パナメーラにおけるGTS

ポルシェの場合、モデルによってそれぞれ異なるけれど、パナメーラにおけるGTSは、パナメーラ4S Eハイブリッドとパナメーラ・ターボSの間のグレードにあたる。

価格（税込）は
4S Eハイブリッド＝1935万円〜
GTS＝2013万円〜
ターボS＝3003万円〜

最高出力は
4S Eハイブリッド＝440ps
GTS＝480ps
ターボS＝630ps
といった具合だ。

パワートレインは4S Eハイブリッドが、フォルクスワーゲン・グループの2.9リッターV6ツインターボ×モーターであるのに対し、GTSならびにターボSはポルシェ由来の4リッターV8ツインターボ。

ボディサイズはそれぞれ「誤差」といっていいレベルの違いしかない。（911みたく全幅が変わったりしない）。

全長：5053mm
全幅：1937mm
全高：1417mm
ホイールベース：2950mm
というのがポルシェ・パナメーラGTSの公表値となる。

レセンス編集部は既にパナメーラ4を試乗済みで、その際、サルーンの形をしたスポーツカーと結論づけている。スポーツカーの定義を考え直す素晴らしい機会にもなった。

ではGTSは？　早速走り出そう。

乗って驚嘆　GTSの走り

同じ車格の競合サルーンと比べると、パナメーラの室内はタイトに感じる。これがいい意味で緊張感を生んでいる。ウッドやレザーをふんだんに使ったラグジュアリネスよりも、機能と効率を高精度で追い求めたパナメーラの内装に好感をもつ向きも多いだろう。

エンジンをスタートさせると勇ましい低音がゴロゴロと響く。ひと世代前のGTSのけたたましい轟音と比べると大人しさは否めないが、十分に迫力のある音である。

まず驚くのは走り出しの軽やかさだ。特にドイツ勢は近年、実際の車重や体躯と関係なく、操舵やアクセルペダルのタッチ、トルクの付きなどで、まったりと、あるいはさっくり軽やかに、などと味付けの上手さが光る。

けれどパナメーラGTSの場合は、―実際にそんなことをするのは無理だけれど― 目隠しして走らせれば車重が1500kg以下くらいの車ではないかと勘違いする程に軽やかだ。

ターボエンジンとは思えないほどのリニアリティも影響しているだろう。低いところから高いところまで、どんな回転域でも鋭い切れ味を発揮する。4S Eハイブリッドの異なるパワートレインの見事な調和、ターボSの圧倒的パンチ力と比すると、GTSはガソリンエンジンの成熟を感じる。端的に爽快だ。

爽快感には乗り心地も影響しているようだ。タイヤを見ると20インチ。小さなボディの上下動の割に、かくも凹凸をいなすエアサスペンションがあるのかと感心する。

また、フルタイム4WDはタイヤ回転数や前後左右方向の加速度、舵角をモニタリングし、最適な駆動力を前後軸に分ける。華麗な旋回性能はこのお陰でもあるだろう。

飛ばしても快適。ゆったり流しても快適。なんでも叶えてくれる車選手権がこの世にあれば圧勝だ。

4枚ドアの空車重量2000kg超えの車がここまで走ってくれると、さすがにサーキットに行きたくなる…。と思わせるあたり、ポルシェの、それもGTSのバッジを掲げた4ドアサルーンなのだと感心するのであった。

ビジネスエクスプレス

なんでも叶えてくれる車選手権。もし本当にあればパナメーラGTSは圧勝だろう。

実用性、快適性、快感、操る愉しさまで備わっている。工業製品としての隙のない完成度まで鑑みれば、ビジネスエクスプレスとして、これ以上の車は思い浮かばない。

なんでも出来てツマンナイ…という声があるとすれば、それは5教科はもちろん体育まで華麗にこなすイケメンへの僻みに過ぎない。（そうこの世代はルックスも抜群だ。）

脇目も振らず目的地へ、それもアドレナリンを沸き立たせながら。イイぞ、パナメーラ。イイぞGTS。時代はこんなにも進んだのだ。