- BMW / 523dツーリング xDrive Mスポーツ (2025)
毎日の最良のパートナー
SUVが当たり前になった今、久しぶりにステーションワゴンへ乗ると、その素性の良さに驚かされる。低く構えた安定感、広い荷室、長距離を任せたくなる快適性。毎日を気持ちよく走れることも立派な性能なのだと、現行5シリーズ ツーリングが改めて教えてくれた。

ワゴンの基本性能の高さ
現行世代の5シリーズに、今回初めて乗った。
そして、乗り終えて最初に思ったのは、5シリーズそのものの進化以上に、「そういえば、ステーションワゴンってこんなに良かったんだ」ということだった。
ここ最近、大きな4ドアの実用車を選ぼうとすると、どうしてもSUVが中心になる。
視点が高く、乗り降りもしやすい。
荷物も積めて、存在感もある。
私自身、仕事柄いろいろな車へ乗っているにもかかわらず、いつの間にか身体そのものがSUVに慣れていたのだと思う。
だからこそ、久しぶりに5シリーズ ツーリングへ乗って、その基本性能の高さに少し驚かされた。
ステーションワゴンとは、本来かなり欲張りなパッケージなのである。
セダンのように低い重心を持ちながら、その後ろには広大な荷室がある。
人も乗れる。荷物も積める。長距離も快適。それでいて運転する楽しさを諦める必要もない。
改めて考えると、実用車としてこれほど理にかなった形もなかなかない。
そして、その魅力をBMWが本気でつくると、こうなるのだと思う。
F10を彷彿とさせる完成度
現行5シリーズは、とにかくバランスがいい。
乗り心地だけが突出しているわけでもなければ、スポーティさだけを強調しているわけでもない。
走り出した瞬間から、車全体に厚みがある。
路面からの入力をきちんと受け止め、その奥にまだ余裕が残されているような感覚。
この「懐の深さ」が、個人的にはとても印象に残った。
そして不思議なことに、その感覚から思い出したのが二世代前のF10型5シリーズだった。
歴代5シリーズの中でも、私はF10の完成度をかなり高く評価している。
F10には、単純なスポーティさとは少し違う、車としての厚みがあった。ボディはしっかりしていて、足はよく動く。高速道路ではひとつ上の車格に乗っているような落ち着きがあり、それでいてBMWらしいドライバーとの距離感はきちんと残されていた。
今回の現行5シリーズには、どこかその感覚に通じるものがある。
先代G31も十分に優秀な車だった。
しかし現行モデルは、単に新しくなったというより、車としてもう一段懐が深くなったように感じる。
そして、その印象にはシートも大いに貢献していると思う。
座った瞬間に感じる、しっかりとした厚み。
身体を必要以上に締め付けるのではなく、面で受け止めてくれる。
このシートと足まわり、そしてボディ全体の落ち着きが合わさることで、長く乗っていたくなる5シリーズらしい空気をつくり出している。
今回の個体にはアダプティブサスペンションに加えて、インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング、いわゆる後輪操舵も備わる。
だからこれだけ立派になったボディを、実際には驚くほど自然に扱える。
大きさを消すというより、ドライバーに大きさを意識させない。
この辺りもBMWの上手さだと思う。
SUVに慣れた今だからこそ
そして、ここで改めてSUVのことを考えた。
SUVというパッケージは素晴らしい。
しかし背の高い車を気持ちよく走らせるためには、その高さや重心を意識させないために、実はさまざまな技術が働いている。
サスペンション、スタビライザー、電子制御、タイヤ──それらを使いながら、高い重心をいかに感じさせないかという努力がなされている。
ところがステーションワゴンは、そもそもの成り立ちが低い。
だから曲がる。
だから止まる。
だから高速道路で落ち着く。
その一つひとつの動きに無理がない。
当たり前の話なのだけれど、SUVに身体が慣れてしまった今だからこそ、その当たり前がとても新鮮に感じられた。
しかも今回の523dは、48Vマイルドハイブリッドを組み合わせた2リッターディーゼルというのがまたいい。
性能を見せつけるための5シリーズではない。
毎日乗るために必要な力があり、xDriveによる安心感があり、ツーリングとしての実用性がある。
そこにMスポーツの引き締まった佇まいと、この個体では充実したシャシー装備まで加わっている。
「毎日乗れる」という性能
何かひとつが突出しているわけではない。
でも、毎日使うものとして考えた時に、すべてが高い水準にある。
若い頃なら、もっと速い車に目が向いていたかもしれない。
もっと特別な車、もっと刺激のある車を求めていたかもしれない。
けれど、いろいろな車に乗ってきた今だからこそ、毎日気持ちよく乗れることも、立派な性能なのだと思う。
人を乗せる。
荷物を積む。
仕事へ行く。
遠くへ出掛ける。
そして時には、少しだけ遠回りして帰りたくなる。
そんな生活のほとんどを、一台で高いレベルにこなしてくれる。
SUV全盛の今、改めてステーションワゴンへ戻ってみる。
するとそこには、忘れかけていた車本来の気持ちよさがあった。
今、毎日の最良のパートナーを一台指名するとしたら。
この5シリーズ ツーリングは、かなり有力な答えになるだろう。

18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どん...
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