- フォルクスワーゲン / ゴルフ TSI コンフォートライン テックエディション(2018)
ユニークな優等生
優等生として知られるゴルフ7に、リフトアップとオフロードタイヤ、ルーフラックで遊び心を加えた一台。日常での扱いやすさはそのままに、人とは違う個性と、週末に出かけたくなる楽しさを手に入れた。

意外な方向へ
「いい車」の定義を、「毎日使って、不満を感じる場面がほとんどないこと」とするなら、7代目ゴルフがいい車であることは疑いの余地がないだろう。
全長は4.3mに満たないコンパクトな5ドアハッチバック。それでいて大人が乗れる後席と十分な荷室を確保し、歴代ゴルフが積み重ねてきたパッケージングの巧さを、ゴルフ7もしっかりと受け継いでいる。
今回のTSIコンフォートラインは1.2リッターターボに7速DSGを組み合わせ、105PS、175Nmという数字以上に軽快に走る。
テックエディションでは、ACCをはじめとする運転支援も備わり、デジタルメータークラスターと9.2インチのディスプレイも装備された。
速すぎず、大きすぎず、必要なものはきちんと揃っている。
ドイツ車らしい堅実なつくりも含めて、ゴルフ7はまさに「優等生」という言葉が似合う。
ただ、クルマを趣味として考えたとき、その隙のなさが少し物足りなく感じられることもある。
今回の一台は、そんな優等生を少しだけ崩したゴルフだ。
カーキとベージュの中間を思わせる柔らかなボディカラーに、ブラックのホイールとTOYO TIRESのオープンカントリー。車高はリフトアップされ、ルーフにはラックが組み合わされる。
端正なヨーロピアンハッチバックだったゴルフが、アウトドアギアのような佇まいに変わっている。
それでいて、やりすぎた感じがない。
ゴルフというシンプルな素材だからこそ、この少し意外な方向へのカスタムがよく似合っている。
ゴルフなのに、ゴルフらしくない
この個体で特に面白いのが、横から見た姿だ。
リフトアップによって生まれた腰高なプロポーションに、厚みのあるオフロードタイヤ。ブラックのホイールも、大径アルミで足元を飾るのとは正反対の選択である。
そこにルーフラックが加わることで、ゴルフ本来の都会的な雰囲気はかなり薄れた。
遠目に見れば、一瞬何のクルマなのか分からないかもしれない。
しかし、ヘッドライトやボディサイドを眺めれば、間違いなく見慣れたゴルフ7だ。
この違和感が楽しい。
奇抜なエアロパーツを付けたり、極端な車高にしたりしたわけではない。それでも、街中に数多く存在するゴルフとはまったく違って見える。
ゴルフの良さは、もともとのデザインに強すぎる主張がないことでもある。
その余白があるから、こうして手を加えてもベース車の魅力と喧嘩をしない。
人とは違うクルマに乗りたい。しかし、珍しいクルマを所有すること自体を目的にはしたくない。
そんな感覚にも、この一台はよく馴染む。
見た目が変わっても
これだけ外観が変わると、気になるのは日常での使い勝手だ。
実際に走らせてみると、そこには拍子抜けするほどいつものゴルフがいる。
オフロードタイヤを履くため、一般的なロードタイヤに比べればロードノイズは少し増えている。それでも会話を邪魔するようなものではなく、普段使いで強く意識するほどではない。
リフトアップされていても、ゴルフ7が本来持っているボディのまとまりや直進安定性はしっかりと感じられる。
1.2リッターTSIも日常域では十分だ。
アクセルを踏めば必要なトルクが素直に立ち上がり、7速DSGがテンポよくギアをつないでいく。市街地から高速道路まで、排気量の小ささを意識する場面は思いのほか少ない。
そして車内に入れば、デジタルメーターやACCといった装備が揃い、日常の移動をきちんと快適にしてくれる。
カスタムによって遊び心を加えながら、ゴルフを選ぶ最大のメリットである「普通に使えること」を犠牲にしていない。
ここが、この個体のいちばん上手なところだろう。
楽しむ余白は十分に
本格的なオフロード性能が必要なら、ほかに選択肢はいくらでもある。
速さを楽しみたいならGTIやRがある。
それでも、このゴルフにはそのどちらとも違う楽しさがある。
平日は通勤や買い物に使い、狭い道や駐車場でも普通のハッチバックとして扱える。高速道路ではACCを使って長距離を走り、週末になればルーフラックに道具を載せて、そのまま山や海へ向かいたくなる。
趣味のために日常を我慢する必要もなければ、日常のために趣味を諦める必要もない。
この個体の走行距離は約2.4万km。
これから道具として使い込み、自分なりの遊び方を加えていく余白も十分に残されている。
何でもそつなくこなすゴルフだからこそ、少しくらい遊んでも、その根本は揺らがない。
毎日の生活に馴染む優等生と、休日を少し楽しみにしてくれる趣味のクルマ。
そのふたつを一台にまとめたところに、このゴルフならではのユニークさがある。

スペックや値段で優劣を決めるのではなく、ただ自分が面白いと思える車が好きで、日産エスカルゴから始まり、自分なりの愛車遍歴を重ねてきた。振り返ると、...
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