歴代のスーパースポーツは、それぞれのモデルにおける究極のパフォーマンス仕様を体現してきた。新型スーパースポーツは、このアプローチを異なる方向へ進めている。
INDEX
英国発
ベントレーは、初代スーパースポーツの誕生から100年を迎える節目の年に、第四世代の新型スーパースポーツを発表した。
新型ベントレー・スーパースポーツは、後輪駆動、2シーターキャビン、総重量2トン未満という構成により、かつてないほどドライバー重視のコンチネンタルGTだ。
ハイブリッドを用いない純粋な内燃機関パワートレインは、新開発の666ps/800Nmを発生する4リッター V8ツインターボを中心に据え、その動力は8速デュアルクラッチ・ギアボックスを介して後輪のみに伝達される。
カーボンセラミックブレーキ、マンタイ・レーシングと共同開発した新型22インチ軽量鍛造ホイール、そしてアクラポヴィッチ製フルレングスチタンエキゾーストシステムが標準装備となり、ピレリ・トロフェオRSタイヤも選択可能だ。
エクステリアは、ダウンフォース最大化と軽量化のために“機能が形状を決める”一連の開発が施され、史上もっとも“走りの本質”に徹したコンチネンタルGTを体現。
新しいフロントバンパーには、ベントレーの市販車として史上最大のフロントスプリッターが一体化され、エンジンおよびフロントブレーキへ冷却風を送る。
カーボンファイバー製ダイブプレーン、サイドシル、フェンダーブレード、リアディフューザー、固定式リアウイングが組み合わさり、コンチネンタルGTスピードより300kg以上多いダウンフォースを生み出した。
軽量化はルーフにも及び、ルーフはカーボンファイバーパネルとなり、構造剛性を維持しながら重心を下げた。
インテリアは2シーターキャビンとし、高いサポート性を備えた新設計のスポーツシートを、車体内でより低い位置に丁寧にレイアウト。
後席空間はカーボンファイバーとレザーのシェルに置き換えられており、モノトーン、デュオトーン、トライトーンの内装が選べ、レザー、ダイナミカ、カーボンファイバーを広範囲に使用して、パフォーマンスに特化した空間を構成する。
プロジェクト「ミルドレッド」
新型スーパースポーツは、2024年9月、小規模のエンジニアリングチームが「後輪駆動で、2トン未満のコンチネンタルGTがどのような動的挙動を示すか」を理論化したことに端を発するアイデアから生まれた。
チームには1台のテストミュール(試作車両)を製作する許可が与えられ、わずか6週間後にはそのクルマがサーキットに持ち込まれ、このコンセプトが実証された。
この重要なデモカーのパフォーマンスは説得力のあるもので、新型スーパースポーツ開発プロジェクトがごく少数の専門チームによって厳重な秘匿のもと実施された。
このプロジェクトを極秘に進めるため、コードネームが必要であり、チームは、ベントレーの歴史、そしてMildred Mary Petreの物語から着想を得た。
1895年生まれの彼女は、レーシングドライバー、パワーボートレーサー、パイロットとして、陸・海・空のあらゆる世界で記録を打ち立てた人物だ。
1929年、彼女はフランスのモンレリー・サーキットを、ベントレー 4½リッターで24時間単独走行し、その際、平均速度は約90mphに達し、新たな耐久記録を樹立した。
現代基準でも驚異的な記録だが、1920年代においてはなおさら信じられない偉業であった。
彼女は恐れ知らずの精神で可能性の限界を押し広げ、その精神を称えて、開発チームは新プロジェクトに「ミルドレッド」という名を与えた。
パフォーマンスが紡ぐ系譜
スーパースポーツという言葉は、ベントレーの歴史の中で最も心を揺さぶる名称のひとつである「Super Sports」を現代的に結合したものだ。
この名がベントレーに初めて採用されたのは、ちょうど100年前のことで、最初のスーパースポーツは、1925年に登場し、3リッターモデルをベースに、強化されたエンジン、そして短く(つまり軽く)なったシャシーを備え、時速100mphを超えた初のベントレーとなった。
