編集するという選択

今回の一台は、試乗記ではない。RESENSEが手を入れ、思想を与えたオリジナルカスタムだ。オマージュしたのは、かつて本国で発表された限定車。派手さではなく、機能と佇まいの関係性を突き詰めたあの一台に、RESENSEなりの解釈を重ねている。

メルセデス・ベンツ・Gクラス(2020)編集するという選択

あえて、AMGではないという選択

ベース車両に選んだのは、AMGラインではない、プレーンなGクラス。

理由は明確だ。AMGは完成されすぎている。速さも迫力も、すでに十分すぎるほど、整ったものが用意されている。

だが今回やりたかったのは、「足す」ことではなく、「編集する」ことだった。

メルセデス・ベンツ・Gクラス(2020)編集するという選択

AMGには設定されない、明るいトーンのシート。この一点だけでも、表情は大きく変わる。

無骨なGクラスに、わずかな軽やかさと生活感が加わる。それだけで、このクルマは“使う道具”へと近づく。

メルセデス・ベンツ・Gクラス(2020)編集するという選択
メルセデス・ベンツ・Gクラス(2020)編集するという選択

ホイールとタイヤで、性格を決める

ホイールは、あえて現行ではなく以前のモデルのデザインを選んだ。新しさではなく、文脈をつなぐための選択だ。

そこに組み合わせたのが、BFグッドリッチのMTタイヤ。

見た目は明らかに無骨になる。

その代わりと言うべきか、ロードノイズは正直に言えば少し増える。

メルセデス・ベンツ・Gクラス(2020)編集するという選択

だが、それによって乗り味が硬くなったり、違和感が生まれることはない。

むしろ、Gクラス本来のシャシーとの相性は驚くほど自然だ。

グッドリッチにこだわる理由は単純で、このクルマの本質と矛盾しないからだ。

飾りではなく、本当に使われてきた背景を持つ道具。

その空気感が、Gクラスという存在とよく似合う。

メルセデス・ベンツ・Gクラス(2020)編集するという選択

極めつけは黄色いウィンカー

そして、このクルマの印象を決定づけているのが、黄色いウィンカーランプ。

日本仕様では失われてしまった色を、本国から部品を取り寄せて再現した。

メルセデス・ベンツ・Gクラス(2020)編集するという選択

これは機能性のためでもなければ、安全性のためでもない。

ただ、Gクラスが“どこから来たクルマなのか”を思い出させるためのディテールだ。

この小さな色の違いが、クルマ全体の空気を決定的に変える。

メルセデス・ベンツ・Gクラス(2020)編集するという選択

量産された特別感から、個の喜びへ

いまやGクラスは、路上で珍しい存在ではなくなった。

だが、この一台は違う。

AMGの記号も、過剰な装飾もないが、思想の密度は圧倒的に濃い。

メルセデス・ベンツ・Gクラス(2020)編集するという選択

所有する喜び。

走らせる喜び。

そして、「これは自分の選択だ」と言える満足感。

それらは、スペックや価格表の先にある価値だ。

RESENSE ORIGINALとは、カスタムを見せる企画ではない。

クルマとどう向き合うか、その姿勢を提示する企画だ。

このGクラスは、今や記号化されたゲレンデとは一線を画す。だからこそ、深く刺さる。

編集された一台には、流行ではなく、意志が残る。

メルセデス・ベンツ・Gクラス(2020)編集するという選択
Written By
HIROYUKI KONO

18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どん...

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