018年モデルは10インチに。タッチ操作が叶い、動きもサクサクしている。
後は目に見て分からない部分!シートフレームがマグネシウム製になった。軽量化を果たしたとジャガーは説明している。
2リッター4気筒モデルが加わった事により、それ以前の入口価格が823万円であったのに対し、794万円にまで引き下げられた。
走りへの影響は明白だった
前回試乗したFタイプ・クーペは燃えるような赤色で、撮影も日の出直後だったから、とても華やかな印象であった。
対する今回の個体はブラック(サントリーニブラックというカラーだ)。塊感があり、引き締まって見える。それでも長いボンネットのお陰で優美さもある。
この長いボンネットを開くと、2リッター直列4気筒は、6気筒以上のパワートレインに比べると明らかにコックピット側に寄っているように見える。だからといって、例えばVWグループの車のように、小さなエンジンが載った途端「スカスカ」に見えるといった感じはしない。視覚的な配慮も見て取れた。
一方の走りへの影響は明白だった。さほど神経を研ぎ澄ませずとも、ノーズの軽さはすぐに分かる。もともと鋭敏に仕立てられたFタイプのステア特性ではあるけれど、4気筒はこれに軽やかさが増す。
ロングノーズの前半分がすっかり無くなったような、とでも言おうか。軽くスッキリした動きに最初は驚き、すぐに好感を持てた。
またFタイプの長所である足捌きの良さも健在。これなら一気に500kmくらい思いつきで走ってもいいな、と思えたのだった。
耳に届く音は、低速域では低く野太い。回転を高めていくと切れ味の鋭い、軽快なサウンドに変わる。もっともターボであるから常にレブリミットに当てながら走るというよりも、低〜中回転域を上手に使いながら走る方が理に適っているけれど、高回転域に目も当てられない、ということは一切ない。
あえて4気筒を選んでいます
自動車趣味を邪魔する最も大きな要因は「固定観念」であると考えている。
年式やグレード、ブランドやマーケティングなんぞに左右されず、その車の個性を味わえれば本望である。(なかなか簡単なことではないけれど。)
これに、排気量が小さいから、他より安いから、という無駄なバイアスが掛かると、良い車さえ楽しめなくなってしまうだろう。同時に(あくまで私の経験則だし、異論も歓迎します)、その車の素性を知りたければ、最も簡素なグレードを味わうのが吉だと思っている。
その気持ちをもってすれば、Fタイプにはスタイルを超越する純粋なドライビングの楽しみを強く持ち合わせていることがわかる。
ハチロクやロードスターを、よりラグジュアリーな世界観で楽しめる車が2リッター4気筒ターボを搭載したFタイプではあるまいか。
あえて4気筒を選んでいます、というオーナーがいても全く不思議ではない愉しさが、優美なボディの内部に宿っている。