街で偶然すれ違ったら、思わず振り返らずにはいられない。
今回の主役は、そんな唯一無二のゴルフ4です。
改めてゴルフ4がどんなクルマだったのか振り返ると、1997年に登場し、デザインは先代の流れを引き継ぎながらも、圧倒的な高級化が図られた世代でした。
ベースの質が大きく引き上げられたことで、それまでの“手の届く日常の足”という役割にとどまらず、走りに特化したモデルやプレミアムコンパクトと呼ばれる充実した装備のグレードも登場。ゴルフという存在の幅を一気に広げました。
また、樹脂パーツの面積が減り、ボディ同色のバンパーやモールが採用されたことも、目に見える進化のひとつです。
そんなゴルフ4の中でも、この個体はどこから魅力を掘り下げるべきか迷うほど、他とは異なる要素を数多く持っています。
まず目を引くのはボディカラーです。
この世代のゴルフには発色の良いカラーが多く用意されていましたが、このフューチャーイエローメタリックはその中でもひときわ強い存在感を放ちます。
光の当たり方によっては、イエローというよりもゴールドにも見える独特の色味。
世界的にも採用例は多くなく、その希少性もこの個体の価値を高めています。
さらに外装には、エッティンガー製のエアロパーツが装着され、前後バンパーとサイドスカートが変更されています。
ドイツの老舗チューナーによるエアロをボディ同色で仕上げている点にも、強いこだわりを感じさせます。
ホイールは日本ではあまり見かけないデザインですが、本国仕様ではこのグレードに標準装着されていたもののひとつとされています。
すでにお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、このクルマは本国仕様のままの並行輸入車です。
3ドアモデル自体、日本ではR32を除けばほとんど流通していません。
残された履歴を辿ると、日本のチューナーでありながらドイツ車において高い評価を受けるCOXによって、この仕様で輸入された個体であることがわかります。
つまり、この外装の組み合わせは偶然ではなく、明確な意図をもって仕立てられた一台と言えるでしょう。
では中身はどうでしょうか。
グレードは日本未導入のV6 4MOTIONです。
日本ではゴルフには設定されず、兄弟車であるボーラにのみ用意されていた仕様となります。
搭載されるエンジンは、狭角V型6気筒のVR6。
コンパクトなスペースに収まる設計で、滑らかさと力強さを併せ持つこのエンジンは、フォルクスワーゲングループを象徴する存在でもあります。
正規輸入のゴルフでVR6を味わえるのは3.2LのR32のみですが、この個体はボーラと同様の2.8L仕様。
そこに組み合わされるのは6速マニュアル、さらに左ハンドルという、日本国内では極めて希少な条件です。
4MOTIONはハルデックス式の4WDを採用し、状況に応じて後輪へ駆動を配分することで、安定性と走行性能を高い次元で両立しています。
内装も上位グレードらしい仕立てです。
サンルーフやウッドパネルが備わり、シートはファブリックながらホールド性の高い形状。
見た目の上質さと実用性がバランスよく共存しています。
後席の居住性やラゲッジスペースも十分に確保されており、趣味にも日常にも応えられる万能さは、まさにゴルフ4らしい魅力です。
日本未導入グレード、左ハンドル、マニュアル、そして3ドア。
ドイツ車好きやゴルフ4を探している方にとっては、理想的とも言える組み合わせでしょう。
しかし、このクルマの最大の驚きはそこではありません。
特筆すべきは、その走行距離です。
20年以上の時を経た現在でも、走行距離はわずか3桁。
まるで当時から時間が止まっていたかのような、独特の空気感をまとっています。
距離こそ伸びていませんが、燃料ポンプやクラッチレリーズベアリング、エアコンコンプレッサーといった要所はしっかりと交換済み。
単に保管されていたのではなく、適切に手が入れられながら、その時を待っていたことが伝わってきます。
同じ条件の個体は、世界中を探してもまず見つからないでしょう。
これからこのクルマとともに時間と距離を刻んでいくこと自体が、ひとつの特別な体験になるはずです。

永井陽向 Hinata Nagai
絵本よりも中古車情報誌を隅々まで読み込んでいた幼い頃。それ以来、ずっとクルマに魅せられてきた。高校生の時に初めたInstagram「hinacars」では6年間で2000台以上の写真と解説を投稿。最新モデルから名車と呼ばれるクラシック、そして誰も気に留めないような隠れた一台まで。日々クルマとの新しい出会いがあり、そのたびに胸が高鳴る。その“ワクワク”を、クルマオタクとしての視点で丁寧に言葉へ落とし込みながら、読者のクルマ人生をより豊かにしていきたいと考えている。