そしてこのモデルは、「Super Sports」を語るうえで欠かせない第二の特徴”希少性”も備えており、生産されたのはわずか18台のみだ。
数十年の眠りから覚め、スーパースポーツという一語の名は2009年に復活。
最高速度204mphを誇るこのモデルは、初代コンチネンタルGTの頂点に位置づけられた。これはコンチネンタルシリーズ初の2シーターモデルで、標準車より100kg軽量化され、当時最もドライバー志向のベントレーであった。
2017年には、第二世代コンチネンタルGTをベースにした、さらに高速で刺激的な後継モデルが登場し、初代コンチネンタル・スーパースポーツと同様、6リッターW12ツインターボを搭載していたが、その出力は710psに達し、当時の史上最強のベントレーとなったことに加え、その出力に合わせて、710台が生産された。
史上初の後輪駆動コンチネンタルGT
新設計で強化された4リッター、ツインターボV8がこの車の心臓部であり、強化クランクケース、アップレートされたシリンダーヘッド、そして大型ターボを備える。
これらの変更により、ベントレー史上最高のパワー密度(リッターあたり166.5ps)を誇る666ps/800Nmを発生するエンジンとなった。
このエンジンに組み合わされるのは、ベントレーの各モデルで使用されるZF製8速デュアルクラッチトランスミッションで、スーパースポーツ向けにクラッチが強化され、変速プログラムも新たに専用設計されている。
ギアチェンジはこれまで以上に鋭く反応が良くなり、ブレーキング時にはダウンシフト制御も綿密に調整され、最適な安定性とドライバーの安心感を提供する。
エンジンはフルレングスのチタン製エキゾーストを通して排気され、そのサウンドは従来のベントレーよりもはるかに個性的になるようチューニングされた。
このシステムはアクラポヴィッチとの共同開発、スーパースポーツ専用の設計で、クロスプレーンV8の音色を深く、力強く、そして完全に自然な形で増幅・調律し、室内での人工的なサウンド演出は一切存在しない。
0-100km/h加速は3.7秒、最高速度は310km/hとなる予定だが、本当に注目すべきは、数字を超えたスーパースポーツのダイナミックな走りそのものだ。
そのためベントレーのシャシーエンジニアたちは、ドライバーエンゲージメントを新たな次元へ引き上げる絶好の機会を得て、新型スーパースポーツを、(コンチネンタルGT3レースカーを除けば)史上初となる後輪駆動のコンチネンタルへと仕上げた。
パワーは電子制御式LSD(eLSD)を介して後輪のみに伝達され、後輪のトレッドはコンチネンタルGT比で16mm拡大。
eLSDにはブレーキによるトルクベクタリングが加わり、両システムが協調してターンインを極限まで鋭くし、最大限のトラクションを確保。
最大の敏捷性と安定性を確保するため、後輪操舵も継続採用され、ステアリング、サスペンション、トラクションマネジメント、ESCシステムのキャリブレーションはすべて新しく設定されている。
ESC設定では、ドライバーがどの程度の“独立性”または“介入”を望むかを選択でき、すべて介入するフルオン、一定のスリップやオーバーステアを許容するダイナミックモード、そして完全オフ。
この場合、ドライバーはリアアクスルを完全に操り、スーパースポーツを大きな、しかし非常にコントロールしやすいオーバーステアへと誘導できる。
ドライブダイナミクス・コントローラーには、ツーリングモード、ベントレーモード、スポーツモードの3つの新設定が存在する。
ツーリングモードは、コンチネンタルGTスピードのスポーツモードに匹敵する走行キャラクターを持ちながら、車高を上げ、ダンピングを柔らかくし、より控えめなエキゾースト音と組み合わせた。
