ポルシェ・ボクスター(MR/7AT)/ポルシェ718ケイマン(MR/7AT)まったく別の車

ポルシェ・ボクスター(MR/7AT)/ポルシェ718ケイマン(MR/7AT)まったく別の車

ポルシェ・ボクスターと718ケイマン。パワートレインと世代が異なる2台といえば簡単だ。しかし2台は根本から異なる。

981世代/982世代

この記事で比較するのは、ポルシェ・ボクスター(981型)と、ポルシェ718ケイマン(982型)だ。一般的な視点でみれば、両者は「マイナーチェンジ前後」の関係となる。

しかしながらモデル名がそもそも異なる。また多くのポルシェが例えば991.1→991.2へとマイナーチェンジ時にバージョン名を示すが、この2台はモデル名のみならず社内コードまでもが981→982へと変更されている。

大きく変わった。ポルシェはそう誇示したいのかも知れない。

大きく異なるのはその心臓部だ。981世代は水平対向6気筒自然吸気エンジンを搭載していたが、982世代は水平対向4気筒ターボになる。つまり2気筒取り外し、ターボ化した。完全なる新設計のエンジンである。

もう1つ大きく変わったことがある。それは従来、クーペボディのケイマンがボクスターよりも高価であったが、982世代になる際に関係が入れ替わった。これは「911と同様、オープンタイプはオプショナルな関係であるから」と新車発表時に説明されている。

内外装の違いは?

981世代から982世代になる際、ボディサイズは大きく変わらなかった(基準車比較)。一方で内外装のディテールには変更点が多い。

例えば前後バンパーやライト類のグラフィックなど、同時期の911(991.1と991.2)と共通するデザインディテールだといえる。

中でも私が大きく変わったと感じるパーツはテールライトである。左右ライトの間には「PORSCHE」のロゴが入る、ブラックカラーのアクセントストリップになった。

内装を見てみよう。全体的な質感は987→981に世代交代した時程のインパクトはない。言い換えればクリーンで硬質な整理された空間となっている。緊張感がある。

また意外と大きなポイントとなるPCM(ポルシェ・コミュニケーション・マネージメントシステム)が備わるのも有り難い。

もう1つ。スポーツ・クロノ・パッケージをオプション選択した個体はドライブモードの切り替えスイッチ(ダイヤル)がステアリング脇に設えられる。これも直感的である。

走りにみる相違点

走りの変化はどうか。

特にパワートレインのダウンサイジング(ポルシェはライトサイジングという)の影響が気になっている向きが多いだろう。

まずは981世代のボクスターからトライした。

ボクスター(981型)が搭載するのは、2.7リッター水平対向6気筒自然吸気エンジンである。265ps/6700rpm、280Nm/4500-6500rpmを発揮する。

アクセルを踏み込むと高回転域に向かって和音が澄んだ音程になってゆく。なめらかで淀みがない。スピードを高めつつも、音を楽しむという魅力がある。豊かで厚みのあるパワートレインが、軽快なボディパッケージに組み合わされる(普通はそのどちらかしかない)のだから、こんな贅沢はない。

ケイマン(982型)が搭載するのは2リッター水平対向4気筒ターボだ。300ps/6500rpmと380Nm/1950-4500rpmを捻り出す。

アイドリング音は不等長パイプをつけたインプレッサと変わらない。ドロドロと野太い。

アクセルを踏み込むと2000rpmに満たぬ回転域でドドドっとトルクが湧き上がる。これが一瞬で終わる変速の度に、ドーン、ドーン、ドーンと実に6回。あ、まったく違う車である。というのが私の感想である。

根本的に異なる車

ボクスターとケイマンで共通しているのは、ミドシップゆえの直感的な身のこなしだ。特に981型以降、軽やかとはまた違う。自分を回転中心として、くるりくるりと向きを変える。

ダンとブレーキを踏んでしまえばお尻が流れてゆくのは911と一緒だけれど、その後の処理が、とてもやりやすい。私と車は一体だ。

屋根開き(ボクスター)とクーペ(ケイマン)では、剛性感に違いがあるけれど、基本的な性質はとても似通っている。

一方で981型と982型は、まるで違う車である。パワートレインでしょう?とお思いの読者も多いだろう。ある意味正しい。

よく議論が巻き起こる。それはかたや自然吸気、かたやターボであり、それぞれの官能性についてである。が、私はそれを間違っていると声を大にして言いたい。

982型はたしかに高回転まで伸びやかまで回るという官能領域が薄れた。けれど全く違う車に進化した。怒涛の連続的なトルク。ソリッドな反応。瞬時のトルクのピックアップ。

サイボーグである。速く、超効率的に走るために手にした必要不可欠な手段である。

もっともどちらを選ぶかはあなた次第。(あまりあり得ないことかもしれないけれど)両方手にしたとしても、それぞれを楽しめる。

SPEC

ポルシェ・ボクスター

年式
2016年
全長
4374mm
全幅
1801mm
全高
1282mm
ホイールベース
2475mm
トレッド(前)
1530mm
トレッド(後)
1540mm
車重
1340kg
パワートレイン
2.7リッター水平対向6気筒
トランスミッション
7AT
エンジン最高出力
265ps/6700rpm
エンジン最大トルク
280Nm/4500-6500rpm
サスペンション(前)
ストラット
サスペンション(後)
ストラット
タイヤ(前)
235/45 ZR18
タイヤ(後)
265/45 ZR18

ポルシェ718ケイマン

年式
2018年
全長
4385mm
全幅
1800mm
全高
1295mm
ホイールベース
2475mm
トレッド(前)
1520mm
トレッド(後)
1530mm
車重
1410kg
パワートレイン
2リッター水平対向4気筒ターボ
トランスミッション
7速AT
エンジン最高出力
300ps/6500rpm
エンジン最大トルク
380Nm/1950-4500rpm
サスペンション(前)
ストラット
サスペンション(後)
ストラット
タイヤ(前)
235/45 ZR18
タイヤ(後)
265/45 ZR18
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