ポルシェ・カイエン・ターボS(4WD/8AT)パワーだけにあらず

ポルシェ・カイエン・ターボS(4WD/8AT)パワーだけにあらず

ポルシェ・カイエン・ターボS(958型)を、パワーで重さや大きさをかき消すだけの車だと思うべからず。ハンドリング、ブレーキングはスポーツカーさえ顔負けである。

カイエン・ターボSとは?

大きな車体に派手なディテール。眼の前にポルシェ・カイエン・ターボSがある。2010年〜2018年に販売された2代目=958型である。

2014年にマイナーチェンジ。マイナーチェンジ前はカイエン・ターボのみの設定だったが、ターボSが親切。マイナーチェンジ後のターボと比較すると+50ps/+50Nm、先代比+20ps/+50Nmの、570ps/800Nmを叩き出すに至った。0-100km/h加速4.1秒、最高速284km/h。2.3t前後の内燃機関車としては、強烈な数字の並びだと考えてよいだろう。

同世代のカイエンには
3.6リッターV6自然吸気
3.6リッターV6スーチャー+モーター
4.8リッターV8自然吸気
4.8リッターV8ターボ
と、大排気量寄りのパワートレインが乱立していた。その中でも最強のパワーを誇る。

派手な外観それでも実直

全長×全幅×全高=4845×1955×1700mmというエクステリアは端的に大きい。ノーズの高さもなかなかのものであるし、全高も日本人の男性における平均身長くらいある。

そのうえ大きく開いたエアインテーク、スモークがかった前後ライトに295/35 R21ものホイールサイズ、4本突き出すエグゾーストパイプなどで武装されるカイエン・ターボSは、鼻息荒い佇まいであることは明らかだ。

テスト車の内装はまた、赤と黒のツートーンカラーであり、この赤が艷やかで、全体として妖艶な雰囲気に包まれている。ウッドを用いずとも、ラグジュアリーかつスポーティな空間だと感じる。ポルシェの得意分野だ。

5連メーターに表示されるアラートの文言がカタカナのカタコトだったり、クスッと笑える部分もあるのもポイント。こんなものは楽しんだもの勝ちである。

2895mmのホイールベースのお陰で後部座席にもたっぷりと余裕がある。

速い だけではない走り

スタート直後、十分に迫力があると思っていた現行型ターボの音が霞んでしまうくらい、野太く低いサウンドが響く。

重みのあるアクセルを踏むと、巨体は弾けるように前に飛び出す。重さや大きさを感じさせないといえば嘘になるけれど、パワーは有り余るほど。さらに深々とアクセルを踏んでみる。カイエン・ターボSは、リアをぐっと沈ませながら脱兎のごとく前へ前へと突き進んでいく。速すぎ…。思わず声が出た。

そのまま峠道へ向かった。小さなR(アール)が連続する上り/下りが混ざり合う道だった。操舵をした分だけ、いや、より積極的にノーズがエイペックスに向く。荷重コントロールを意識すれば、次々とコーナーをやっつけていける。こんなに走るのか…。同年式のライバルと思い浮かべても、これほど活発なSUVは思いつかない。サイズが大きいのに、4つそれぞれのタイヤが、今、どのように路面と接しているのかが手に取るようにわかる。

ブレーキもまったくプアな所がない。疲れ知らずでもある。タッチもやわらかく、制動力は絶対的な信頼感を与えてくれる。

予想していたよりも遥かに早く慣れた私は、簡単にコーナリングがキマるようになっていた。姿勢が決まればアクセルを踏むだけ。これはもう巨大な砲弾である。バリバリと排気音を振り撒きながら自在に操ることができる。

理性を働かせて、何とか道路脇に止めた。これ以上のペースは公道のスペースでは不十分だと察したからだ。もう一度申し上げるが、この車は全長5m近く、2.3t近いSUVである。手は汗でじっとりと湿っていた。

こんなマシンが、令和も5年目の今、かなりのお手頃感で手に入るならば、これは間違いなく有り難いことである。

SPEC

ポルシェ・カイエン・ターボS

年式
2013年
全長
4845mm
全幅
1955mm
全高
1700mm
ホイールベース
2895mm
トレッド(前)
1640mm
トレッド(後)
1660mm
車重
2215kg
パワートレイン
4.8リッターV型8気筒ターボ
トランスミッション
8速AT
エンジン最高出力
550ps/6000rpm
エンジン最大トルク
750Nm/4500rpm
サスペンション(前)
ダブルウィッシュボーン
サスペンション(後)
マルチリンク
タイヤ(前)
295/35 R21
タイヤ(後)
295/35 R21
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