- フォルクスワーゲン / ザ・ビートル(2013)
休日の景色を変える車
キャンプや旅行へ出かけたくなる雰囲気をまとった、少し特別なザ・ビートル。しかし、2ドアというだけで選択肢から外してしまう人も少なくない。けれど家族の時間は、思っているより長く同じではない。限られた数年間だからこそ、この一台が最高の相棒になることもある。

外へと誘う風貌
このビートルを見ていると、自然と出かける予定を考え始める。
キャンプ場へ向かう朝。少し遠くの高原。海沿いをのんびり走る休日。ルーフラックには折りたたみチェアや小さなコンテナが積まれ、リアゲートを開ければ荷物を手際よく降ろす。そんな光景が、ごく自然に頭へ浮かんでくる。
純正ではない淡いグレーのボディに、少しだけ車高を上げた足まわり。トーヨータイヤのブロックタイヤと、クラシックな雰囲気を漂わせるホイール。そこへ無骨なルーフラックが加わることで、このビートルは街を走るためだけの存在ではなくなっている。
本格的なクロスオーバーSUVではない。
それでも、この車には「次の休みはどこへ行こうか」と考えさせる力がある。
車は性能だけで行動範囲を広げるわけではない。気持ちまで動かしてくれる一台には、数字では測れない価値がある。
2ドアという壁
そんなことを考えていると、現実的な問題が頭をよぎる。
「でも、2ドアだからな」
子育て世帯なら、一度はそう思うはずだ。
小さな子どもを抱えながらシートを倒し、狭い開口部からチャイルドシートへ座らせる。その一連の動作は、確かに4ドアやスライドドアのほうが圧倒的に楽である。
だから、多くの家庭は自然とミニバンやSUVへ向かう。
それは合理的な選択だ。
けれど、子育てはずっと同じではない。
子どもは想像以上の速さで成長する。
自分でドアを開け、自分で後席へ乗り込み、自分でシートベルトを締められるようになった頃には、2ドアであることは思ったほど負担ではなくなっている。
もちろん、その先で身体が大きくなれば、今度は後席自体が少し窮屈に感じる時期がやってくる。
つまり、このビートルが家族にちょうどいい時間は、決して長くない。
ほんの数年間だけ。
だからこそ、その限られた時間をこの車と過ごすという選択には、どこか特別な意味があるように思える。
不便さより楽しさが勝つ
実際に運転してみると、このカスタムは見た目だけでは終わっていないことが分かる。
ブロックタイヤを履いているだけにロードノイズは決して小さくない。速度を上げればタイヤの存在感はしっかりと耳へ届く。
けれど、それはこのスタイルを手に入れるためのトレードオフでもある。
一方で、乗り心地は拍子抜けするほど穏やかだった。
リフトアップした車にありがちな落ち着きのなさは少なく、街中でも自然に付き合える。
見た目ほど気難しい車ではない。
リアゲートを開ければ、ラゲッジスペースも想像以上に使いやすい。
開口部は大きく、荷物の出し入れもスムーズだ。キャンプ道具や旅行バッグを積み込む姿も無理なく想像できる。
そして、この車にはもうひとつ面白いところがある。
室内は決して広くない。
けれど、その狭さが悪いことばかりではないのだ。
後席との距離は近く、笑い声も、子どもの「見て見て」という声もすぐ届く。
目的地へ向かう時間そのものが、自然と家族の時間になる。
広さでは得られない心地よさが、確かにここにはある。
「ちょうどいい」は人それぞれ
家族がいるからミニバン。子育て中だから4ドア。
もちろん、それは間違いではない。
けれど、それだけが正解でもない。
家族のかたちは、それぞれ違う。
子どもの年齢も違えば、休日の過ごし方も違う。
このビートルは、すべての家族に向いている車ではない。
しかし、子どもが自分で乗り降りできるようになった、その限られた数年間には、不思議なくらいちょうどいい存在になり得る。
「2ドアだから諦める」のではなく、「今だから乗れる2ドア」と考えてみる。
そんな視点を与えてくれる一台だ。
目的地へ着くことだけが、車の役割ではない。
家族で笑いながら向かった道のりそのものを思い出に変えてくれること。
この少し背が高くなったビートルは、そのことを教えてくれている。

スペックや値段で優劣を決めるのではなく、ただ自分が面白いと思える車が好きで、日産エスカルゴから始まり、自分なりの愛車遍歴を重ねてきた。振り返ると、...
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