- メルセデス・ベンツ / V220dエクストラロング(2016)
闘う男たちへ(前編)
妻子を持つ者にとって、車選びは時として合理性と感性の闘いである。スライドドア、3列シート、広い室内──ミニバンが便利で優れた車であることは十分にわかっている。だが、だからといって好きになれるとは限らない。家族の要望には応えたい。でも、自分のこだわりも諦めたくない。そんな葛藤を抱える人に、2台のVクラスを紹介したい。まずはV220dエクストラロングから。

便利なのはわかっているけれど
家族が増えるたび、車選びの主導権は自分の手を離れていく。家族みんなで使うものだから当たり前だ。
「次はスライドドアがいいよね」
その一言が出た時点で、もはや勝負は決しているのかもしれない。
確かに、ミニバンは便利だ。
子供を抱っこしたままでも乗せ降ろしがしやすいスライドドア。隣の車にドアをぶつける心配も少ない。チャイルドシートへの乗せ降ろしも楽だし、ベビーカーだって畳まずに積める車種もある。
子供が少し大きくなれば、友人家族と一緒に出かけるのも楽しい。大人数で乗り込んで、賑やかに目的地へ向かう。そんな時間は、確かにミニバンならではのものだ。
広い室内に豊富な収納、快適な後席。家族のための道具として考えれば、これほどよくできた車もそうそうない。
ただ、ひとつ問題がある。
どうしても、自分がミニバンを運転している姿を想像できない──そう感じている人は少なくないのではないか。もちろん、元々ミニバンが好きな人なら話は別。
便利なのはわかる。家族が喜ぶのもわかる。だが、車は単なる移動手段ではなく、自分の好みや美意識を反映するものでもある。
こちらにも言い分はある。だが、相手には生活という揺るぎない大義名分がある。
ならば、発想を変えよう。
ミニバンを買うこと自体は受け入れる。ただし、何に乗るかまで譲るつもりはない。
そこで、メルセデス・ベンツのVクラスである。
大きいことはかっこいい
私がこのVクラス「エクストラロング」を推す一番の理由は、3列目まで余裕を持って使える広々とした室内空間でも、大容量の荷室でもない。
単純に、見た目がカッコいいからだ。
スタンダードやロングとは、迫力がまるで違う。エクストラロングを目の前にすると、「あれ、Vクラスってこんなにカッコよかったっけ?」と、思わず見直してしまう。
スタンダードとロングは、全長こそ約25cm違うものの、ホイールベースは同じ3,200mm。つまり、主に後輪より後ろの部分を延長したモデルだ。
一方、エクストラロングは全長5,380mm、ホイールベース3,430mm。単に荷室を伸ばしただけではなく、いわば「骨格」から違う。
そのサイズ感は、もはやアメ車のフルサイズSUVを思わせるほど。同じメルセデスで比較しても、Sクラスのロングボディを上回り、マイバッハSクラスに迫る全長を誇る。
大きさとは、性能やスピード、装備の充実度よりも、ずっとわかりやすいスペックだ。
大きい。それだけで迫力がある。それだけで惹かれる。
もちろん、大きければ何でもいいというわけではない。ただ、このエクストラロングには、その長さが生み出す独特のプロポーションがある。
実用性を追求したミニバンでありながら、どこか堂々としていて、妙に色気があるのだ。
家族のための装備も抜かりない
そして、この個体の魅力は見た目だけではない。
まずは、後席用のリアエンターテインメントシステムだ。長時間のドライブに飽きてしまう子供たちにとって、これほど心強い味方もないだろう。
さらに、折りたたみ式テーブルを備えたテーブルパッケージも装着されている。
休憩中に車内で食事をしたり、移動中に絵本を広げたり、お絵描きを楽しんだり。車内での過ごし方がぐっと広がる。
前席にはシートベンチレーションも備わり、暑い季節でも快適。ドライビングアシスタンスパッケージや360°カメラも装備されているため、大柄なボディに気後れしがちな人にとっても心強い。
もちろん、広い室内空間と大容量の荷室は言うまでもない。子供たちだけでなく、おじいちゃん、おばあちゃんが一緒でも、窮屈な思いをせずに出かけられる。
家族のために車を選ぶとなれば、どうしても実用性が優先される。乗車人数、荷物の量、乗り降りのしやすさ。どれも大切なことだ。
ただ、それだけで車を選ぶのは、少しもったいない気がする。
家族が快適に過ごせることと、自分がカッコいいと思える車に乗ること。そのふたつは、決して相反するものではない。
もしかすると、この車を新車でオーダーした最初のオーナーも、そんな考えの持ち主だったのかもしれない。
家族のために広い室内空間を選び、快適に過ごせる装備を揃える。一方で、ボディサイズや内外装の仕様には、自分なりのこだわりを忍ばせる。
家族のためという大義名分を掲げながら、実は自分が一番乗りたかった。
そんな車選びがあっても、いいじゃないか。

スペックや値段で優劣を決めるのではなく、ただ自分が面白いと思える車が好きで、日産エスカルゴから始まり、自分なりの愛車遍歴を重ねてきた。振り返ると、...
Learn More










