• ポルシェ / 718ボクスター 2.0(2022)

素の718を味わう

スポーツクロノもPASMも持たない、2022年式の718ボクスター。2.0リッター水平対向4気筒ターボと6速MT、素の足回りが伝えるポルシェ本来の走りに、ナイトブルーとベージュレザーが所有する豊かさを添える一台だ。

ポルシェ・718ボクスター 2.0(2022)素の718を味わう

エンジンだけではない進化

718ボクスターが登場した時、もっとも大きな話題となったのは、ベースモデルのエンジンが先代の水平対向6気筒自然吸気から、水平対向4気筒ターボへと変わったことだった。

2リッターという排気量ながら最高出力は300ps、最大トルクは380Nm。

先代の2.7リッター自然吸気モデルと比べても明確に力強くなり、低回転から厚みのあるトルクが立ち上がる。アクセルを踏んだ瞬間からしっかりと前へ出て、それでいて高回転まで気持ちよく回っていく。

ポルシェ・718ボクスター 2.0(2022)素の718を味わう

もちろん、先代の自然吸気6気筒が奏でる音色を知っていれば、物足りなさを覚える場面があるのも事実だ。

ただ、今改めて718ボクスターに乗ってみると、この車の進化はエンジンだけで語るべきものではないと感じる。

ポルシェ・718ボクスター 2.0(2022)素の718を味わう

何よりもシャシーがいい。

どっしりとした安定感があるのに、ステアリングを切った瞬間にはミッドシップらしく素直に向きを変える。

安定していることと、俊敏であること。

本来なら少し相反するような二つの要素が、とても自然にひとつの車の中に収まっている。

ポルシェ・718ボクスター 2.0(2022)素の718を味わう

ステアリングからはタイヤの接地している感覚がきちんと伝わってくるし、自分が行った操作に対して車が正確に動いてくれる。

だから、速く走らなくても楽しい。

これがポルシェのすごいところだと思う。

ポルシェ・718ボクスター 2.0(2022)素の718を味わう

6速MTがよく似合う

そして今回の車は6速MT。

このMTの操作感もまた718ボクスターの魅力を濃くしてくれる。

コクッ、コクッと節度を持って入っていくシフトを自分で操作し、クラッチをつないで、エンジンの回転を合わせる。

PDKで圧倒的に速く走るのとはまったく違う楽しさがある。

ポルシェ・718ボクスター 2.0(2022)素の718を味わう

むしろベースモデルの2リッターだからこそ、一段一段のギアを自分で選びながらエンジンのおいしいところを引き出していく感覚がよく似合う。

さらに屋根を開ければ、エンジンの音も、風も、タイヤが拾う路面の感覚も、一段と身体へ近づいてくる。

ポルシェ・718ボクスター 2.0(2022)素の718を味わう

それでいてボディーにはしっかりと剛性感があり、乗り心地にもどこか角がない。

スポーツカーなのに緊張を強いられない。

安心して乗れるからこそ、より深くドライビングに集中できる。

速さと楽しさだけではなく、安心感まで含めてスポーツカーとして成立している。

これが718ボクスターという車の素性の良さなのだと思う。

ポルシェ・718ボクスター 2.0(2022)素の718を味わう

プレーンな良さを味わう仕立て

そして、ここからが今回の個体の話。

中古車市場を見渡すと、718がデビューした頃の個体は比較的多く存在する。

しかし今回のような2022年式という高年式のベースモデル、それもMTとなると一気に希少になってくる。

ポルシェ・718ボクスター 2.0(2022)素の718を味わう

さらに面白いのが、この個体にはスポーツクロノやPASMといった、ポルシェでは人気の高い装備が付いていないこと。

普通なら「付いていたほうがいい」と思われるかもしれない。

でも、このベースモデルのMTに関しては、個人的にはむしろそれがいいと思っている。

この車で味わいたいのは、装備によってつくられた分かりやすいスポーティさではない。

718ボクスターという車が元々持っている、プレーンな素性の良さそのものだからだ。

ポルシェ・718ボクスター 2.0(2022)素の718を味わう

2リッターの水平対向4気筒ターボ、ミッドシップ、6速MT、そして素の足回り──それだけで十分にポルシェなのである。

むしろ仕立てがシンプルだからこそ、ステアリングを切った時の感覚や、シフトを入れた時の感触、アクセルを踏んだ時の車体の反応といった、ポルシェが長年磨き続けてきた基本性能がよく見えてくる。

ポルシェ・718ボクスター 2.0(2022)素の718を味わう

ただし、すべてが簡素なわけではない。

ボディは有償カラーのナイトブルーメタリックで、室内はベージュのオールレザーインテリア。乗り込んだ瞬間の所有感をきちんと満たしてくれる装備が選ばれている。

ここがまた、この個体の面白いところである。

走りには、なくてもよいものを足さない。でも、所有する喜びには妥協しない──そんな仕様に見えてくる。

ポルシェ・718ボクスター 2.0(2022)素の718を味わう

ポルシェを深く知る人にこそ

スポーツクロノが付いているからいい。
PASMが付いているからいい。
上級グレードだからいい。

けれど、ポルシェを選ぶ理由は、装備表の足し算だけでは決まらない。

ポルシェ・718ボクスター 2.0(2022)素の718を味わう

様々なポルシェに触れて、その走りの良さを知っている人だからこそ、この個体を見た時に感じるものがあるはずだ。

「これでいい」ではなく、「これがいい」。

2022年式のベースモデル、そして6速MT。

プレーンな718ボクスターの素性を味わいながら、所有する満足感もしっかりとある。

装備表だけを眺めていては見えてこない、ポルシェの走りを知っている人にこそ届いてほしい個体なのである。

ポルシェ・718ボクスター 2.0(2022)素の718を味わう
Written By
HIROYUKI KONO

18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どん...

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