ベントレーモードでは、ツーリングモードよりもさらに性能志向へ振られ、ギアボックス戦略、スロットル、シャシー設定がすべてアップリフトされる。エキゾーストバルブが開き、サウンドが強調され、ローンチコントロールも使用可能となる。
スポーツモードは、さらに踏み込み、ドライバーエンゲージメントを最優先に、シャシーとパワートレインの応答性を最大化するよう究極まで最適化されている。
シャシーシステムは、フロントにアルミ製ダブルウィッシュボーン、リアにマルチリンクアクスルを採用し、エアスプリング、新設計のツインチャンバー・ダンパーを備え、これらのダンパーは、バンプ(縮み側)とリバウンド(伸び側)をECUが独立して制御する。
ベントレー独自の48V電動アンチロール制御システム「Bentley Dynamic Ride」は、0.3秒で最大1300Nmのアンチロール反力トルクを発生。
ブレーキは、世界最大の自動車用ブレーキシステムを採用し、フロントは直径440mmのカーボン・シリコン・カーバイド(CSiC)ディスクに10ピストンキャリパー、リアは410mmディスクに4ピストンキャリパーと、これらが標準装備となり、キャリパーは標準でブラック、オプションでレッド塗装が選択可能だ。
スーパースポーツには、マンタイ・レーシングとの共同開発による新しい22インチ・アルミホイールが装備され、仕上げはブラックペイント、ブラックペイント&マシンド(シルバーメタルのアクセントが入る)の2種類から選べる。
スーパースポーツ専用として、タイヤは標準のピレリPゼロと新型トロフェオRSパフォーマンスタイヤ(オプション)2種類を用意。
トロフェオRSを装着した場合、シャシー変更と軽量化により、スーパースポーツはコンチネンタル GT スピードより約30%速くコーナリングでき、最大1.3gの横加速度を発生する。
85年で最軽量、そして史上最大のダウンフォースを備えたベントレー
新型スーパースポーツはコンチネンタルGTよりも約0.5トン軽く、重量は2トン未満となり、最も大きな軽量化はパワートレインによるもので、ICEのみの駆動方式および後輪駆動への変更に伴う軽量化が実現されている。
通常はアルミ製のルーフが、カーボンファイバーパネルに置き換えられ、軽量化と重心の低下が図られており、後席空間は削除され、大幅な軽量化に貢献している。
後部のシートとシートベルトに加えて、後席まわりの遮音材も減らされ、オーディオシステムは前席専用に再構成し、さらなる軽量化のため、ドライバー重視のGTでは不要とされる一部の運転支援システムも削除されている。
新しい外装ディテールが組み合わさり、これまでで最もアグレッシブなベントレーのグランドツアラーとなっており、カーボンファイバーで新パーツを製作することにより、目標達成に向けさらに軽量化が図られた。
・新設計ロアフロントバンパー(ベントレー市販車として史上最大のエアロダイナミックスプリッターを一体化)
このバンパーには左右に2つの新しい冷却チャンネルがあり、それぞれフロントブレーキとエンジンに冷気を供給。
バンパー上部には、スーパースポーツ専用デザインの新型軽量メッシュグリルが配置され、極めて細かなアルミ素材をレーザーカットして製造されている。
・フロントバンパー両端に配置された上下2段のダイブプレーン2セット(スプリッターと連動し、フロントリフトを抑制)
・ホイールベース全長にわたる新設計サイドシル
フロントホイール後方に配置された新しい“B”字型フェンダーブレード(フロントホイールアーチからの高圧空気を排出しつつ、ボディ側面への流れを整える)
・リアホイールアーチの通気口を含む、新設計リアバンパー構造に組み込まれた新型リアディフューザー
トランクリッド上部に一体型の固定式リアスポイラー
これらの空力パーツはすべて、徹底した検証を経て設計されており、”機能が形状を決める”という原則のもと、見栄えだけを目的とした要素は一切含まれていない。
