- フォルクスワーゲン / ゴルフ GLi(1995)
90年代の欧州を味わう
1991年に登場したゴルフ3は、それまでのゴルフ像を大きく更新したモデルです。 初代から2代目まで守られてきた、ジウジアーロによって築かれたデザイン文法から一歩踏み出した、当時は相当な衝撃があったはずです。

それでも、ひと目でゴルフと分かる骨格は崩していません。
この「変えても変わらない」デザインこそ、今見ても魅力が色褪せない理由だと思います。
フロントマスクは、後のゴルフ4へとつながる流れを感じさせる造形が特徴です。
ゴルフ2は丸形ヘッドライトを採用していました。しかしゴルフ3では丸でも角でもない新しい形へと舵を切ります。
この変化は、90年代に自動車デザインが多様化していく中で、ヘッドライトの造形そのものがブランドの個性を語る時代だったことを思い出させます。
一方で、横や後ろから見るとゴルフらしさはしっかり残っています。
窓の形、テールランプの位置、ボディ全体の量感──。変化を取り入れながらもイメージを崩さない、この絶妙なバランスがゴルフ3の美点です。
インテリアも同じ思想でまとめられています。
ファブリックシートの座り心地や柄、素材感は乗り込んだ瞬間にドイツ車らしさを感じさせます。
ドアの閉まる音やボディの剛性感など、今では当たり前になった安全性への考え方を、この時代から感じ取ることができます。
この個体はGLi。特別な仕様ではなく、2.0リッター直4で最高出力115ps/最大トルク160Nmを発生します。
ただ、何より魅力的なのが、ディーラー物の右ハンドル5MTという点です。
AT大国の日本で、GTiでもないグレードをMTで注文する人は当時は決して多くなかったはずです。
当時のヨーロッパでは、趣味のクルマだけでなく日常の足としてもMTが当たり前でした。
特に右ハンドル圏のイギリスではそのイメージが強く当時も、ゴルフは多く走っていたようです。
なぜ街中を走るのにMTが選ばれたか、その走らせ方など、90年代のヨーロッパ車をMTで乗るからこそ分かる世界があります。
そうした90年代ヨーロッパ車ならではの世界を、もっとも自然に味わえる一台が、このゴルフ3なのだと思います。

絵本よりも中古車情報誌を隅々まで読み込んでいた幼い頃。それ以来、ずっとクルマに魅せられてきた。高校生の時に初めたInstagram「hinacars」では6年間で200...
Learn More





