- ベントレー / フライングスパーV8(2023)
空飛ぶ拍車
ベントレーのフラッグシップセダンであるフライングスパーは、名門コーチビルダー H.J.マリナーのデザイナー、アーサー・ジョンストーンが用いた空飛ぶ拍車のエンブレムに由来します。

拍車といえば日本では「拍車をかける」という言葉があり、乗馬ブーツの踵につけた拍車で馬に刺激を与えスピードを引き出すことから来ています。
なぜ馬なのかといえば、そもそもコーチビルダーの“コーチ”は馬車製造で知られたハンガリーの街の名であり、H.J.マリナーも自動車の前は馬車の装飾を手掛けていた歴史を持っています。
フライングスパーという名前は、そうした馬車文化の系譜を現代に受け継ぐ象徴でもあるのです。
今回のフライングスパーは2019年に登場した、現行型(第三世代)モデルです。ベントレーらしい堂々としたフロントマスクは、メッシュではなく伝統的な縦格子グリルを採用することでクラシックな気品を漂わせ、ボンネットマスコットもこのモデルではしっかりと存在感を放ちます。
ヘッドライトは切り細工を思わせる精緻な輝きを放ち、宝飾品にも通じる美しさを備えています。フェンダーの装飾やテールライトには「B」のモチーフが巧みに組み込まれており、細部までベントレーらしさを感じさせます。
21インチホイールも塗り分けや仕上げに至るまで徹底的に作り込まれ、足元からも特別感が漂います。
エンジンは4.0リッターV8ツインターボで最大出力550ps/最大トルク770Nmを発生し、4WDシステムと組み合わされます。
2.4トンを超える車体を4.1秒で100km/hに到達させるトルクの強さは圧巻で、長距離移動はもちろん日常の運転でも常に余裕を感じさせてくれます。圧倒的な性能を持ちながら、それを必要以上に主張しないあたりにベントレーらしさがあります。
内装はグレイシャーホワイトと調和するベージュレザーを基調に、ウッドの質感や色味、刺繍に至るまでこだわり抜かれた空間が広がります。
随所に配されたクロームパーツやムードライティングが空間に奥行きを与え、乗り込んだ瞬間から特別な時間が始まることを感じさせます。
この個体は左ハンドル仕様。ショーファードリブンとしてはファーストシートが歩道側となり乗り込みやすい事からイギリスと日本では右ハンドルが一般的です。
一方で、自らステアリングを握ることを前提に考えれば、左ハンドルならではの本国仕様らしい雰囲気に魅力を感じる方も少なくないでしょう。
考え抜かれたスタイルと快適性、そして圧倒的なパフォーマンスを高い次元で両立したフライングスパー。
目的地へ向かう移動そのものを豊かな時間へと変え、乗るたびにベントレーというブランドの奥深さを実感させてくれる一台です。

絵本よりも中古車情報誌を隅々まで読み込んでいた幼い頃。それ以来、ずっとクルマに魅せられてきた。高校生の時に初めたInstagram「hinacars」では6年間で200...
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