これらの追加要素により、コンチネンタルGTスピード比で300kg以上のダウンフォースを発生しつつ、車全体のリフトバランスを維持し、静止時に54:46で始まり、速度とともに後方へ移動していく動的重量配分の実現にも寄与。
最終仕上げとして、ドアミラーとエンジンカバーにもカーボンファイバーが採用された。
スポーティなキャビン
インテリアも、車全体と同様に目的志向で、モータースポーツのエネルギーと精密さから着想を得ており、2シーター構成とすることで、このクルマの本質である“ドライバーエンゲージメントの最大化”を追求している。
すべてのディテールはドライビング体験を高めるために設計されており、“パフォーマンスに焦点を当てたラグジュアリー”を再定義。
新しい軽量スポーツシートがドライバーと同乗者のために装備され、横方向サポートが強化され、車内でより低い位置に設置され、肩の周りにカーボンパーツが配置されている。
シートは11方向の電動調整機能を備え、シートヒーターも引き続き装備。後席空間は、軽量かつ精密工学に基づくカーボンファイバー製タブに置き換えられ、そのスペース全体を包み込む構造となっている。
レザーによる包み込みデザインで仕上げられたこのタブはキャビン全体と統合され、よりクリーンなインテリアレイアウトを実現し、ウエストレールとファシアパネルには軽量かつ高光沢のカーボンファイバー・ベニアが標準装備され、レザーとダイナミカを組み合わせた仕上げとなっている。
ダイナミカはシートバックおよび座面の中央部、ドア中央パネル、ヘッドライナーに使用されており、スーパースポーツの刺繍とバッジがキャビンを完成させ、センターコンソールには個別のシリアルナンバー入りバッジが配置される。
ナンバリング、個性、ビスポーク
すべてのスーパースポーツは、工場を出荷する前に個別のナンバリングが施され、クルーでハンドクラフトされる500台の中から、顧客は特定の番号をリクエストすることが可能だ。
ボディカラーは、パフォーマンス志向の24色を基本とし、さらにマリナーを通じて、スーパースポーツのロゴ入り塗装やマット塗装などの追加フィニッシュも選択できる。
単色仕上げのエクステリアに加えて、ベントレーのデザインチームは5つの「デザインテーマ」を開発した。
これらには、フロントホイール後方のロアボディサイドに、コントラストカラーによる縦方向のストライプと “Supersports” の名称をあしらったもの、または、リアクォーター全体に対照的な2色で描かれたストライプを配したものが含まれる。
外装カーボンファイバーはハイグロス仕上げが選べ、ロアエレメントはフルペイント仕上げやピンストライプ仕上げにもできる。
キャビンでは、22色のメインハイドに加え、11色のセカンダリーハイド、9色のアクセントハイドが選べ、シングルトーン、標準のデュオトーン、新たに導入された独自のトライトーンのカラー分割が選択可能で、ダーククローム仕様が標準となる。
インテリアのカーボンファイバーに代えて、ダークティント仕上げのダイヤモンドブラッシュド・アルミニウム、またはエンジンターンドアルミニウム、あるいはクリーンでエレガントなピアノブラックも選択可能だ。
スーパースポーツ発表時のイメージは、「Nightfall(ナイトフォール)」と呼ばれるデザインテーマで、アンスラサイト・グロスの外装塗装に、ロアボディのキャメルアクセント、キャメルのロアストライプ、さらにグリルにはコントラストの“8”が組み合わされており、インテリアはベルーガとキャメルの組み合わせで、ブロンズのアクセントが添えられた。
一方、ニューヨークでのグローバルデビューで披露された車両は「Daybreak(デイブレイク)」と呼ばれる仕様で、ジェットストリーム・マットの外装に、アークティカとポルトフィーノによるデザインテーマのリバリーが施されており、インテリアはダムソンを基調に、ライトブルーとピラーボックスレッドのアクセントが入っている。


























