E93型3シリーズカブリオレの登場は2007年です。
まもなく20年を迎えるモデルですが、コンディションの良い個体は年々少なくなってきています。
BMWといえば、やはり直列6気筒を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。コンパクトな3シリーズのボディに、高出力な直列6気筒を組み合わせ、「駆け抜ける歓び」を体現してきたブランドです。
当時の象徴的な存在として挙げられるのは、やはりM3でしょう。E9x世代のM3は4.0LのV8エンジンを搭載し、カーボンルーフを備えたワイドなボディへと進化していました。
世の中的にもルックスやスペックの面でM3に注目が集まりがちですが、335iに目を向けると、また違った魅力が見えてきます。
搭載されるのは、N54B30A型3.0L直列6気筒ツインターボエンジン。最高出力306ps、最大トルク400Nmを発生します。
スペックだけを見ても十分に高性能ですが、特筆すべきはトルク特性です。最大トルクは1300〜5000rpmという広い領域で発生し、日常域から力強い加速をもたらします。
高回転域で一気に吹け上がるM3とは性格が異なり、335iは街中でも扱いやすく、トルクの厚みを感じながら走ることができるモデルです。
そして、この335iにはもうひとつの魅力があります。それが今回の主役、カブリオレという存在です。
一見するとクーペのようにも見える流麗なシルエットですが、ルーフを開ければまったく異なる表情を見せてくれます。採用されているのはリトラクタブルハードトップで、クーペのような美しさとオープンの開放感を両立しています。
開発当初はソフトトップも検討されていましたが、最終的にはデザイン性と上質さを優先し、コストをかけてハードトップが採用されました。その結果、クローズ時の一体感や静粛性は非常に高く、このモデルの完成度を大きく引き上げています。
重量は増加していますが、それは単なる開閉機構によるものではありません。ボディ全体にしっかりと補強が施されている証でもあり、実際の走行でも剛性感の高さとして感じられます。
さらに重心位置にも配慮されており、オープンモデルでありながら走りの質も犠牲にしていません。雰囲気だけにとどまらない点に、BMWらしさがしっかりと表れています。
クローズドで走れば端正なクーペのように、ルーフを開ければ空とつながる開放感を味わえる。この一台でふたつの楽しみ方ができるのが、335iカブリオレの大きな魅力です。
20年近い時を経た今でも、その魅力は失われるどころか、よりはっきりとした個性として感じられます。
直列6気筒の滑らかさと、オープンエアの心地よさ。その両方を楽しめるこの一台は、いま改めて選ぶ価値のある存在ではないでしょうか。

永井陽向 Hinata Nagai
絵本よりも中古車情報誌を隅々まで読み込んでいた幼い頃。それ以来、ずっとクルマに魅せられてきた。高校生の時に初めたInstagram「hinacars」では6年間で2000台以上の写真と解説を投稿。最新モデルから名車と呼ばれるクラシック、そして誰も気に留めないような隠れた一台まで。日々クルマとの新しい出会いがあり、そのたびに胸が高鳴る。その“ワクワク”を、クルマオタクとしての視点で丁寧に言葉へ落とし込みながら、読者のクルマ人生をより豊かにしていきたいと考えている。
















